ダブラフェニブ+トラメニチニブ併用療法がベムラフェニブ単剤療法と比較してBRAF遺伝子変異陽性メラノーマ患者の全生存を改善

切除不能/転移性皮膚メラノーマ患者の一次治療を検討するランダム化非盲検、第3相COMBI-v試験の結果

Dabrafenib(ダブラフェニブ)+trametinib(トラメチニブ)併用療法を用いた一次治療は、vemurafenib(ベムラフェニブ)療法と比較して、BRAF V600E/K遺伝子変異陽性の切除不能あるいは転移性皮膚メラノーマ患者の全生存期間(OS)を改善する。スペイン、マドリードで開催されたEMSO Presidential Symposium 2にて、フランス、Villejuifにあるthe InstitutGustave RoussyのDr. Caroline Rober氏が、ランダム化非盲検COMBI-v試験の結果を発表した。

BRAF阻害剤ダブラフェニブ+MEK阻害剤トラメチニブ併用療法は、ベムラフェニブ単剤療法と比較してBRAF V600E/K遺伝子変異陽性の転移性メラノーマ患者の無増悪生存期間(PFS)を延長することが示されている。しかし、BRAFを阻害すると、耐性や皮膚扁平上皮癌が発症した。ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法とダブラフェニブ単剤療法を比較する第1/2相試験、くわえて奏効率(ORR)、PFSの改善が確認された同様の第3相試験で示されたように、BRAFとMEKを同時に阻害することでBRAF阻害に関連する有害事象の発現が軽減され、皮膚扁平上皮癌の発生頻度も低下した。

BRAF V600遺伝子変異陽性転移性メラノーマ患者におけるOSの点で、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群がベムラフェニブ単剤療法群に対して優越性を示すため、第3相COMBI-v試験が行われた。

患者は一次治療としてダブラフェニブ(150 mgを1日2回)かつトラメチニブ(2 mgを1日1回)を投与する群と、ベムラフェニブ(960 mgを1日2回)を投与する群とに1:1の割合で無作為に割り付けられた。

適格患者は、年齢18才以上でECOGパフォーマンス・ステータス1以下、病理組織検査で確認されたステージ3C/4のBRAF V600E/K 遺伝子変異陽性の切除不能あるいは転移性メラノーマの患者とした。脳への転移がない未治療の患者が対象とし、12週以上安定状態にある患者は除外した。またV600EとV600Kのどちらの遺伝子に変異が認められるかとLDH値によって層別化がおこなわれた。

主要評価項目はOS、副次的評価項目はPFS、ORR、(全)奏効期間、安全性とされた。

この試験でクロスオーバーは禁止された。

2012年6月~2013年10月まで、1644人の患者が選別され、そのうち704人が無作為に割り付けられた(両群とも352人)。

OSの中間解析は、期待死亡数の70%(288人中202人)に達した際に行われると事前に規定された。またこの数値はプロトコールで規定された最終解析の要件でもあった。さらに片側検定でP値が0.0107未満を示した場合、有効性の観点から試験は中止されることになっていた。しかし、データ入力に遅れがあったため、データを締め切った時点で222人(77%)の死亡が確認された。

また、独立データモニタリング委員会(IDMC)が中間解析の時点で試験中止を勧告した場合、中間解析が最終解析になるということも事前に規定されていた。

IDMCはダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群で有効中止の境界値を越えてOSが延長したことを示した中間解析の結果に基づき、試験中止を勧告した。この時点で、OS中央値はダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群で未達、ベムラフェニブ群で17.2カ月[ハザード比(HR)0.69, p = 0.002]であった。またこのOSデータはサブグループ解析においてもダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群に有利であった。

PFSはダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群で11.4カ月、ベムラフェニブ群で7.3カ月と、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群で有利であった(HR 0.56, p < 0.001)。両群間での確定奏効率の差は13%で、こちらもダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群に有利な結果となった(p < 0.001)。奏効期間はダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群で13.8カ月、ベムラフェニブ群で7.5カ月であった。

以前の試験データから一貫して有害事象の発生率は両群とも同程度であったが、ベムラフェニブ群で全グレードまたはグレード3の関節痛、発疹、脱毛、過角化症、光過敏症、皮膚乳頭腫がより多く見られ、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群ではグレード3の発熱が多くみられた。

BRAF阻害剤関連の有害事象としては、皮膚扁平上皮癌とケアトラカントーマ、過角化症、皮膚乳頭腫、手足症候群、脱毛症、光過敏症と日光皮膚炎であり、ベムラフェニブ群でより発生したのは皮膚以外の場所で発生した悪性黒色腫であった。

MEK阻害剤関連の有害事象としては、心駆出率の低下がダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法群でより発生した。

結論

Robert氏は、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用群とベムラフェニブ群を比較した本試験では、ダブラフェニブ+トラメチニブ併用群で死亡リスクが31%低下したことによりOSが有意に改善(OS中央値はダブラフェニブ+トラメチニブ併用群で未達、ベムラフェニブ群では17.2カ月)し、同様にPFSでもブラフェニブ+トラメチニブ併用群で増悪や死亡のリスクが44%低下したことで有意に改善(PFS中央値はブラフェニブ+トラメチニブ併用群で11.4カ月、ベムラフェニブ群で7.3カ月)したという結果であったと結論づけた。

試験結果について考察したDr. Christian Blank氏は「N-RAS遺伝子変異が1985年に、CDKN2遺伝子欠損が1994年に、PTEN遺伝子欠損が1997年、R-RAF遺伝子変異が2002年、CSK遺伝子変異が2005年、c-KIT遺伝子変異が2006年、GNAQ遺伝子変異が2009年、そしてrrbB4遺伝子変異が2009年に発見されました。メラノーマ遺伝子発見の変遷の中で、腫瘍学界では2009年に始まった進行性メラノーマに対するBRAF阻害剤の効果を検討する第1相試験から続く発見と、それに対して即座に引き起こされる反応で沸いています」。Blank氏は続けて、MAPキナーゼ経路をBRAF阻害剤とMEK阻害剤を用いて標的とする理論的な根拠についても説明を行った。

COMBI-v試験での奏効率は64%で、そのうち13%が完全寛解、51%が部分寛解であり、全患者の26%で病状の安定が認められた。PFS中央値は7.3カ月、OSは17.2カ月であった。COMBI-v試験によって、BRAF阻害剤単剤での治療と比べるとBRAF阻害剤とMEK阻害剤を併用する療法でBRAF V600遺伝子変異陽性メラノーマ患者における有効性が改善したと認められた。本併用療法は、BRAF野生型細胞においてMAPキナーゼ経路が逆説的に活性化することで生じる発癌毒性の低減につながる。ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の毒性は単剤療法でみられたものと同程度であった。データが熟考され、今回発表されたBRAF+MEK阻害剤併用療法がBRAF V600遺伝子変異陽性メラノーマに対する新しい標的療法の標準療法となると予測される。

Blank氏は、PFSが4カ月延長したのにどうしてOSはたったの2カ月の延長にとどまったのか疑問を呈している。また、このOS延命効果に対してどのような価格設定が適正かという疑問も続けた。

参考文献

LBA4_PR – COMBI-v: A randomised, open-label, Phase III study comparing the combination of dabrafenib (D) and trametinib (T) to vemurafenib (V) as first-line therapy in patients (pts) with unresectable or metastatic BRAF V600E/K mutation-positive cutaneous melanoma
 

翻訳担当者 鶴田 京子

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院・総合内科)

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