FDAが前駆B細胞性急性リンパ性白血病の治療にブリナツモマブを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

抗CD19抗体薬として初の承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、急性リンパ性白血病(ALL)の中でも稀な病型である、フィラデルフィア染色体陰性前駆B細胞性急性リンパ性白血病(B細胞性ALL)治療に対して、ブリナツモマブ[blinatumomab](Blincyto)を承認した。

前駆B細胞性ALLは、幼若な白血球細胞であるB細胞リンパ芽球が骨髄中で過剰に増殖する進行の速いがんである。フィラデルフィア染色体は一部の白血病患者の骨髄細胞において認められる染色体異常である。米国国立癌研究所によれば、2014年には6,020人の米国人が ALLと診断され、1,440人がこの病気により死亡すると推定されている。

ブリナツモマブを含む免疫療法薬は、がんなどの疾患を攻撃するために体内の免疫系の一部を利用した治療薬である。白血球の1つである体内のT細胞を利用して白血病細胞を破壊する治療薬としては、今回が初の承認となる。ブリナツモマブはほぼすべてのB細胞リンパ芽球表面に発現するタンパク質CD19と、T細胞白血球上のタンパク質CD3を結合させることで作用する。再発または前治療による奏効が見られなかった難治性の患者を使用対象としている。

「免疫療法薬は白血病患者にとって有望な治療薬だが、その中でも ブリナツモマブは他の薬剤と異なる作用機序をもつことから、とりわけ期待が大きい」と、FDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長のRichard Pazdur医師は言う。「この新たな治療薬の可能性が評価され、 FDAでは本剤を早期承認するため画期的治療薬に指定し、製造元企業と積極的に働きかけた」。

FDAは、中間臨床試験結果によりブリナツモマブが現在の治療薬と比べて顕著な改善をもたらすと示されたことを受け、本剤を画期的治療薬に指定、また承認申請時点で、重篤疾患治療における安全性または有効性に顕著な改善を示すと期待される薬剤に与えられる優先審査制度、および希少疾患治療薬に与えられる希少疾患医薬品に指定した。処方薬ユーザーフィー法に基づくFDAの審査完了期日は2015年5月19日だが、5カ月以上早い承認となる。

ブリナツモマブの安全性および有効性は、フィラデルフィア染色体陰性で再発または難治性の前駆B細胞性ALL患者185人を対象にした臨床試験にて評価された。全患者に対し、点滴にてブリナツモマブを4週間以上投与した結果、32%で約6.7カ月間病変の消失(完全寛解)が認められた。

本剤は FDAの迅速承認制度により承認された。これは、重篤または命にかかわる疾患の治療薬について、代用評価項目による評価で患者への臨床効果が期待できることが臨床データによって示された場合に早期に承認される制度で、検証試験の段階でも、患者が新薬を手にする機会を得ることができる。FDAは製造元に対し、ブリナツモマブにより再発/難治性フィラデルフィア染色体陰性前駆B細胞性ALL患者の生存率が改善することを立証する検証試験を実施することを義務付けている。

本剤については一部の臨床試験参加者において、初回治療開始時に低血圧、呼吸困難(サイトカイン放出症候群)、一時的な思考障害(脳障害)またはその他の神経系副作用を呈したとして、患者および医療従事者に対し枠組み警告がある。投与患者で発現頻度の高かった副作用は発熱、頭痛、末梢性浮腫、発熱性好中球減少症、悪心、低カリウム血症、疲労、便秘、下痢および振戦であった。

また、FDAは本承認に対し、ブリナツモマブの重篤リスクおよび誤処方・誤投与の可能性に関する情報を医療従事者に対し提供するリスク評価・軽減戦略(REMS)を適用した。本剤は米国カリフォルニア州サウザンドオークスに拠点を置くアムジェン社を販売元とする。

翻訳担当者 今泉眞希子

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/ 社会医療法人敬愛会中頭病院)

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