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血小板阻害剤は鎌状赤血球症の疼痛発作を有意に減少させることはない

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血小板阻害剤は鎌状赤血球症の疼痛発作を有意に減少させることはない

先進国および発展途上国の13カ国での小児試験は、最も大規模にして地理的に広範囲の試験の一つである

ダナファーバー癌研究所

 

鎌状赤血球症において、今まで最も大規模にして地理的に広範囲な国際臨床試験の一つについて記述しているNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に掲載された報告によると、抗血小板薬プラスグレルによる治療で、鎌状赤血球症を有する小児患者の疼痛発作または高度の肺合併症の発現率が著しく減少することはない。

 

Determining Effects of Platelet Inhibition of Vaso-Occlusive Events (DOVE) 試験(ClinicalTrials.gov NCT01794000) は、二重盲検ランダム化プラセボ対照第3相臨床試験で、米州、欧州、中東、アジアおよびアフリカの13カ国51施設で実施された。本試験はダナ・ファーバー癌研究所/ボストン小児がん・血液疾患センターおよびカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のBenioff Children’s Hospital Oakland の研究者ら主導で、血栓性心血管イベントを減少させるため成人患者に用いられる薬剤であるプラスグレルが、鎌状赤血球症を有する小児患者においても、疼痛発作または急性胸部症候群と定義される血管閉塞発作(VOC)の発現率を有意に減少させることができるかどうか究明することを目標とした。

 

鎌状赤血球症は、世界中で約1億人の小児および成人に発症しており、その大部分がサハラ以南のアフリカ、中東およびインドである。米国では、約100,000人の小児および成人に発症しているにすぎないが、特にアフリカ系アメリカ人の血筋に多くみられ、希少疾病に分類されている。この遺伝性血液障害を有する患者には、硬く粘着性のある鎌型の赤血球、感染と戦う白血球、血栓を形成する血小板および血管壁内皮細胞の間での複雑な相互作用によって引き起こされる小血管の血流遮断に関連する反復疼痛発作がたびたび発現する。これらのクリーゼは、下流組織の酸素を欠乏させ、疼痛および炎症を引き起こす。クリーゼの繰り返しが、徐々に組織障害および慢性炎症を引き起こす。

 

今までに、米国食品医薬品局により鎌状赤血球症によるクリーゼを治療しリスクを減少させる薬剤として承認されたのはヒドロキシウレアのみである。しかし、ヒドロキシウレアはすべての患者に効果があるわけではなく、また小児患者にもたびたび処方されるものの承認されているのは成人患者への使用のみである。

 

「鎌状赤血球症は非常に複雑な、多系統の病態生理を持っています」とダナ・ファーバー癌研究所の血液疾患センター/ボストン小児がんセンターの臨床部長で、DOVE臨床試験の共同試験責任医師であるMatthew M. Heeney医師は述べた。「我々はこの疾患についてより学ぶことで、赤血球を超えて血小板など他の血球がVOCの発症に重要な役割を果たしていることを発見しています。我々が介入できる経路が他にもある可能性があります 」。

 

「プラスグレルが鎌状赤血球症を有する小児患者の症状を軽減しなかったことは残念でしたが、その疾患が発現する広範囲の国々で患者さんが登録された本試験は、非常に重要です」とUCSFのBenioff Children’s Hospital Oaklandの血液腫瘍医およびDOVE試験の共同試験責任医師であるCarolyn Hoppe医師が付け加えた。「我々が本試験をデザインしたり実施したりした努力は、将来の研究のためのモデルとして役立ちます」。

 

第一三共株式会社および米国イーライリリー・アンド・カンパニー社がエフィエントという商標で開発および販売したプラスグレルは、P2Y12と呼ばれる酵素を阻害することで血小板が凝集するのを防ぐ。本経口薬は、心臓病を有する成人患者における血管形成術または動脈ステント挿入後の血栓のリスクを軽減するため、米国で承認されている。

 

DOVE試験には鎌状赤血球症を有する341人の小児患者が登録され、うち170人に対し、血小板活性の目標範囲を維持するため個別に盲検化された用量でプラスグレルを9~24カ月間毎日経口投与した。残りの患者にはプラセボを投与した。すべての患者に対し、来院の原因となるVOC、および血小板活性が減少したことに起因する出血リスクのいかなる増加についても観察した。さらに、4歳以上の患者は、来院と来院の間の疼痛を伴う事象の報告に役立たせるための電子疼痛日記を毎日つけた。

 

本試験をこのように広範囲の地理的スケールにおいて成功裏に実施するため、本試験のチームは、異なる治療水準、地域の技術的資源、安定した電力の欠如などインフラの課題といったいくつかの障害に対処しなければならなかった。

 

本試験期間の最後に、プラスグレル群の患者間におけるVOCの全発現率は、1人年あたり2.3エピソードであった。本発現率は、プラセボ投与群の患者(1人年あたり2.8エピソード)との有意差はなかった(p=0.12)。さらに、プラスグレル投与群では副次的な転帰尺度(例えば、VOC関連の入院率、入院期間、VOCの間隔、虚血性発作または虚血性脳卒中の発現率、輸血率、疼痛率、疼痛の強度、鎌状赤血球症に関連した疼痛に起因する鎮痛薬使用または授業の欠席)でいかなる有意な効果もなかった。本試験の試験責任医師らは、プラスグレル関連の安全性にかかわる有害事象はなかったと指摘した。

 

本データは、12~18歳の患者(p=0.06)とヒドロキシウレアを投与されていなかった患者(p=0.06)の間でVOC発現率の減少への傾向を示した。しかし、これらの傾向は統計学的に有意ではなく、妥当性を決定するためのさらなる研究が求められる。

 

「プラスグレルは有意な結果に到達しませんでしたが、その知見において本チームが大規模かつ国際的で、患者中心の研究を実施する障壁が極めて高い疾患の厳密かつ精密な試験を成功裏に完了したという事実が損なわれるべきではありません」とHeeney医師は述べた。「本試験のデザインは、VOCにおけるプラスグレル単剤の全般的な効果を検討するものでしたが、抗血小板薬を治療の要素の一つとして組み込むような異なったアプローチには、治療効果があるかもしれません」。

 

本試験は、第一三共株式会社および米国イーライリリー・アンド・カンパニー社から助成を受けた。

原文掲載日

翻訳太田奈津美

監修吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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