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OncoLog 2014年3月号◆腹腔鏡下肝切除術の使用が拡大

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OncoLog 2014年3月号◆腹腔鏡下肝切除術の使用が拡大

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2014年3月号

MDアンダーソン OncoLog 2014年3月号(Volume 59 / Number 3)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

腹腔鏡下肝切除術の使用が拡大

肝腫瘍の低侵襲外科切除は、かつてはアクセスが容易な肝臓の前方に病巣がある限られた患者にのみ用いられていた。しかし、最近の手術手技の進歩や術前画像診断の使用により、複雑な肝切除であっても腹腔鏡的アプローチが可能となった。

 

「最近まで開腹術としてのみ実施されていた手術が、今では腹腔鏡下で実施されています」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター外科腫瘍学部門の助教であるClaudius Conrad医学博士は言う。

 

Conrad医師の説明によれば、原発性肝腫瘍および肝臓への転移性腫瘍に対する腹腔鏡手術の使用増加は、技術的な進歩だけでなく、集学的チームのメンバーによって画像技術、手術器具および手術手技の複合的な進歩が適用できるように共同で努力した結果であるという。

 

「この3年間に、MDアンダーソンがんセンターでは100件を超える低侵襲肝切除を実施しており、きわめて良好な転帰を得ています」と、外科腫瘍学部門の准教授であるThomas Aloia医師は言う。また、低侵襲膵切除術の実施件数も増加している(下記の「低侵襲膵臓手術」の項を参照)。

 

課題の克服

先進的な腹腔鏡肝切除術には、開腹術にはない課題があり、その克服にはチームワークと計画性が必要である。「腹腔鏡手術の複雑さは、開腹術以上に手術チーム全員の緊密な協力を必要とします」とConrad医師は言う。

 

腹腔鏡によって外科医は明瞭な視野を得ることができるが、その画像は2次元である。外科チームはこの視野を術前画像診断や術中超音波によって補っている。「術前断層画像診断や術中超音波は、病巣や重要な構造物の特定に役立つだけでなく、腹腔鏡の2次元画像を手術における3次元の運動能力に変換するのを容易にします」とConrad医師は言う。

 

腹腔鏡手術では、圧迫や縫合が技術的により困難であることから、その限界は術中の出血を適切にコントロールする能力にあった。しかし、Conrad医師によると、先進的な実質切離装置を用いることで、外科医が出血を最小限に抑えて肝組織を切離することが可能になるという。「最も重要なのは、正確な術前画像診断と慎重な計画によって出血が最小限に抑えられるということです。外科医はこれらによって肝臓の主要血管を避け、切離面を最適化することができるのです」とConrad医師は言う。

 

術前画像診断および手術計画

コンピュータ断層撮影(CT)は、肝切除の術前画像診断の頼みの綱であり、腹腔鏡手術で中心的な役割を担っている。「この5年間に、CTスキャナーは高速化し、多相造影画像で肝臓をスキャンすることが可能となりました」と、放射線診断学部門の准教授、Harmeet Kaur医師は言う。Kaur医師によれば、CTは確実で信頼できるだけでなく、他の画像診断装置と比べて肝外病変を検出しやすいという。さらにKaur医師は、CTの薄い断面をスキャンする能力によって2次元または3次元再構築が可能であり、これが患者の解剖学的形態を可視化するのに役立っていると付け加えた。

 

事実、技術の漸進的な進歩によって、CTによる詳細な再構築がますます可能となっている。MDアンダーソンがんセンターの放射線診断学部門では、血管の3次元再構築システムを開発中である。このシステムにより、外科医がスクリーン上の患者の肝血管構造の画像を回転させて、どの角度からも見ることが可能となる。

 

Kaur医師によると、CTによる画像診断を磁気共鳴断層撮影(MRI)によって補う患者の数が増えつつあるという。CTの空間分解能により放射線科医が肝臓の解剖学的構造や脈管構造を見ることができるのに対し、磁気共鳴断層撮影のコントラスト分解能では、CTでは見落とされるような小病変を検出することが可能である。

 

「腹腔鏡による肝臓手術を成功させるには、肝臓の解剖学的構造に精通し、肝静脈、門脈および肝動脈のあらゆる変異を熟知している放射線科医が必要です」とKaur医師は言う。

 

MDアンダーソンがんセンターでは、各患者の解剖学的構造を理解し、最善の外科的アプローチならびに術前および術後化学療法の実施時期を決定するために、外科医と腫瘍内科医が放射線科医と緊密に連携している。Kaur医師によると、この共同アプローチは肝切除によって最も利益を得ることができる患者を選択するのにも役立っているという。

 

「腹腔鏡手術が患者に適切かどうかを判断するにあたって最も重要なのは、安全性と腫瘍の状態です。私達は合併症のリスクを最小限に抑えなければなりません。また、すべての癌、そして疑わしいリンパ節を摘出する必要があります。腹腔鏡または開腹術によるアプローチのどちらが患者の回復にとって最善であるかは二次的なものに過ぎません」とConrad医師は言う。

 

外科医が腹腔鏡手術を計画する際、必要となった場合に開腹術を実施する計画も立てている。「われわれは安全性や腫瘍の状態からその患者にとって最善であると判断すれば、いつでも従来の切開術によって手術を完了する用意をしています。しかし、術前画像診断や共同計画のおかげで、腹腔鏡手術を従来の開腹術に切り替えるケースは稀になっています」とConrad医師は言う。

 

集学的アプローチによって、複雑な手技であっても低侵襲手術を検討することが可能となる。Conrad医師は例として、肝臓の後上区域に病巣がある患者を挙げた。この部位の病巣は、かつては腹腔鏡的アプローチによるアクセスが不可能と考えられていたが、Conrad医師は胸部および横隔膜を経由してトロカールを挿入することにより、低侵襲切除を実施することができた。「腹腔鏡下で病巣を切除し、患者は良好な転帰を示しました」とConrad医師は述べた。

 

腹腔鏡手術のベネフィット

Conrad医師は、「腹腔鏡手術は開腹手術と同等の長期の腫瘍学的成果をもたらし、再発癌の切除可能性の改善にもつながる」と述べた。

 

従来の開腹手術に対して腹腔鏡手術が優れている点は、主に痛み、失血、合併症、手術部位感染リスク、そして入院期間の減少である。Conrad医師は腹腔鏡手術で早期に回復できた場合、術後補助化学療法を早く始められ、より忍容性がよくなる患者もいるだろうと考えている。

 

両葉多発性肝転移の多くは、最初の手術で肝臓の片側の病巣切除、残存肝の代償性再生肥大を促すための門脈枝塞栓術を行い、次の手術で別側の病巣切除というように2回の手術を必要とする。この概念は腫瘍外科部門肝臓・膵臓セクション教授兼主任のJean-Nicolas Vauthey医師の研究により進展した。2003年から2011年の間、134人の患者がこの2段階肝切除術を受け、うち112人はこの通りの術式で成功した。

 

2段階切除の第1段階が腹腔鏡下で行われるならば、手術創が小さく抑えられるため門脈枝塞栓術後の次の手術が容易になる。現在、MDアンダーソンの肝臓癌研究グループは、第1段階で腹腔鏡手術を行った2段階肝切除術実施患者の治療成績を調査している。

 

痛みと回復期間の減少を実現する腹腔鏡手術の最大の利点は、患者がより良い生活の質(QOL)を得られることである。Conrad医師は、「われわれの患者さんの多くはアクティブな生活を送っています。彼らの関心事はわれわれが腫瘍を取り除くことができるかどうかだけではなく、どれだけ早く通常の生活に戻れるのかということなのです」と語る。

 

外科医がこの術式の計画と手技の経験を積むほどに、より多くの患者でこの低侵襲腹腔鏡手術の成功率は上がっていく。Kaur医師は、「新技術よりも更に重要な成功への鍵は、肝臓の解剖をより理解することに特化した多職種によるチームの存在です」と語る。

 

【上段画像キャプション訳】

腹腔鏡肝切除術を行うClaudius Conrad医師(右)。腹腔鏡による2次元画像に加え、術前に撮影されたCTと術中の超音波画像を補助的に使用する。

【中段画像キャプション訳】

Conrad医師は腹腔鏡肝切除術の間、術中失血を最小限に止めるため先進的な実質切離器具を用いる。

【下段画像キャプション訳】

腹腔鏡肝切除術中、外科チームが病変部位や回避すべき組織を特定する上で術中超音波画像が役立つ。

低侵襲膵臓手術

「低侵襲外科治療では独特な技術の組み合わせが必要とされています」- Jason Fleming医師

腹腔鏡手術は複雑な肝胆道癌の治療のみに限らず、膵臓癌手術でも用いられ得る。膵頭十二指腸切除術のように難易度の高い手術でも腹腔鏡下で行うことが可能である。

腫瘍外科部門助教のClaudius Conrad医学博士は「われわれは通常、膵臓体尾部の病巣切除を腹腔鏡手術またはロボット手術で行っており、膵臓頭部の病巣に対する腹腔鏡アプローチの開発に着手している」と語る。

腫瘍外科部門助教のMatthew Katz医師は、膵臓癌患者のケアに関する課題について、「これらは患者さんにとっては複雑な医療上の問題であり、思慮深いアプローチが求められている。注意深く統合されたケアがあってこそ、優れた成果が達成できるのです」と述べた。

Conrad医師は、「低侵襲(ロボットまたは腹腔鏡下)の膵頭十二指腸切除術と開腹手術を比較したランダム化比較試験は未だ発表されておらず、私の知る限り進行中の試験もない」と語り、これまでに発表された先行研究データは低侵襲膵頭十二指腸切除術が安全で短期のベネフィットをもたらすことを示唆していることに触れ、「術中出血の少なさと高率の切除断端陰性は、腫瘍が一般的なサイズよりも小さい患者に絞り込んだ試験設計に起因する可能性が高い」と付け加えた。

それでもなお、この選ばれた患者群で確認された高度な膵臓の腹腔鏡手術のベネフィットは非常に重要な意味を持つ。腫瘍外科部門教授・副議長 兼 サービス・チーフのJason Fleming医学博士は、「低侵襲外科治療では独特な技術の組み合わせが必要となるため、われわれはこの領域に特化した専門性を有する一流の外科医の採用を進めてきた」また「これら進行度の高い悪性腫瘍と闘う患者さんの生存率改善を果たすため、われわれは新たな治療法の研究を進め、現在の治療戦略に統合していきたい」と語った。

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.

OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳原 恵美子、遠藤 豊子

監修畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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