放射線リスクと小児CT(コンピューター断層撮影)検査: 医療従事者のための指針 | 海外がん医療情報リファレンス

放射線リスクと小児CT(コンピューター断層撮影)検査: 医療従事者のための指針

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放射線リスクと小児CT(コンピューター断層撮影)検査: 医療従事者のための指針

2002/8/20掲載 2012/06/07更新

有用な画像機器であるCTの小児への使用が急増している。最新のCTおよびその使用増加にともないCT撮影による小児の被ばくが増える可能性があるため、小児へのCT使用は公衆衛生上の懸案事項である。 本概要は、特に小児におけるCTの意義と放射線量を最小限にする重要性について検討したものであり、以下の課題について取り組んでいる:

  • 診断ツールとしてのCT
  • 小児の被ばくへの特別な配慮
  • 小児のCTによる被ばくリスク:公衆衛生上の懸念
  • 小児のCTによる被ばくを最小限にするための迅速な対応

診断ツールとしてのCT

CTはきわめて有用であり、小児の疾患や外傷を診断する際の救命ツールとなりうる。子供一人一人にとって、適切に使用すればCTのリスクは少なく一人一人のリスク便益比で利益が上回る。 米国では年間およそ4〜700万のCT検査が小児で行われている。 1980年以降、成人と小児におけるCT使用は約8倍に増加しており、年間増加率はおよそ1割と推定される。 この増加の大半は、技術的進歩はもとより一般的疾患におけるCTの有用性によるものである。 CTの多くの長所にもかかわらず、1つの短所として避けられないのが被ばくである。CTスキャンは米国の大病院ではX線診断の最大12%を占めるが、全医療用X線検査による米国民の総放射線量のうち、およそ45%はCTスキャンが原因であると推定される。 CTは米国民にとって医療被ばくの最大の原因である。

小児被ばくへの特別な配慮

被ばくは成人と小児に共通した問題である。しかし、小児には3つの特別な配慮が必要である。

  • 被ばく集団の疫学研究で明らかにされたように、小児は成人より放射線に対する感受性が著しく高い。
  • また小児は成人より平均余命が長いので、放射線障害が発現する機会がより多くなる。
  • 成人用CTの設定で小児に使用すると、小児は必要以上に被ばくする。

結果として、まったく同じCTスキャンで被ばくする成人と比べて、放射線に関連する癌を発症するリスクは小児の方が数倍高い可能性がある。

このような多量照射を小児に対して行う必要はなく、検査画像の画質を維持しながら被ばくを大幅に減らすようCT撮影条件の設定をする事は可能である。 それ故、成人用撮影パラメータを用いて小児のCT撮影をするべきではない。 小児がCTで受ける放射線量を決定する撮影パラメータの調整は頻繁に行われておらず、結果的に必要以上の多量照射になる。

小児のCTによる被ばくリスク:公衆衛生上の懸念

放射線リスクの評価に関与している国内および国外の主要組織は癌を誘発する低線量照射量の「しきい値」はおそらくないという事に同意する:放射線量でいくらあろうと絶対に安全であるとは考えられない。原爆生存者とその他の放射線照射を受けた人々の最近のデータによると、小児のCTスキャンに相当する低レベルの放射線でさえわずかであるが統計学的に有意な癌リスクの増加が認められる。小児の単純CTスキャンの実効線量はおよそ 1 mSv未満から30 mSv の範囲である(下記表参照)。 CTスキャンを実施した小児のおよそ3分の1は少なくとも3回のスキャンを経験した。複数回のスキャンは特に懸念される。例えば、3回のスキャンは単純スキャンの3倍の癌リスクがあると予想される。 加えて、複数のスキャン(複数「位相」)が1回の検査で行われることがあり、その場合、放射線量がさらに増える。小児における大部分の症例では、単純スキャンで十分である。
CTスキャンに関連する個々の癌リスクは少ないと強調しておくのは重要である。文献で推定された生涯リスクで最大は1000分の1未満であり大部分の推定値はそれより大幅に低い。公衆衛生上の問題は、こうした僅かなリスクに曝されている小児患者が大規模で増加している事である。
CT検査を適切に行う利点は小児一人一人に対するリスクを必ず上回るべきである;不必要な撮影は無用なリスクを伴う。 CTによる小児の被ばくをできる限り最小限に抑えることで、予測されるCTに関連する癌死亡者数を減少させるだろう。

検査タイプ
該当臓器
臓器別の吸収線量域(mGy)
実効線量の範囲 (mSv) #
設定未調整*・頭部(200 mAs)
23- 49
1.8 – 3.8
設定調整済み・頭部(100 mAs)
11 – 25
0.9 – 1.9
設定未調整・腹部(200 mAs)
21 – 43
11 – 24
設定調整済み・腹部 (50 mAs)
5 – 11
3 – 6
胸部X線撮影(後前方向)
0.04 – 0.08
0.01 – 0.03
胸部X線撮影(側面方向)
0.04 – 0.10
0.03 – 0.06
乳房X線撮影
乳房
3.5**
0.42**

# 2008年 ICRP(国際放射線防護委員会)の組織荷重係数による実効線量。実効線量は放射線防護の目的で体の一部が被ばくした時の全身に対する影響を表すのに用いられる。実効線量は放射線の種類と被ばくした臓器/組織の感受性(組織荷重係数)を考慮して算出される。
* 「設定未調整」は成人用と同じ設定を用いている事を指す。「設定調整済み」は体重によって設定を調整した事を指す。
** 左右の乳房に対して二方向撮影から算出した線量の合算値。

小児のCTによる被ばくを最小限にするための迅速な対応

医師、その他の小児医療従事者、CT検査技師、CTメーカー、様々な医療機関および政府機関は小児のCTによる被ばくを最小限にするための責任を負う。小児がCT検査によって受ける放射線量を低減するための幾つかの迅速な措置が可能である。

    • 必要なCT検査のみ行うこと。小児医療従事と放射線専門医の提携によりCTの必要性と用いる技術を決定できる。小児に対するCTの標準適応があるので、放射線専門医は小児に対し全てのスキャンを実施する前に根拠を検討し、適応があいまいな場合は相談できるようにしておくべきである。必要に応じて、電離放射線を使用しない超音波画像診断やMRI(磁気共鳴映像法)など他の検査方法を考慮すること。

 

    • 小児に対するCTのパラメータは以下に基づき調整する:
      • 小児サイズ:患者のサイズ/体重パラメータに基づくガイドラインを用いるべきである。
      • スキャンされる部位:スキャンされる身体の部位は必要最小限の部位に限定すべきである。
      • スキャンされる器官系:mAやkVpの設定を下げる際は骨格、肺画像、一部の血管造影CT、 フォローアップ検査を考慮すべきである。

 

  • スキャンの解像度:最高画質の画像(すなわち最大限の放射線を要する画像)が必ずしも診断に必要とは限らない。多くの場合、診断に用いるのはより低解像度のスキャンである。CTスキャナー1で使用可能な線量の記載について熟知すること。造影撮影における異なる位相(多位相検査)で行われた複数スキャンを用いるCT検査を最小限にすること。これらの多位相検査は特に身体(胸部および腹部) 画像ではめったに必要とされないが、線量が大幅増につながる。

両親と検討すべき問題:

  • その小児の状況を診断するのに最良の検査方法はCTか?
  • そのCT検査は小児のサイズに合わせて調整してあるか?
  • その検査は信頼できる施設で小児に対するCTを熟知した放射線専門医と放射線科のチームによって実施されるものか?

両親がCTのリスクとベネフィットに関する情報を与えられた事によりコンプライアンスの低下には至らなかったが、両親からの医療従事者の情報に基づく質問が増えたという研究がある事は注目すべきである。

CTの放射線を最小限にするための長期的対策

小児のCTによる被ばくを低減するための迅速な対応に加え、長期対策も必要である。

  • 小児に対するCTのプロトコルの作成と採用を勧めること。
  • 虫垂炎の術前評価など小児の画像に対して選択可能な対策を勧めること。
  • 内部や外部の放射線専門医の出版物や会議を通じて、撮影条件を最適化し各患者に対するCTの必要性を評価するよう教育すること。米国小児科学会や米国家庭医学会を含む小児の健康管理に関連している団体、組織、学会を通して情報を広める。ワールド・ワイド・ウェブ(e.g. www.imagegently.org)上の入手可能な情報源を進んで提供すること。
  • CTの画質と線量の関連を明らかにすること、CTスキャンを各小児用にカスタマイズすること、CTの放射線と癌リスクの関連を解明することを目的としてさらなる研究を行う。

結論

CTは現在も小児診断の重要なツールだが、医療団体が小児に対する放射線量を最小限にしようと一致協力する事は大切である。 放射線専門医は、小児用にカスタマイズした撮影条件を使用する事で、合理的に達成しうる限り低く(ALARA)撮影することを絶えず考慮すべきである。小児にCTを実施する医師はすべて、個々の症例ごとにその使用を継続的に評価すべきである。慎重かつ最適に使用すれば、CTはわれわれにとって小児と成人双方に対して最も有用な画像検査法の1つである。
1線量に関する最も一般的なパラメータはCTの線量値(CTDIw またはCTDIvol)と線積分線量(DLP)である。CTDIwは16 cm、32 cm径のアクリルファントムを用いアクリル10cmの密度領域に対する線量測定に基づく;CTDIvol はピッチに関連したX線源の連続回転によるCTスライス間のギャップやオーバーラップを考慮に入れている;線積分線量はCTDIvolにスキャン長を掛けたものである。変換係数(新生児、 1、 5、 10、15歳)により、DLPで本プロトコルの年齢依存性実効線量の概算を示す事ができる。

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M.F 訳

中村光宏(医学放射線)

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原文


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