OncoLog 2014年8月号◆肝予備能を評価する新たなスコアリングシステムが肝細胞癌の治療計画に役立つ可能性 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2014年8月号◆肝予備能を評価する新たなスコアリングシステムが肝細胞癌の治療計画に役立つ可能性

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OncoLog 2014年8月号◆肝予備能を評価する新たなスコアリングシステムが肝細胞癌の治療計画に役立つ可能性

MDアンダーソン OncoLog 2014年8月号(Volume 59 / Number 8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

肝予備能を評価する新たなスコアリングシステムが肝細胞癌の治療計画に役立つ可能性

肝予備能を評価する画期的な検査を導入することにより、臨床医による肝細胞癌(HCC)患者の予後予測が改善するとともに、患者にあった治療法が選択できるようになる可能性がある。

 

HCCの病期分類の標準的なプロセスのひとつとして、肝予備能、つまり、肝臓のどれほどの部分が機能しているかを評価する。1970年代以降、肝予備能の評価にはChild-Turcotte-Pugh(CTP)スコアが用いられてきた。このスコアは、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン時間、腹水の重症度および脳症の重症度の5項目から成る。

 

しかし、CTPスコアには重大な欠点があると、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍内科准教授Ahmed Kaseb医師は言う。腹水と脳症は、画像および臨床的な徴候や症状で評価するため、多くの要因に影響を受ける可能性がある。「このふたつのパラメータはきわめて主観的なものです。さらに、利尿薬などの治療によって日ごとに変化する場合もあります。スコア化が難しいこともあるのです」とKaseb医師は言う。

 

新たなシステムの考案

消化器腫瘍内科HCCプログラムの責任者であるKaseb医師のチームは、予後予測の精度向上を願って、CTPスコアの主観的なパラメータ2項目に代わる客観性の高い尺度を探してきた。インスリン様成長因子1(IGF-1)が健康な肝細胞によって産生されることを認識していたKaseb医師らは、ルーチンの血液検査で測定可能なIGF-1濃度が、主観的な項目に取って代わるものになりうるという仮説を立てた。血漿中IGF-1濃度は、これまでに、肝硬変やHCC患者の方が、肝疾患のない人よりも低いことが示されている。Kaseb医師らは、今回IGF-CTPという新たなスコアリングシステムを考案した。

 

標準的なCTPスコアリングシステムでは、5つのパラメータがそれぞれ1~3点で判定され、その合計点によってCTPの「クラス」が決まる。予後は、CTPのクラスAが最も良く、CTPのクラスCが最も悪い。通常は、CTPのクラスAの患者だけが、外科療法または腫瘍焼灼術など、HCCの積極的治療の対象であると考えられている。新しいスコアリングシステムでは、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン時間および血漿IGF-1値の4つの客観的なパラメータが、それぞれ1~3点で判定され、合計点によってIGF-CTPのクラスが決まる。

 

新しいシステムの検証

Kaseb医師らは、米国国立癌研究所の支援を受け、2組の患者グループを対象にCTPのクラスとIGF-CTPのクラスの間でスコアと予後を比較した。Kaseb医師らは、最初のHCC患者グループ310人の臨床成績および血漿検体を評価し、患者の層別化に有効なIGF-1濃度のカットオフ値を決定した。次に、もうひとつのHCC患者グループ155人を対象に、このカットオフ値を検証した。

 

その結果、肝予備能がCTPではクラスAであるが、IGF-CTPではクラスBと判定された患者の方が、肝予備能がいずれのスコアシステムでもクラスAと判定された患者よりも、全生存期間の中央値が短いことが明らかになった(表参照)。この試験結果は、新しいシステムの方が、予後の良好な患者の選択に適している可能性を示唆している。「このような患者の方が、有害作用が少なく、生存期間も長いとみられるため、積極的治療が有益である可能性が高いと考えられます」とKaseb医師は話す。

 

今後は、肝予備能がCTPでクラスAと判定され、標準的な全身療法であるソラフェニブの投与を受ける切除不能HCC患者グループを対象に、新しいスコアリングシステムを評価する。患者の病勢進行までの期間および全生存期間が明らかになった時点で、CTPの判定に用いた血液検体を使用してIGF-CTPのスコアを算出する。IGF-CTPのクラスA、BおよびCの間で、病勢進行までの期間、全生存期間および有害事象発現率を比較する。このデータは、IGF-CTPのスコアによって、予後の良、不良を見きわめることができるかどうかの裏づけになる。新しいスコアリングの方法は、このほか、消化器腫瘍内科とインターベンショナルラジオロジー科との共同研究の一環として、小HCCに対して化学塞栓療法または放射線療法などの局所療法を受ける患者を対象に検証が行われる予定である。

 

今後、独立した多国間の確認試験によってIGF-CTPスコアの有用性が確認されれば、IGF-1検査の肝機能評価に対する承認を米国食品医薬品局に申請する。(IGF-1検査は、成長ホルモン分泌不全症の診断に、すでに承認されている)「新しいスコアを標準として推奨したり、そのスコアを用いて、将来を見通しながら治療法を決定したりするためには、その前に、古いスコアよりも有用であることを証明する必要があります」とKaseb医師は語った。

 

— Sunita Patterson

 

【表のキャプション】
CTPによって肝予備能がクラスAと判定されたHCC患者2コホートのIGF-CTPクラスごとの全生存期間

[表中語句]
《一段目》 IGF-CTP クラス 患者数 全生存期間中央値
《二段目》 初期コホート
《三段目》 検証コホート
略語:CTP: Child-Turcotte-Pugh, HCC:肝細胞癌,IGF: インスリン様成長因子1

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳中村幸子

監修畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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