新たな標準治療の確立につながる研究成果

進行癌、特にメラノーマと神経芽細胞腫の新たな標準治療確立につながる研究成果が本日第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会の記者会見で発表された。

「本日発表された研究は転移性メラノーマ治療の飛躍的な進歩に光を当てるものでした」とペンシルベニア大学アブラムソンがんセンター(フィラデルフィア)の血液腫瘍学C. Willard Robinson記念講座教授兼血液腫瘍学部門長で、記者会見の共同進行役でもあるLynn Schuchter医師は述べている。「最近まで、私たちの患者に提供できる治療の選択肢は限られており、長期生存の可能性はあまり高くありませんでした。過去2年間に免疫療法でめざましい進歩があり、また、今回の発表で分子標的薬療法も有望であることがわかりました」。

「ハイリスクの小児神経芽細胞腫患者にとって、今回示された結果は、非常に治療の難しい疾患の予後改善に向けて1歩前進したことを意味します」と、共同進行役をつとめる、ハーバード大学医学部小児科学准教授で、ダナファーバー癌研究所とボストン小児病院の小児腫瘍学臨床部長であるLisa Diller医師は述べている。

この記者会見で注目したのは次のような研究であった。

  • BRAF阻害剤の第3相試験で進行メラノーマ患者の生存が改善:ランダム化国際第3相試験で、V600E BRAF遺伝子変異を標的とするvemurafenib(ベムラフェニブ)(PLX4032)が、標準的な化学療法と比較して、分子標的薬として初めて進行メラノーマ患者の全生存を改善することが示された。また、進行メラノーマ患者の無増悪生存期間(PFS)と奏効率を改善した最初の薬剤でもある。米国食品医薬品局(FDA)で承認されれば、ベムラフェニブはこの遺伝子変異を持つメラノーマ患者に対する新たな標準治療となる可能性がある。
  • 新たな高用量化学療法レジメンで難治性の小児神経芽細胞腫患者の生存を改善:ランダム化第3相試験の結果、比較的多い小児癌である、ハイリスクの小児神経芽細胞腫患者において、ブスルファンとメルファランの2剤を併用する骨髄機能廃絶化学療法は、カルボプラチン、エトポシド、メルファランの3剤を併用する骨髄機能廃絶化学療法レジメン(CEM)と比較して、全生存・無イベント生存が改善することが示された。この結果を受けて、長期生存率がわずか30%というハイリスク神経芽細胞腫の新たな標準治療が確立される。
  • 一次治療でのイピリムマブと化学療法の併用で転移性メラノーマの全生存を改善:ランダム化第3相試験で、未治療の転移性メラノーマ患者の一次治療として、免疫療法薬イピリムマブ(Yervoy)を、ダカルバジン(DTIC)の標準化学療法に加えたところ全生存が改善した。これは、進行メラノーマ患者に化学療法と免疫療法を併用して安全性と有効性が示された最初の研究である。

翻訳担当者 月橋純子

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

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