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メルケル細胞癌 Q&A

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メルケル細胞癌 Q&A

NCI原文ページへ (2011年7月現在リンク切れ)

キーポイント

・メルケル細胞癌(MCC)は皮膚に、または皮膚直下にできる稀で進行度の早いタイプの皮膚癌です(Q1参照)。

・MCCはほとんどの症例で太陽光のあたりやすい部分にできており、直射日光と関連があります(Q35参照)。また、MCCは免疫抑制、そのほかの紫外線の曝露、そしてある種の病気とも関連しています(Q3参照)。

・MCCは他の皮膚癌と違い、数週間または数ヶ月で急速に成長します(Q4参照)

・癌患者は新しい治療法を探すための臨床試験(患者を対象とした研究)に参加することがすすめられています(Q8参照)


1.メルケル細胞癌とは何ですか?

メルケル細胞癌(MCC)は皮膚に、または皮膚直下にできる、稀で進行度の早いタイプの皮膚癌です。これは別名として、皮膚の原発性小細胞癌(primary small cell carcinoma of the skin)、索状性癌(trabecular carcinoma)、APUD細胞系腫瘍(APUDoma)、神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma)、内分泌癌(endcrine carcinoma)または皮膚の原発性未分化腫瘍(primary undifferentiated tumor of the skin)とも呼ばれます(1)。MCCはメルケル細胞と呼ばれる神経内分泌細胞から始まると信じられています。この細胞は神経系より刺激を受けた際に、ホルモンを血中に放出します。この細胞は、神経堤と呼ばれる神経系の一部から皮膚へ移動します(2)。メルケル細胞は皮膚に触感を感じさせる役割をしていると信じられています。

2.メルケル細胞癌はどれくらいの頻度で発生しますか?

米国では、60,000人に近いメラノーマの新患者と、非メラノーマ型の皮膚癌では100万人の新患者が毎年診断されている一方で、MCCと診断されるのはおおよそ1200人です。MCCの発症率は上昇しており、1986年と2001年の比較では、その数は3倍になっています。MCCと診断されたほとんどの患者は、診断時に50歳以上(平均年齢は69歳)で、50歳未満で診断される人はわずか5%です。MCCはどの人種・民族よりも白人の間で多く見られます。日本人でも何例か報告がありましたが、黒人の間では本当にわずかな症例しかみつかっていません。

3.ルケル細胞癌の原因と思われるものは何ですか?

MCCのはっきりとした原因はわかっていませんが、直射日光と免疫抑制(感染症や病気に対して戦う能力を担う、ヒトの免疫系の抑制)が関係しているようです(2)。直射日光がMCCの危険因子であるというのは、太陽紫外線B(UVB)指標(ある特定の場所で、正午に測定される太陽紫外線Bの等級)と比例して発生数が増加するというデータに裏づけられています(6)。MCCはHIV感染、慢性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫(リンパ系の癌)、外胚葉異形成(異常な組織増殖と関連した疾患)、そしてカウデン病(体内の複数の場所で発育する、異常だが良性の組織増殖をおこす疾患)などと関連があります。そのほかの原因となる可能性のあるものは、砒素への曝露、乾癬の治療に用いられるソラレン(光への過敏性を増す薬)の使用、そして紫外線A波です。

4.メルケル細胞癌の症状はなんですか?

MCCを含む皮膚癌でもっとも多い症状は皮膚の変化、特に新しいホクロができたり、もともとあったホクロに変化が見られます。MCCは皮膚の下にできる、硬くて痛みのないコブ、動かすことのできない嚢胞に似ているかもしれません。このコブは通常2cm以下(約3/4インチ)であり、色は赤、ピンク、または青紫になることもあります。MCCは他の皮膚癌とは違い、数週間または数ヶ月で急激に成長します(5)。

5.メルケル細胞癌はどこにできますか?

MCCは、光の当たる部位に好発します。50%の症例では首から上、特に目の周りやまぶたに発生します(1)。40%の症例では、腕と足に発生します(2)。また、MCCは体幹や通常日光に当たらない部分にも起こります(1)。

6.メルケル細胞癌はどのように診断や病期が決められますか?

MCCの診断をつけるために、医師は以下の方法や検査を行うかもしれません。そのうちのいくつかは、同様に病期を決める一助として使われます。病期とは、癌の進行度をあらわすものです。

・ 生検とは、病理学者に検査をしてもらうために、腫瘍より細胞もしくは組織の一部を取り除くことです。病理学者は組織標本を用いて顕微鏡で調べ、細胞または組織を使って他の検査を行います。生検は診断と病期決定の両方に使用されます。外科医は病期を決めるためにリンパ節(小さく丸い組織で、癌細胞・細菌・その他の有害な物質を捕らえる役目があります)を切除するかもしれません。

・ センチネルリンパ節(SLN)生検とはSLNを取り除いて顕微鏡で調べ、癌細胞があるかどうか調べる方法です。SLNは原発巣から最初に広がりやすいリンパ節です。SLN生検は病気の進行度を決めることにも使われます。SLN生検は通常のリンパ生検よりも取り除かれるリンパ節が少ないので、少ない副作用ですむかもしれません。

・ 免疫組織化学(癌細胞表面にある抗体に反応する物質で細胞を染色すること)はMCCと他のタイプの癌を区別するために使われる検査手技です。

・ CTスキャン(CT)(体の断面写真を得るため、特殊なX線装置を使う手法)は小細胞肺癌とMCCの区別をつけ、体のほかの部位に転移(他へ広がること)しているかどうかがわかります。

・ オクトレオチドスキャン(ソマトスタチン受容体シンチグラフィ、SRSとも呼ばれます)では、医師は静脈に少量の放射性物質を注射します。この薬剤は血中に乗って癌細胞にくっつきます。スキャナーと呼ばれる機械はこの放射性物質を検知し、体のどこに癌細胞があるかを示す写真を撮影します。MCCでは、この検査は診断と病期決定のために使われます(5)。

・ PETスキャンは、癌細胞に吸収されて画像上暗く写る放射性糖類を用います。これはMCCの診断と病期決定に使われます。

7.メルケル細胞癌の治療はどのように行われますか?

MCCの治療では手術がもっとも一般的です。広域切除術(癌とともに、広範囲にその周りにある健康な組織も切除すること。)はMCCの薦められる治療です。モース術(Mohs micrographic surgery)(組織を一層ずつはがし、顕微鏡で確認しながらすべての癌細胞が取り除かれるまで続ける方法)が一般的な広域切除の代わりに行われるかもしれません。モース術は顔などの目に付きやすい部位や、広範囲に周囲皮膚を切ることのできない部位にできたMCCの良い代替療法かもしれません(5)。

外科医は病気の進行を決める、または再発(癌が再び起こること)を防ぐためにリンパ節を切除するかもしれません。患者は再発の危険性を減らすために補助放射線療法(最初の主要な治療のあとに受ける治療)を受けるかもしれません。化学療法は病気がリンパ節を越えて、放射線療法で治療できない部位まで広がった場合に通常行われる治療です。

対症療法とは、重症はまたは生命に危険が迫る病気である患者の生活の質を改善するために行われる治療です。この治療は病気の症状、病気を治療するために生じる副作用、そして病気やその治療に関連する精神的・社会的・信仰的問題をできるだけ早くに予防・治療します。たとえば、カルボプラチンやエトポシドなどの抗癌剤はMCC患者の症状を緩和するかもしれません。放射線治療は脳や骨に転移したMCCの痛みを和らげ、MCCに関連した皮膚の不快感を減らすかもしれません(2)。さらに、ソーシャルワーカー、カウンセラー、聖職者と面会することは、感情を表出したい、もしくは悩みを相談したい人にとって役立つでしょう。ソーシャルワーカーは回復期・感情的サポート・経済的援助・交通手段または在宅ケアなどの情報源についてアドバイスをすることができます。

8.臨床試験に参加することはできますか? どこで臨床試験の情報が手に入りますか?

はい、できます。米国国立衛生研究所(National Institute of Health)に所属する米国国立癌研究所(The National Cancer Institute NCI)では、新しい治療法または既存の治療法を改善するための臨床試験に出資しています。新しい治療法が一般使用にすすめられる前に、医師らはその治療法が安全で病気に対して有効かを見極めるための臨床試験を行います。臨床試験への参加はMCC患者にとって、治療法のひとつの選択肢になるかもしれません。

臨床試験に興味のある患者は主治医と話をする必要があります。臨床試験に関する情報は、NCIのCancer Information service(CIS)(下記参照)電話番号1-800-422-6237を、NCIパンフレット(臨床試験に参加する:癌患者が知っておくべきこと)は、インターネットhttp://www.cancer.gov/publicationsにあります。このパンフレットではどのように臨床試験が行われるか、期待できるメリットとリスクについて説明しています。臨床試験のさらに詳しい情報は、NCIウェブサイトの  http://www.cancer.gov/clinicaltrialsで見ることができます。このサイトではPDQR、NCIの包括的な癌情報データベースにリンクして、現在行われている特定の臨床試験の詳しい情報があります。CISでもPDQからの情報を提供しています。

9.メルケル細胞癌の予後はどうですか?

予後とは、その病気が起しやすい経過や結末、つまり患者が回復する、または再発する可能性のことです。MCCの患者さんの予後は、診断されたときの病期によって大きく左右されます。腫瘍が小さく(2cmまたは3/4インチ以下)、リンパ節を超えて癌細胞が広がっていない場合の5年生存率は90%以上です。リンパ節に広がったMCC患者の5年生存率は約50%です。MCC患者の全5年生存率は64%です(7)。しかし、進行したMCC患者の半分は9ヶ月しか生存していません(2)。この病気では患者の50%で再発がみられます(7)。しかしながら、これらの統計は多くの患者数から出された平均値ということを頭に入れておくことが重要です。各個人の状況はそれぞれ異なるので、統計では特定の患者に、将来なにが起こるか予測することには使えません。

参照文献 *文中の()内番号

1. Wood GS, Bagheri M, Gharia M, et al. Nonmelanoma skin cancers: Basal cell and squamous cell carcinomas. In: Abeloff MD, Armitage JO, Niederhuber JE, Kastan MB, McKenna WG, editors. Clinical Oncology. 3rd ed. London: Churchill Livingstone, 2004.
(基底細胞と扁平上皮細胞癌)
2. Poulsen M. Merkel-cell carcinoma of the skin. Lancet Oncology 2004; 5(10):593-599.
(皮膚のメルケル細胞癌)
3. Camisa C, Weissmann A. Friedrich Sigmund Merkel. Part II. The cell. American Journal of Dermatopathology 1982; 4(6):527-535.
(フリードリッヒ・シグムンド・メルケル パート2)
4. Hodgson NC. Merkel cell carcinoma: Changing incidence trends. Journal of Surgical Oncology 2005; 89(1):1-4.
(メルケル細胞癌:発生傾向の変遷)
5. Goessling W, McKee PH, Mayer RJ. Merkel cell carcinoma. Journal of Clinical
(メルケル細胞癌)
6. Miller RW, Rabkin CS. Merkel cell carcinoma and melanoma: Etiological similarities and differences. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 1999; 8(2):153-158.
(メルケル細胞癌とメラノーマ:疫学的類似と相違点)
7. Allen PJ, Bowne WB, Jaques DP, et al. Merkel cell carcinoma: Prognosis and treatment of patients from a single institution. Journal of Clinical Oncology 2005; 23(10): 2300-2309.
(メルケル細胞癌:一施設における患者の予後と治療)

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(根本明日香 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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