OncoLog 2014年4月号◆新たな脂肪移植技術により、美容的に優れた頭頸部再建術が可能になる | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2014年4月号◆新たな脂肪移植技術により、美容的に優れた頭頸部再建術が可能になる

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OncoLog 2014年4月号◆新たな脂肪移植技術により、美容的に優れた頭頸部再建術が可能になる

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2014年4月号

MDアンダーソン OncoLog 2014年4月号(Volume 59 / Number 4)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

新たな脂肪移植技術により、美容的に優れた頭頸部再建術が可能になる

新たな脂肪移植技術により、頭頸部癌に対する治療後の大掛かりな再建術後の美容面での出来栄えが大きく進歩した。

 

頭頸部癌に対する切除は広範囲に及んだり多くの周囲構造物を巻き込んだり、あるいは引き続いて放射線治療やその他の治療が行われることもある。このため頭頸部癌治療後の欠損部分に対する再建術は歴史的には、機能再建の観点にのみ重点が置かれ美容面では限界があった。

 

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター形成外科の准教授である、Roman Skoracki医師とMatthew Hanasono医師は、頭頸部癌患者の再建術後の出来栄えの向上のために、脂肪細胞の分離と注入を用いるパイオニアである。「当院における再建術は機能面では極めて優れているが、この新しい移植技術のおかげで美容面でも優れた再建が可能になる」と、Skoracki医師は述べた。

 

この方法は、現在いくつかの施設で乳房再建後の皮膚をきれいにするために実施されているが、MDアンダーソンは、広範な癌切除後の顔面再建で初めてこの技術を用いた施設のひとつである。

 

昔のアイディアの新たな希望

脂肪組織に十分な血流を確保する必要性と皮膚のような脂肪以外の組織が混在することが多いという点から、自己脂肪の移植は小規模にしか行えず、従って多くの再建手術に用いるには美容面で問題があったり脂肪移植の実施が制限されてきた。大量の脂肪組織を移植しても、細胞が生きるための酸素や栄養素を運ぶために必要な血管再生が不十分になるために、移植された脂肪細胞の大部分は吸収されないか瘢痕(はんこん)組織に変化してしまって移植は失敗に終わる。実際に、大量の自己脂肪移植を行うと、時に嚢胞が形成されて内容物を抜くか切除は必要になる。

 

脂肪移植のためのこの新しい方法は以下のように行う。まず、身体の離れた部位から特別な管を使って脂肪を吸引して採取し、遠心分離によって速やかに脂肪組織を液体状の脂肪や血液から分離する。次いで、少量の精製された脂肪細胞を目的の部位に何度も注入する。少量の移植を繰り返すことにより脂肪細胞は目的の部位にしっかりとした基盤を作ることができ、比較的広範囲に広がってもすべての脂肪移植片へ血液の供給が維持される。これら小量の移植で基盤を作ることで、組織の厚さを正確に制御することができ、最終的に美容的に優れた出来栄えが期待できる。

 

このような脂肪細胞移植技術は、美容面にとどまらない再建組織の改善効果をもたらす可能性がある。この再建組織の改善効果については十分は検討されてはいないが、「脂肪移植を実施した部位は、実施していない部位と比べて、柔らかく形成し易いように思える」と、Hanasono医師は述べた。さらに「放射線治療やその他の影響のために組織が傷んでいる患者の場合には、まず脂肪移植を行って組織の順応性や柔軟性を改善しそのあとに再建術を続けて行う、という段階的な方法を行うことも可能である」と、Skoracki医師は付け加えた。

 

頭頚部再建における使用

頭頚部癌に関連した再建術においてこの脂肪移植術は、癌に対する当初の治療と再建手術が終了してかなりの期間が経過してから、修正術として行われるのが通常である。Hanasono医師によると、「これは実際、患者が安定して創傷部位が比較的安全な状態になった時点――癌の治癒後6カ月から数年が経過した時点で実施する、治療後の処置と言えます。また、常に腫瘍の治療を担当する主治医に相談し、癌そのものの治療の妨げにならないようにしています」という。

 

すでに再建術を受けたが結果に満足できない患者にとって、この新しい脂肪注入術のスピードと簡単さは魅力的である。「ほとんどは外来処置ですので、既に再建術を終えた患者さんに比較的容易に修正術を実施できます」と、Hanasono医師は述べた。

 

この種の脂肪注入術は、頭頚部再建術を受けた患者のほとんどに実施することができる。例外となるのは、皮下脂肪が非常に少ない患者――例えば、トップクラスのアスリートや悪液質の患者である。移植術を成功させるために必要な脂肪は、ごくわずかではあるが、体脂肪率が低すぎると、移植に十分な量の脂肪を採取することが難しい。

 

頭頚部の再建では、通常100mLの脂肪を採取するが、精製後の総量は、通常この約半分である。これでも処置を成功させるには十分以上の量であり、Skoracki医師とHanasono医師が頭頚部再建術を実施するときに注入する量は、通常約40mLだそうである。

 

懸念される合併症

脂肪移植術で常に問題となる点の一つは、少量ずつのこの脂肪移植でさえ、脂肪が吸収されてしまう可能性があることである。移植後に定着する脂肪量は人によって差があり、定着量は少なくとも一部は周囲の皮膚の 状態に左右される。Skoracki医師によれば、「脂肪の定着性には人によっていくらか差があり、特に放射線治療による瘢痕や皮膚損傷が大きい患者では、脂肪の多くが吸収されますが、それでも移植によって、その部位の皮膚の質は改善するようです」とのことである。

 

脂肪の移植によって皮膚の質感が改善するのは、脂肪に幹細胞が含まれるからであるとの仮説がある。過去の研究では実際に、脂肪に含まれた休止状態の幹細胞が認められている。しかし、脂肪移植術がなんらかのかたちで幹細胞を活性化するかどうかについては、決定的なデータが得られていない。また、活性化した幹細胞は、放射線治療や手術によって瘢痕化した皮膚をある程度よみがえらせる可能性があるが、二次癌の発生を助長するおそれもあることが、仮説に基づき懸念されている。しかし、この可能性を示唆した研究はわずか1件であり、しかもマウスを用いた研究である。これまでに実施された臨床試験では、脂肪由来の二次癌は認められていない。それでも、アメリカ形成外科学会(American Society of Plastic Surgeons)は、二次癌発生リスクが高い患者では、慎重に自家脂肪移植を実施するよう勧告している。「自家脂肪移植術の二次癌発生リスクに関するエビデンスはほとんどありませんが、二次癌のリスクが比較的高い患者では、慎重に実施するよう努めています」と、Skoracki医師は述べた。

 

将来における改良

MDアンダーソンや他の研究機関では、乳腺腫瘤摘出術後の乳房再建などさまざまな再建術でのこの新しい脂肪移植術の効果を向上させるため、技術の改良に取り組んでいる。乳房再建などでは、頭頚部再建術より多くの脂肪を必要とするため、自家脂肪移植術の適用には限界があった。必要な脂肪量が多くなるほど、移植術に十分な量を確保することが難しくなり、移植した脂肪が吸収されたり瘢痕化してしまう可能性が高くなる。

 

一部の業者は、遠心処理の時間短縮と収量増加を試みている。これが成功すれば、体のもっと大きな部位や、大きな再建術での脂肪移植が容易になると考えられる。

 

外科医はこの技術のなお一層の向上に取り組んでいるが、この処置は患者に大きな恩恵をもたらしつつある、とHanasono医師は言う。「われわれにとって、これは革新的な技術です。再建術が大変な進歩を遂げたのですから」。

— Zach Bohannan

【上段画像キャプション訳】
脂肪吸引により採取した脂肪(上)には、脂肪組織、液体状の脂肪、血液、そして時には脂肪以外の組織が含まれている。新しい自己脂肪移植方法は、遠心分離機により混じりけのない脂肪細胞を分離し、目的の部位に注入する。

【下段画像キャプション訳】
自家脂肪移植術では、外科医が精製した脂肪細胞を再建部位に注入する。多数の箇所に少しずつ注入することにより、すべての脂肪移植片に十分な血液が供給される。

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.

OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳野川恵子、市中芳江

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)

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