急性リンパ芽球性白血病―OncoLog 2016年5月号 | 海外がん医療情報リファレンス

急性リンパ芽球性白血病―OncoLog 2016年5月号

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急性リンパ芽球性白血病―OncoLog 2016年5月号

MDアンダーソン OncoLog 2016年5月号(Volume 61 / Issue 5)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

ハイリスク急性リンパ芽球性白血病の特定のサブタイプを対象とした新しい臨床試験

急性リンパ芽球性白血病

ハイリスク ETP-ALLサブタイプを対象とした新しい臨床試験

—– KATELYN WERNER

 

初期前駆T細胞性急性リンパ芽球性白血病(Early T cell precursor acute lymphoblastic leukemia:ETP-ALL) は、T細胞性急性リンパ芽球性白血病 (T-ALL)のまれなサブタイプのひとつで、従来の化学療法薬に対する奏効率が低く、予後不良である。今回、MDアンダーソンがんセンターにおいてETP-ALLに有望な分子標的薬を用いた臨床試験の登録が間もなく開始される。

 

T-ALLの生物学的特徴(T細胞性リンパ芽球性白血病にも見られる)と患者の臨床転帰との関連性はこれまでほとんど明らかになっていなかった。WHO分類によると、T-ALLはT細胞の4段階の成熟度 (prethymic, prothymic, thymic, mature) に合わせた白血病細胞マーカーに基づいてサブタイプ分類を行っている。実際には、研究者の多くはprothymicとprethymicのステージを1クラスにまとめて「早期」と分類するようになっていた。しかしT-ALL分類も、いずれのサブタイプも、ETP-ALLが発見されるまでは予後および予測的価値を示さなかった。

 

臨床に合ったT-ALLサブタイプ

ETP-ALLという分類が初めて記されたのは、2009年の小児T-ALLの研究である。フローサイトメトリーの表現型プロファイルにより、複数の患者における白血病細胞は、骨髄から胸腺に移行したばかりの細胞に由来することが示唆された。これらの細胞はユニークなバイオマーカーを有しており、幼若T細胞白血病の免疫表現型の主な特徴に類似している。具体的にはCD1a、CD8、CD5抗原陰性、1つ以上の造血幹細胞または骨髄球系抗原陽性の表現型をとる。試験に参加した小児患者の臨床評価から、このT-ALLサブタイプは従来のT-ALL治療法に対し奏効率が低いことが示された。

 

その後の試験で、小児T-ALLの11%–12%と成人T-ALLの7%–8%はETP-ALLであると報告され、小児ETP-ALL症例は臨床転帰が有意に不良であると結論付けられた。しかし、成人の臨床転帰を調査した複数の試験は、血液病理学科准教授Joseph Khoury医師と白血病部門助教Nitin Jain医師、その共同研究者らによる最近の試験結果が発表されるまでは不明な点が多かった。

 

研究者らは2000年から 2014年の間にMDアンダーソンがんセンターにおいて新規にT-ALLと診断された患者111人の記録を後方視的に解析した。患者全員が初回の化学療法としてシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾンの多分割投与レジメン(hyper-CVAD療法)か増量Berlin-Frankfurt-Münster療法を受けた。ETP-ALLの基準を満たした患者19人のフローサイトメトリーを再評価したところ、ETP-ALL患者はETP-ALL以外の患者より完全寛解率が有意に低かった(ETP-ALL:73%、ETP-ALL以外:91%)。実際、予後に関連すると考えられていた11種のマーカーを多変量解析したところ、有意差が認められたのは年齢とETP-ALLサブタイプの2つのみであった。

 

特筆すべきはこの試験が単一の大規模集団を対象に行われたことである、とKhoury博士は述べた。「基本的に同じ治療を受け、かつ比較的充分にコントロールされたコホートによってこのサブタイプの予後に対する意義が今回示されました」。Jain医師は次のように述べた。「われわれは成人ETP-ALL患者の臨床転帰は小児ETP-ALLのようであることを確認しました。同じ化学療法による治療を受けましたがETP-ALL患者については長期的な転帰は芳しくなかったのです」。

 

ETP-ALLサブタイプを標的に

「長年、T-ALL患者は治療的見地から単一のカテゴリーとして捉えられてきました」とKhoury医師は述べた。より頻度の高い疾患であるB細胞性ALLにおいては、フィラデルフィア染色体などの遺伝学的マーカーに基づいて異なる治療法が選択されるがT-ALLは典型的に同じ化学療法レジメンで治療される。「われわれの試験結果に基づいて、ETP-ALL患者にはETP-ALL以外の患者と異なる治療アプローチが必要になると考えます」。

 

「ETP-ALLの患者数は比較的少数ですが、そのような患者にとっては切実な問題です」とJain医師は述べた。Jain医師とKhoury医師らのチームはその解決方法を模索している。彼らが有望と考えている薬剤はアポトーシス制御因子Bcl-2を標的とするものである。近年、白血病部門教授Marina Konopleva医学博士らによる研究により、T-ALL細胞、特にETP-ALL細胞はBcl-2を高発現していることが明らかとなっている。経口Bcl-2抑制剤であるベネトクラックス(venetoclax :ABT-199)は、臨床試験において慢性リンパ球性白血病に対する効果が示され、前臨床試験においてETP-ALLに対し有効である可能性が示唆された。「ETP-ALL細胞は試験管内の実験とモデルマウスを用いた実験において、選択的にBcl-2抑制効果を示します」とJain医師は述べた。彼らはETP-ALLに対するこの治療薬の可能性に確かな手応えを感じている。

 

続く3-5カ月で、Jain医師と、白血病部門、血液病理学科の研究者はALL患者を対象に単一群第IB相複数用量漸増試験を実施しベネトクラックスの安全性評価を行った。対象となったのは臓器障害がなく、他の悪性腫瘍に対する治療歴のない50歳以上のALL患者(全タイプ)であった。これはALL患者を対象としたベネトクラックスの初めての臨床試験となる。

 

本試験は計画に従い、mini-hyper-CVAD療法と呼ばれる治療強度の低い化学療法レジメンにベネトクラックスを併用する形で行われる。mini-hyper-CVAD療法はhyper-CVAD療法と類似するが、ドキソルビシンを含まず、ドキソルビシンに代えた薬剤を低用量で使用する。低用量化学療法レジメンを用いる理由はベネトクラックスに関連する、腫瘍崩壊症候群と好中球減少症の発現リスクを最小限に抑えるためである、とJain医師は述べた。

 

ETP-ALLに対する有望な他の治療法は、JAK(Janus kinase)シグナル経路を標的にするものである。Bcl-2と同様に、ETP-ALL細胞ではJAKレベルが著しく高く、JAK阻害剤がこのサブタイプに有効であることが推測される。前臨床試験ではJAK1/JAK2阻害剤のルキソリチニブがT-ALL細胞に効果を示した。Jain医師は「ルキソリチニブは、将来ETP-ALLサブタイプも含めたT-ALL患者の治療選択肢になるでしょう」と述べた。Jain医師、Khoury医師、血液病理学科と白血病部門の研究者らは、JAK阻害剤の実現可能性について実験モデルを用いて試験中である。

 

ETP-ALLの同定

従来のT-ALL 治療に反応しない患者を予測するには、ETP-ALLサブタイプを同定することが実務上重要な点である、とKhoury医師は述べた。スクリーニングに必要なのはフローサイトメトリー法だけである。フローサイトメトリー法は大抵の場合、精査の一環で標準的に行われている診断的手法であり、検査でETP-ALL陽性と判明した患者に対してはより強力な化学療法や開発中の薬剤を使用することで、より良好な治療効果がみられるかもしれない。

 

Khoury医師らのチームは臨床研究センターにおいてこのサブタイプに対しての注意喚起を行い、新しい治療法の開発に繋げようとしている。また、同チームはクリニックにおいて、腫瘍内科医と患者がこのサブタイプに関する情報を知らされた上で治療選択をするように呼びかけている。「腫瘍内科医は、自身のT-ALL患者のサブタイプがETP-ALLであると確認したら、従来と異なる治療を行う必要があることを認識しておかなければなりませんね」とKhoury医師は述べた。

 

原文グラフキャプション訳】
T細胞性急性リンパ芽球性白血病患者111人に対する後方視的解析によって初期前駆T細胞(ETP-ALL)サブタイプの患者(n = 19)は他のサブタイプ患者に比べて標準化学療法レジメン後の全生存率が低いことが明らかとなった(p = .008)
Jain N, et al. Blood. 2016;127:1863–1869.

 

 

 

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原文掲載日

翻訳武内優子

監修佐々木裕哉 (血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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