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OncoLog 2015年6月号◆がんサバイバーの性機能障害を語る

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OncoLog 2015年6月号◆がんサバイバーの性機能障害を語る

MDアンダーソン OncoLog 2015年6月号(Volume 60 / Number 6)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

がんサバイバーの性機能障害を語る

がん治療は、患者の性生活に影響を及ぼす多くの副作用をもたらす。がん治療の副作用に起因する性機能障害として、機能変化、肉体的な変形、人間関係の変化などが含まれ、うまく対処できることもしばしばあるが、性機能障害の実態を明らかにすることは容易ではない。

 

患者集団や性機能障害の定義は調査によって異なり、性機能障害ががんサバイバーの中でどの程度一般的であるかを正確に知ることは難しい。しかし、患者の間に幅広く存在することはわかっている。LIVESTRONG財団の2010年の調査では、回答した3,100人以上のがんサバイバーのうち、約3分の2が、治療後に何らかの性機能障害を経験していた。

 

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター婦人科腫瘍学・生殖医療部門教授のAndrea Milbourne医師は、「性機能障害はがん患者にとってQOL(生活の質)に関わる大きな問題です。われわれが担当する患者さんの中には、セックスができないことを理由にパートナーが去っていくとおっしゃった方もおられました」。

 

さらに、LIVESTRONG調査によると、性機能障害を報告した患者の30%が、そのことに関するケアを受けていないと報告した。

 

身体的要因

最も患者数の多いがんのいくつか、特に骨盤領域のがんで性機能障害を伴う治療が行われていることが、がんサバイバーの性機能障害増加の背景にある。ある種のがんの外科手術では、性器の完全または一部摘出を必要とする。外科手術及び放射線治療は、性機能や性的快感に不可欠な神経、血管、その他の構造の損傷または破壊に繋がることがある。細胞傷害性化学療法剤およびホルモン療法はホルモンの変化を引き起こすことがある。例えば、女性では一次的、永続的な月経閉止、男性ではテストステロンの低下などであり、これらがセックスを行ったり楽しむことを困難または不可能にしている。

 

婦人科腫瘍学・生殖医療部門助教のAndrea Bradford博士は、「がん治療を受ける患者さんのほとんどが治療後はいつもの生活に戻れると期待されますが、それはがんの種類、およびその治療によります。腕に初期のメラノーマを発症し、外科手術または放射線治療を行った患者さんは、性機能障害に関しては高リスクではありませんが、進行した前立腺がんの患者さんの場合は、事情は全く異なります」と語る。

 

その他のがん治療に関連する状態、例えば疲労のような症状もがんサバイバーの性機能障害の要因になり得る。さらに、がんサバイバーに限らず一般的にも性機能障害のケースは比較的多く、機能障害の原因が真にがん治療によるものかどうかを見極めることを難しくしている。

 

男性の場合

男性の場合、主に前立腺がん、膀胱がん、大腸がんといった骨盤内臓器がんの治療に伴う一般的な性機能障害には、勃起障害、無射精、射精時の痛み、性交中の尿漏れがある。この中で最も多いのが勃起障害で、テストステロンの低下や、勃起をコントロールする神経の損傷、陰茎に血液を送り込む血管の損傷の結果として生じることがある。治療前に既存疾患がなく、勃起障害がない患者で、神経を温存できた患者には、勃起障害の回復のため、数々の治療選択肢がある。

 

泌尿器部門教授のRun Wang医師は、次のように語る。「そのような患者さんには、シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ)、タダラフィル(シアリス)、アバナフィル(ステンドラ)、バルデナフィル(レビトラ)などのホスホジエステラーゼ5阻害薬が効果を示す可能性があります。薬物治療で効果が得られない場合、または患者がより早期の回復を望む場合は、陰圧式勃起補助具または陰茎注射を用いた、いわゆる陰茎リハビリテーションを早期から行います。これでも結果が出ない場合は、どの段階でも陰茎インプラントの選択肢があり、この治療による満足度は非常に高いです」。

 

手術や放射線治療の結果、前立腺や精嚢を切除または損傷した男性は、無射精を経験するかもしれません。これは射精ができなくなる状態で、オーガズムを伴うケースも伴わないケースもあります。この状態に慣れるには時間がかかるかもしれないが、Wang医師は「これに関しては、外科手術の結果であり、正常な現象であることを受けとめなければなりません」と語る。

 

射精中に痛みが生じることもあり、その痛みに対しては、αアドレナリン受容体拮抗薬(α遮断薬)の処方が可能である。性交中の尿漏れの防止には、薬物治療または外科手術の選択肢がある。男性がん患者において、治療後に性機能障害が生じるのは、大多数が前立腺がんの患者である。しかし、Wang医師は「全てのがん種で勃起障害も訴える患者さんをよく診察している」と語る。

 

女性の場合

卵巣がんや子宮頸がんや他の骨盤内のがんの治療を受けた女性に多い身体的問題には、膣乾燥、膣狭窄、膣短縮(特に子宮頸がんの治療を受けた場合)があり、これらはすべて性交中の痛みの原因となる。

 

「私が診た女性患者の約半数は性行為中に多少の痛みを感じているようです」 Bradford博士は述べる。「そのような女性の多くは、パートナーが期待する行為が痛みの原因となることを怖れて、親密な関係になりすぎることを避けるためパートナーとの距離をおいています」。

 

局所用保湿剤を用いて膣乾燥を緩和することができ、性交時に水性やシリコーンベースの潤滑剤を用いることもできる。クリーム、リング、錠剤などを用いた低用量の経膣エストロゲン補充療法を用いて膣を保湿し、膣萎縮を緩和することもできる。手術や放射線治療により膣瘢痕、狭窄、短縮のある患者では、膣拡張器を用いて膣を延長、拡大することもできる。

 

がん治療の後には、性欲の低下や減退も多い。

 

「女性患者からよく聞くのは、治療後には性に対する興味がない、パートナーから求められなければ何年でもセックスレスでも構わない、という声です」Milbourne医師は述べる。「残念ながら、性欲消失に対して医学的にできることはあまりありません」。

 

両側卵巣を摘出、または損傷したために早期閉経した結果、性機能障害が発現、悪化する女性もいる。

 

その他の要因

手術や他のがん治療後の瘢痕は、表面的な問題のみにはとどまらない。外観の損傷や身体的な変化のために不安、ふさぎこみ、自尊心の変化が起こり、性的関係を築く障害となることもある。

 

「性的欲望にはさまざまな面があります」Milbourne医師は述べる。「髪が抜けた患者、体重の増減が激しい患者、人工肛門にした患者、他にどのような状態であれ、このように考えるかもしれません。“自分で自分を魅力的に感じないのに、パートナーから魅力を感じ続けてもらえるはずがない”精神と身体を分けることはとても困難なのです」。

 

Milbourne医師は、外陰がんに冒されたために陰核切除を要したある患者を思い起こした。この患者は、パートナーがどう思うかを怖れて、情熱的な関係を求めるのを完全にやめてしまった。Milbourne医師は、次のように述べる。「これまで身体的な性機能と考えていたこととはまったく関係のないことかもしれませんが、彼女は自分をどう感じるかが原因で、性的なものにせよ何にせよ人間関係を築く気になれないのです」。

 

性の「新しい現実」

「新しい現実」という用語は、がんサバイバーが治療終了後に受け入れなければならないライフスタイル変化の深さと広さを表すのによく使用される。特に性に関しては、これを受け入れやすい患者もいる。

 

「治療が終了した後、中には無理して元通りの生活に戻る必要はないと考える患者もいますが、その家族、友人、愛する人(パートナーでさえ)普通の生活に戻るようプレッシャーをかけることがあり、そこには性生活も含まれることがあります」Bradford博士は述べる。「多くの女性患者が、自分が治療前と同じ人間には感じられないと言っていますが、パートナーの男性が”君は大丈夫だ、治ったんだ、健康なんだ、もっとセックスに興味を持とうよ”というのです」。

 

がん治療を終えた患者の性生活を妨げる要因はいくつかあるが、現在起こっている性的問題に対する主なリスク因子は、性行為や性的機能に対する考え方を変えられないことである。

 

「多くのがんサバイバーが、治療後に行う性行為が以前に楽しんでいたものとは必ずしも同じではないという事実によって行為を妨げられたり、以前のようにはできないという考えに動揺してすべてを避けてしまったりしている可能性があります」Bradford博士は述べる。この問題に取り組むために、Bradford博士は患者にパートナーとの間で楽しめる親密な関係を何か見つけて、性に対する前提条件や期待でもはや役に立たないものを一部あきらめることを提案している。

 

「患者はこんなふうに言うかもしれません。“性交の間勃起を維持することができないので、試してみる気にもならない”」Bradford博士は述べる。「しかし、患者のパートナーは性的関係の親密さを楽しんでいて、残りの生涯を同居人のように生活するのではなく何らかの形で肉体関係を持ちたいと言うかもしれません」。

 

捉えどころのない会話

患者に、治療によって性機能障害が起こるかもしれないと告げることも、適切なインフォームドコンセントの一環である。それでもなお、この情報(そしてそれに関連して患者が抱きうる懸念)はがんの診断が大きくそびえ立つ前では脇へ押しやられてしまう。

 

「最初に診断された時には、ほとんどの患者は完全にがんに心身を奪われます」Wang医師は述べる。「あまりに怖くて、その先に性的な障害が待ち受けているなど考えることもできないのです」。

 

「性に関して聞きたいが、生命の心配をすべき時に不真面目に感じるから聞けない」という患者もいるかもしれない、とMilbourne医師は述べる。「そして多くの患者が、“その時はその時で考えよう”と思うのです」。

 

治療後に性機能障害が起こると、クオリティ・オブ・ライフに影響するにもかかわらず多くの患者は性的な健康について話すのを嫌がる。そして医師自身も性的な問題を話すのは困難と思うこともある。文化的信条、羞恥心、医師と患者の堅苦しい関係などが重要な会話を切りだすのを妨げる。患者がそのような話題を持ち出す場ではないと感じている例もある。

 

性的機能不全について患者が話したがらないことを考慮して、Bradford博士、Milbourne医師とWang医師は、医師が患者との会話を始めるイニシアチブをとらなければならないと述べる。

 

「医師として、われわれは率直でなければならず、完璧でなくてはならず、そしてこの話を持ち出すのに積極的でなければなりません」Wang医師は述べる。

 

Bradford博士によると、治療により性的な問題が起こるリスクが高いのであれば、がんの診断後早期に性機能の話題を持ち出さなければならない。患者は新たにがんと診断された時や治療を受けている最中には行動をとりたがらないかもしれないが、後に性について話すことに対し、抵抗をなくしておくべきである。

 

患者を安心させるため、Bradford博士はこう述べる。性機能障害に関する話し合いは必ず、それが普通であるという発言で始めなければならない。医師が患者に、性機能障害は極めて多く、すべての患者に性機能障害について聞いているのだといえば、患者は自分だけが特殊なのではないと感じやすくなり、懸念していることを打ち明けやすくなる。

 

助けを得る

患者に性機能障害について話すことと、患者の懸念に効果的に対処したりその性機能障害を治療したりすることは別のものである。

 

「ほとんどのがん専門医は、この問題に入念に対処し、患者にしっかり準備してもらうための訓練を受けていないか、時間がありません」Milbourne医師は述べる。「われわれが患者の性機能障害を治療できないのであれば、それができる専門家に紹介すべきです」。

 

がん治療後に性機能障害をきたした男女に、多くの情報源がある。例えば、American Association of Sexuality Educators, Therapists, and CounselorsやSociety for Sex Therapy and Researchを介して、がんサバイバー治療の専門知識を有する性の健康に関するカウンセラーやセラピストを配置できる。

 

男性に対しては、他にSexual Medicine Society of North Americaのウェブサイトhttp://www.sexhealthmatters.org/からリソースを見つけることができる。この学会の次期会長であるWang医師はMDアンダーソン泌尿器科の性医学プログラム会長としても活動しており、その内容には包括的な陰茎リハビリテーションやカウンセリングが含まれる。診察はMDアンダーソンで現在治療を受けている患者が優先ではあるが、外来患者も受診可能である。

 

女性に対しては、MDアンダーソン婦人科腫瘍センターのWomen’s Integrated Sexual Health(WISH)プログラムを介した支援がある。このプログラムのサービスには、性教育とカウンセリング、性機能障害の医学的評価および性機能障害に対処するための短期間の心理療法が含まれ、MDアンダーソンの患者やコミュニティの患者が同様に利用できる。

 

婦人科腫瘍センターの同僚とともにWISHプログラムを立ち上げ運用するBradford博士は、患者の治療にあたってパートナーをある程度関わらせることが非常に有用な場合が多いという。Bradford博士はこう述べる「パートナーと一緒に受診するよう、患者によく働きかけています。性の問題はカップルの問題ですから。がんサバイバーの責任ではないのです」。

 

For more information, contact Dr. Andrea Bradford at 713-745-4466, Dr. Andrea Milbourne at 713-745-6986, or Dr. Run Wang at 713-745-7575.

参考資料
本記事で引用されているLIVESTRONG財団調査の内容は、次のURLに公開されている。
www.livestrong.org/what-we-do/our-approach/reports-findings/survivor-survey-report.

がんサバイバーの治療に習熟したセクシャル・ヘルス・カウンセラーまたはセラピストを探す際の連絡先及びURLは次の通り。
米国性教育者・カウンセラー・セラピスト協会
電話:202-449-1099
URL:www.aasect.org/referral-directoryまたは
セックス療法・研究学会
電話:847-647-8832
URL:www.sstarnet.org/therapist-directory.php.

MDアンダーソンの患者は、主治医より性医療プログラムまたはWISHプログラムへの紹介状を取得することができる。地域の患者は直接、同プログラムに自己紹介することができる。
性医療プログラム 電話:713-745-7020
WISHプログラム 電話:713-792-8340
がん患者の性機能障害についてより包括的な議論を知りたい方は、書籍「がんサバイバー・マネジメントの進展」(Foxhall LE、Rodriguez MA編)のセクシャリティの章401-412頁(Schover LR著)2015年シュプリンガー出版(ニューヨーク市)を参照。

— Joe Munch

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳遠藤豊子、石岡優子

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)、太田真弓(精神科、児童精神科/さいとうクリニック院長)

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