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2011/03/22号◆特集記事「多くの男性の癌サバイバーが挙児可能であることが研究で明らかに」

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2011/03/22号◆特集記事「多くの男性の癌サバイバーが挙児可能であることが研究で明らかに」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年3月22日号(Volume 8 / Number 6)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇特集記事◇◆◇

多くの男性の癌サバイバーが挙児可能であることが研究で明らかに

長年にわたり、男性の小児癌経験者は無精子症のため子供を作ることができないと考えられてきた。しかし新たな研究では、健康な精子を採取する外科的処置と体外受精(in vitro fertilization: IVF)を組み合わせることにより、相当な数の男性癌サバイバーが、子供を作り父親になることが実現できるかもしれないということがわかった。

このレトロスペクティブ研究で、ニューヨーク・プレスビテリアン病院/ワイルコーネル医療センターの研究者らは、癌治療のほぼ20年後、精液中から生存精子を検出できない状態の男性癌サバイバーの3分の1以上において、精液から健康な精子を採取できたことを示した。精子の採取後に体外受精を行ったところ、妊娠率は50%で、全体的な出産率はやや低かった。

この研究結果は3月14日付Journal of Clinical Oncology誌電子版で発表された。

これまで、癌サバイバーにおける精子採取法(精巣内精子採取法、microTESE)の実施は限られていたと、研究主任でニューヨーク・プレスビテリアン病院/ワイルコーネル医療センター泌尿器科の教授であるDr. Peter Schlegel氏は説明した。Schlegel氏はmicroTESEを開発し、この研究で全ての処置を担当した。「われわれの研究に関するこのような情報を得て、どの患者に対して良好な成績が得られるかを詳細に知ることは、microTESE活用の可能性を広めるためには非常に重要です」。

精子数が非常に少なくなるのは、幼児期または青年期に化学療法を受けた男性によく見られる、長期にわたる副作用である。本研究で、ニューヨーク・プレスビテリアン病院/ワイルコーネル医療センターの研究者らは、無精子症の症状を有し、1995年から2009年の間にmicroTESEを受けた73人の男性癌サバイバーを分析した。この処置は平均して癌治療のほぼ19年後に実施された。

37%の男性から健康な精子を採取することができたが、数人の男性はmicroTESEを複数回受けたため、手技の実施単位からすると43%となる。卵細胞質内精子注入法(ICSI)と呼ばれるプロセスを用い、卵子を受精させるために一個の精子を使用した結果、平均受精率は57%であった。36件の胚移植が実施され、そのうち半数が妊娠に結びついた。全体で見ると、5組の双生児を含む20人の子供が出生した。

健康な精子の採取率は、受けた化学療法の種類に左右されうる、とSchlegel氏は指摘した。プラチナベースの化学療法薬で治療を受けた男性は最も高い採取率を示した。例えば、プラチナベースの化学療法薬、シスプラチンが標準治療薬となっている精巣癌の治療を受けた男性は、85%の採取率を示した。リンパ腫や肉腫の治療によく使用されるアルキル化剤で治療を受けた男性は、採取率が最も低かった。

「microTESEとICSIは、化学療法を受けた男性にみられるような、精巣機能障害に起因する無精子症の治療に革命をもたらしました」とイリノイ大学シカゴ医療センター泌尿器学部の部長であるDr. Craig Niederberger氏は述べた。

MicroTESEが開発される前は、「患者はただ精巣生検を受けるしかなく、もし精子が検出されなければそこでゲーム(治療)は終わりだったのです」。
MicroTESEでは、外科医は光学倍率(顕微鏡)で精巣内をより綿密に観察し、精子を含んでいる可能性が高い拡張した精細管(精液を輸送する空洞のある管状の組織)を選ぶ。Schlegel氏が行った研究によると、他の標準的な方法と比較してmicroTESEが精子採取の成功率を上げるだけでなく、採取される精子数がより多く、精巣への損傷もより少ないということが示された。

この研究結果についてNiederberger氏は、「腫瘍内科医は“化学療法の開始前に精子の凍結保存を勧める必要がない”と解釈してはいけません」と強調した。「彼らは一刻も早く癌治療を始めたいと思っているため、凍結保存をしないという多くのプレッシャーがすでにあります」。しかし今でも、精子の凍結保存は癌を患う青少年と若年男性に将来自分自身の子供を持つ可能性を与える最善の方法である。

本研究の大半の患者は、癌の治療を受けた時点で精子採取が可能な年齢に達していたとノースウェスタン大学ファインバーグ医学部泌尿器学科の准教授であるDr.Robert Brannigan氏は指摘した。患者と、主に青年期の患者を診察する小児腫瘍医などの腫瘍医との間での会話で妊孕性温存が触れられないことがまだ多い、と彼は続けた。

例えば、小児腫瘍医に関する最近の全国的な調査では、多くの小児腫瘍医は青年期の患者を不妊治療専門医に紹介することはめったにないということが明らかになっている。

「多くの腫瘍医は、生殖に関する健康問題について、特に青年期の患者と具体的に話すことに戸惑うかもしれません」とBrannigan氏は続けた。時期、費用、医療保険も生殖能温存の障壁となりうると彼は付け加えた。

「最高の手腕と卓越した技術をもってしても、化学療法後の無精子症の患者で精子を見つけて採取できる例は、ほんの少数でしかないのです」とBrannigan氏は述べた。

「これらは非常に困難な事例ですが、Schlegel氏の成功率は際立っています」と彼は続けた。「しかし、この研究が浮き彫りにしたのは、多くの患者が癌治療の開始前に(妊孕性温存の)カウンセリングを受けていたら、そもそもこの手順(精子採取法)を受けなくてもよかったかもしれないということです」。

 

— Carmen Phillips

この記事の詳細情報:癌治療と生殖機能の温存(NCI
キャンサーブレティン2011年1月11日号スポットライト記事)

【画像下キャプション】
レトロスペクティブ研究によると、精液中に生存精子がない男性の癌サバイバーから、癌治療の20年後に健康な精子を採取できるということが分かった。
画像原文参照

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山本 容子 訳
井上 進常(小児腫瘍科/首都医校教員) 監修
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