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小児がんにおける遺伝性変異の役割が研究で明らかに

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小児がんにおける遺伝性変異の役割が研究で明らかに

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

これまで行われてきた同種の研究の中で最も説得力のある研究によると、小児がん患児の8パーセント超に、がんの素因に関連する先天的遺伝子変異が存在することがわかった。

 

本研究で、小児がんに対する遺伝性(生殖細胞の)変異の役割の有無に関し、これまでで最も正確な評価方法が得られたのに加え、一部の成人がんと関連性を有する典型的な数種の先天的遺伝子変異が、小児がんの発生に対しても何らかの役割を果たしていることが示唆された、と論文の著者は語った。

 

同研究の論文は11月18日に発表され、New England Journal of Medicine(NEJM誌(訳注: 2015年12月10日号)に掲載されている。

 

深く追求した研究

 

同研究の実施にはセント・ジュード小児研究病院とワシントン大学(WUSTL)医学部の研究者が参加し、1100人超の小児がん患時から得た正常組織と腫瘍組織のサンプルよりDNAを分離した。研究者はさまざまな手法を用いてDNA解析を行い、そして遺伝性のがん素因症候群と関連のある60の遺伝子に注目して解析を行った。

 

この60の遺伝子群に含まれる、がんを誘発する、もしくは誘発の可能性のある変異が患児95人(8.5%)の正常細胞にみられた、と研究者は報告している。一方、別のゲノム研究に参加した約1000人の成人から得た正常組織サンプルを調べると、同様の変異を有するのは1.1%に過ぎなかった。

 

これらの遺伝子群の変異発生率は、がんの種類によってさまざまであった。例えば、非中枢神経系腫瘍(肉腫や神経芽腫など)を有する患児の約17パーセントにこの遺伝子群の変異がみられた。だが白血病の患児ではわずか4.4パーセントにしかみられなかった。

 

全体的に、がんを誘発する変異は60の遺伝子群のうち21種の遺伝子にみられ、そのうち半数以上は、がんを引き起こす細胞変化を防ぐのに極めて重要な役割を担うことから「ゲノムの守護者」と呼ばれるがん抑制遺伝子TP53で発生していた。

 

遺伝子群には、成人における乳がんリスクの著しい増加に関連する3種の遺伝子が含まれていた。8人の患児ではその中の1種の遺伝子に変化がみられ、6人にBRCA2遺伝子の変異、各1人にBRCA1遺伝子とPALB2遺伝子の変異がみられた。しかしながら、この小規模の患児集団においては、これらの変異の存在と特定のがんとの関連性を認めなかった。

 

また研究班によると、60のがん素因遺伝子のいずれかの変異を有する患児のうち、がんの家族歴があるのは40%に過ぎないことが分かった。この結果は、研究班ががんの家族歴に関する情報を把握している、95人中58人の患児集団から得た結果である。

 

研究班は、いくつかの要因(研究に参加している患児の多くは親が若く、年齢的にがんを患う可能性が低いことなど)をもとにして考えると、この数字は低すぎるかもしれないと述べた。

 

仮に過小評価だとしても得られた知見は重要である、とJhon Maris医師(フィラデルフィア小児研究病院所属)は同記事の論説で記している。

 

「少なくとも、家族歴のみでは、新たにがんと診断された患児にがん素因症候群が存在した可能性の指標として信頼性がない、という事実を研究は明らかにしている」とMaris医師は記している。

 

治療と研究への影響

 

研究結果は、医師が患児に行う治療や家族への指導に対する方針に直ちに影響を与える可能性があるかもしれない、と研究の著者は述べている。

 

「多くの小児がん患児にとって、腫瘍組織と正常組織に対して網羅的な次世代DNAシークエンシングを行うことにより臨床上の管理に影響するだけでなく、がんリスクを有する可能性があり継続的ながん検診から利益を受けることになるかもしれない親兄弟に対して遺伝カウンセリングと遺伝子検査を行うことにつながるような貴重な情報が得られると考えられます」と、研究の上級著者であるJames Downing医師(セント・ジュード小児研究病院所属)はニュースリリースのなかで語った。

 

医師や家族が将来的に遺伝子検査を望むのであれば、遺伝子検査の種類は重要であると思われる。研究みられた変異のうち4つはモザイク状態であった、つまりその変異は検査した正常細胞のごく一部でしか発見されなかったことを意味するとMaris医師は記した。つまり、「従来の遺伝子検査方針をとっていたら見逃されていたかもしれない」と医師は説明している。

 

本知見は一部のがん患児における生殖細胞変異の影響の可能性に対して「重要な解明であった」ものの、その知見は注意して解釈されるべきだ、とMalcolm Smith医学博士(NCIがん治療評価プログラム小児科副長)は強調した。

 

例えば、既知の遺伝的素因を有するがん(副腎皮質がんなど)を患う患児が研究内であまりにも多くとりあげられ、そのため生殖細胞変異の発見数が人為的に上昇した可能性があるとSmith医師は語った。

 

しかしながら、「この研究から、より効果的ながん治療管理、親族に対する遺伝子検査の指導、小児がんに苦しむ患児と家族への適切ながん予防および検診の方法の制定における、重要なエビデンスが得られるのです」とSmith医師はしめくくった。

 

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写真 (原文参照)新しい研究から、小児がんにおける遺伝性変異の役割の可能性に関する、現時点で最も正確な評価方法が得られた。所蔵: 米国国立ヒトゲノム研究所
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原文掲載日

翻訳渋谷 武道

監修寺島慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター 小児がんセンター)

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