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避妊薬のピルが「子宮体がんのリスクを下げる」

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避妊薬のピルが「子宮体がんのリスクを下げる」

英国医療サービス(NHS)

2015年8月7日金曜日

「ピルにより、子宮がんの患者数が20万人減少」と、Sky Newsのウェブサイトが報じた。ニュースの見出しとしてはめずらしく、これは信頼できる数字である。ただ注目すべきなのは、これが10年間で予防できた数である点だ。

 

同ニュースは、長期にわたってピルを飲み続けている女性ほど、子宮がんにかかるリスクが低いことを明らかにした信頼性の高い調査について伝えている。見出しに謳われているように、そのリスクの減少幅はきわめて大きい。ピルを10-15年間使用することで、子宮がん(子宮体がん、子宮内膜がんともいう)にかかるリスクが半減するのである。この効果は、経口避妊薬の使用をやめた後も、30年にわたって持続していた。

 

この調査では、累計で140,000人以上の女性が参加した36の研究の結果を集積した。これは、いわゆるピルとして知られる配合経口避妊薬の使用歴を、子宮がんに罹患している女性とそうでない女性とで比較することを目的としている。今回の結果はプロゲステロンのみの「ミニピル」とは関係がない。

 

調査の結果によると、経口避妊薬による子宮がんの予防効果は、1960年代、70年代、80年代のそれぞれの10年間のあいだで違いはみられなかった。エストロゲンの含有量が高い初期の経口避妊薬を服用していた場合も同様だった。

 

この知見は新しいものではない。ピルが子宮がんのリスクを軽減することは以前から知られていた。しかし今回の調査は、エビデンスを集積して、両者の間にどの程度の強い関連性があるのかを明らかにしているのである。

 

子宮がんは比較的よくみられるがんで、もっとも一般的な症状は膣からの異常な出血である。

 

販売されている経口避妊薬はホルモン剤だけでなく、その種類は多岐にわたる。それぞれに長短があるので、使用にあたっては、どのタイプのものが自分に合っているのか、よく検討されたい。

 

研究の出典

今回の調査は、Collaborative Group on Epidemiological Studies on Endometrial Cancerという大規模な研究グループによって実施されたものであり、英国医学研究審議会およびキャンサーリサーチUKから研究資金を受けた。

 

結果は査読付きの医学誌The Lancet Oncologyに掲載された。

 

The GuardianおよびSky NewsMail Onlineはいずれも、同調査について正確に報じている。3媒体とも、ピルの服用期間5年ごとに子宮がんにかかる可能性が4分の1ずつ低くなり、その結果、過去10年の間に20万例の子宮がんの発症が抑えられた可能性があると伝えた。

 

The Guardianの見出しはこうだ。「10年間の定期的なピルの服用が『2種類のがんの予防に効果』」。これは、今回の子宮がんについての調査のほか、2008年に発表された卵巣がんのリスクに対する同様の効果を明らかにした研究を指したものだ。

 

研究の種類

今回の調査は系統的レビューおよびメタ解析を行ったもので、経口避妊薬と子宮がんとの関連を研究することを目的としている。

 

子宮がんは比較的よくみられるがんで、もっとも一般的な症状は膣の異常出血である。

 

通称ピルと呼ばれる配合経口避妊薬が子宮内膜がんのリスクを下げることはすでに知られている。しかし、服用をやめた後その効果がどのくらいの間続くのか、また喫煙の有無や体重などの他の要因で予防効果に違いがあるのかは明らかになっていない。

 

メタ解析はこうした課題を調査するのに適した手法であり、数多くの研究結果を集積して総合的な結論を導くことができる。データを多数集積することで、結果の信頼性を向上させられるのである。この手法では、同じような手法で同じような課題を調査している異なる研究を見つけられるかどうかにかかっている。それができなければ、異なる研究の結果を集積すべきではない。

 

研究内容

今回研究者らは、36の研究を合わせて、子宮内膜がんに罹患した27,276人の女性(症例群)と罹患していない115,743人の女性(対照群)のデータを集積し、経口避妊薬の服用とがんの発症との間になんらかの統計的に有意な関連がみられるかどうか、30年分のデータを調査した。

 

研究チームは医学関連のデータベースを検索し、経口避妊薬と子宮内膜がんについて調べた研究を洗い出した。また、各著者に連絡を取り、未発表のデータも組み入れた。

子宮のいずれかの箇所に浸潤がんがあり、それ以前にはがんを発症したことのない女性を症例群とし、がんの罹患歴がなくかつ健康な子宮を持つ女性を対照群とした。

 

ほとんどの研究では、参加女性がホルモン経口避妊薬を服用したことがあるかどうかを調査しており、さらに服用していた場合はその累計期間と、使用開始時と最後の使用時の年齢(または暦年)についても調べている。

 

ホルモン経口避妊薬の種類について情報を集めていた研究は13にとどまった。他の23の研究に参加した女性は、エストロゲンとプロゲストーゲンの両方が含まれる配合剤の経口避妊薬を服用していたものと考えられる。というのも、こういった情報を収集していた研究では、ホルモン経口避妊薬を服用していた参加女性の95%以上が配合剤を使用していたと報告しているためだ。


 

今回の解析では、経口避妊薬による影響のみを抽出するため、がんのリスクに影響することがわかっているあらゆる因子を考慮している。こうした因子には以下のようなものがある。

 

年齢
出産回数
ボディー・マス・インデックス(BMI
喫煙習慣
ホルモン補充療法歴

 

今回の調査では、子宮内膜がんの女性のうち、プロゲステロンのみを含む経口避妊薬(「ミニピル」とも呼ばれる)を服用していた場合と、逐次使用経口避妊薬を服用していた場合(エストロゲンのみの薬剤とエストロゲン/プロゲステロン配合剤を逐次的に服用していた41人)については解析することができなかった。上記の条件に該当する女性は、十分な解析ができるほどの人数がいなかったためである。

 

今回の調査で対象となった子宮内膜がんの女性(症例群)の平均年齢は63歳だった。経口避妊薬を過去に使用したことのある女性の割合は、症例群の女性で35%で(使用期間平均3年)、対照群の女性で39%(使用期間平均4.4年)だった。

 

経口避妊薬を使用していた期間の長い女性ほど、子宮内膜がんのリスクが低かった。具体的には、経口避妊薬を5年服用するごとに子宮内膜がんのリスクは24%ずつ減少していた(risk ratio (RR) 0.76, 95% confidence interval (CI) 0.73- 0.78)。これはつまり、経口避妊薬を10年から15年使用すると子宮内膜がんのリスクが半減することになる。

 

このリスク低減効果は経口避妊薬の服用をやめてからも30年以上持続していた。また、古い時代では避妊薬に含まれるエストロゲン量が多かったものの、1960年代、70年代、80年代それぞれの10年で、服用された避妊薬による子宮内膜がんのリスクへの影響に明らかな違いはみられなかった。

 

結果には、小さいながらも興味深い点がいくつかあった。なかでも特筆すべきは、経口避妊薬服用と関連したリスクの低下にがん種による違いがあったことで、上皮性のがん(子宮の内層に生じるがん)のリスクは下がった一方で(RR 0.69, 95% CI 0.66-0.71)、肉腫(子宮のまわりの筋肉組織や支持組織のがん)のリスクに対しては有意な効果がみられなかった(RR 0.83, 95% CI 0.67-1.04)。

 

イギリスなどの収入の高い国々では、経口避妊薬を10年間使用すると、75歳までに子宮内膜がんになる絶対リスクが、計算上100人毎に2.3人から1.3人に低下する。

 

結果の解釈

研究者らは次のように述べている。「経口避妊薬の服用には、子宮内膜がんを長期にわたって予防する効果があります。本調査結果によると、先進国では過去50年の間(19652014年)に、経口避妊薬によって、75歳未満の女性の子宮内膜がんを40万例予防できたことが示唆されます。このうち、過去10年間(20052014年)の予防効果は20万例です」。

 

結論

今回の調査により、配合経口避妊薬(ピル)を服用していた期間の長い女性ほど、子宮内膜がんのリスクが大幅に抑えられていたことがわかった。リスクの低減幅は非常に大きく10~15年間の使用でリスクは半減した―、その効果は服用をやめた後も30年にわたって持続した。 

 

この予防効果は避妊薬に含まれるエストロゲンの量にあまり左右されないとみられ、また、出産回数やBMI、閉経の有無など各女性の特性にも影響されないようだった。

 

同調査は規模が大きく、同じテーマで行われた研究のほとんどを組み入れている。解析の信頼性も高く、長期のリスクの算出精度は高い。こうしたことから、今回の知見の信頼性は高いと言える

 

どのような研究調査にも必ず限界がある。今回の場合、その信頼性が、もとにした研究の信頼性を上回ることがない。例えば、もとになったすべての研究で、参加女性全員の経口避妊薬の使用について完全で詳細な情報が得られたわけではない。しかし、これが結果に影響を及ぼすことがあっても、それは限定的だろう。

 

研究者によると、1960年代に服用されていた一般的なピルには、80年代に飲まれていたものに比べて大量のエストロゲンが含まれていたようである。それにもかかわらず、年代別でリスクの減少幅に違いはまったくみられなかった。研究者はこの点について次のように解釈している。「ホルモンは、低用量ピルであっても、子宮内膜がんの発症率を下げるのに十分な量が含まれているのです。ピル成分の2つのホルモンの用量についてそれぞれに評価した2つの研究から得られた結果とも、これは合致します」。

 

ピルにリスクがないわけではない。また、すべての女性がピルとの相性がよいわけでもない。そのリスクとしてよく知られているものに血栓症がある。一部の女性ではとくにリスクが高く、例えば、喫煙者や肥満の人、偏頭痛または心血管系の疾患がある人がそうだ。さらに、こうした女性は乳がんや子宮頸がんのリスク増加とも関連している。

 

論文の主著者であるValerie Beral教授は、The Guardianに同調査からくみ取れる意味を次のように説明した。「乳がんと子宮頸がんは増加します。ですが、それはきわめてわずかな数ですし、その影響は続きません」。同紙の補足によると、「ピルの服用をやめれば、乳がんおよび子宮頸がんのリスクはただちになくなる」のだという

 

避妊薬には、ホルモンを使用するものしないものを含めてさまざまな種類があり、経口薬でないものもある。それぞれに一長一短があるので、自分に一番合ったものを探すには、本サイトの避妊薬ガイドを参考にされたい。

 

Analysis by Bazian. Edited by NHS Choices. Follow Behind the Headlines on Twitter. Join the Healthy Evidence forum.

【キャプション】ピルは効果的な避妊方法である。

 

原文掲載日

翻訳筧 貴行

監修原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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