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子宮頸癌の米国内外パラダイム:VIAとベバシズマブ/NCIパースペクティブ

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子宮頸癌の米国内外パラダイム:VIAとベバシズマブ/NCIパースペクティブ

2013年6月2日

NCIパースペクティブ

今年1年で米国では12,000人以上の女性が、世界では50万人以上の女性が子宮頸癌にかかると考えられているが、細胞診(Pap検査)やヒトパピローマウイルス(HPV)検査などの効果的な早期診断方法により、かなりの死亡数を減らすことができる。しかし、医療施設が不十分な地域では多くの女性がこのような検査を容易に利用できるわけではなく、ヘルスケアサービスの利用が可能な女性たちでさえ検査に関する勧告にきちんと従っているとは言えない。例えばケアサービスを受けることが可能な女性であっても、浸潤性子宮頸癌にまで進行した女性のうち50%が、その診断を受ける前の3年間、スクリーニング検査を受けていなかった。スクリーニングを受ける習慣が全ての人々に広まり、罹患率が劇的に下がるまでには、非常に多くの患者がこの病気により命を奪われるであろう。そしてそれは国内外を問わず医療設備が不十分な地域においてより多く認められそうである。

子宮頸癌は十分早い時期に診断されれば完治することが多い。しかし反対に進行した状況で診断された女性には、現在行われている治療では不十分であり、さらに良い治療が必要とされる。

2013年6月2日にシカゴで行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会の最重要演題では子宮頸癌に関連した問題が中心となった。米国国立癌研究所(NCI)はこの議論の中心的な存在であった。NCIは、進行癌の治療に重要な影響を与え得る、ある臨床試験を後援し、インドのスクリーニング試験に資金を提供してきた。このスクリーニング試験は地域活動を行っているスタッフのネットワークを利用して行われ、高い技術を必要としないスクリーニング方法、希釈した酢酸(酢剤)を子宮頸部に塗り直接視診するVIAとして知られる手法が用いられた。

ASCOで発表された内容について考察を加えたのは、NCIのグローバルヘルスおよびスクリーニング試験のディレクターであるTed Trimble 医師と、NCI の行動研究プログラムのProcess of Care BranchのプログラムディレクターであるSarah Kobrin博士であった。Trimble医師とKobrin博士はインドに行き、チームの医師、看護師、地域のヘルスワーカー、そして試験に参加した2人の患者に会った。(参照: “Effect of visual inspection with acetic acid (VIA) screening by primary health workers on cervical cancer mortality: A cluster randomized controlled trial in Mumbai, India,” by Surendra Srinivas Shastri, M.D., of Tata Memorial Hospital, India, and colleagues)

細胞診(Pap検査)はアメリカや医療設備の整った国で一般に行われる比較的高度な検査であり、熟練した細胞検査士が子宮頸部から採取した細胞を観察し、異常な検体を一定の基準で同定しなければいけない。

Shastriの研究では子宮頸部に酢酸を塗って直接観察する、それほど高度な技術を必要としないVIAに着目している。彼の試みは、この検査の効果を調べるだけではなく、ヘルスケアの設備に問題があったり、移動が困難なコミュニティの女性でも利用できる検査方法を探すことでもあった。

この試験では地域のヘルスワーカーやそのコミュニティ内の住民を同定し、スクリーニング検査が必要な女性にVIAを提供するための訓練が行われた。そして10か所のコミュニティの75000人以上の女性がVIAを複数回受けた。このスクリーニングを受けた女性は、10か所の良く似たコミュニティの76000人以上の女性と比較された。こちらの女性は癌のリスクや利用可能なスクリーニング設備について説明を受け、Tata Memorial病院の無料の子宮頸癌スクリーニング検査の引換券をもらったが、コミュニティのヘルスワーカーが行うVIAの地域活動は提供されなかった。訓練を受けた地域活動スタッフはさらに、異常を認めた女性がきちんとTata Memorial病院に紹介されるよう支援した。病院ではコルポスコピー(子宮頸部に照明をあて視野を拡大できる器具を用いた検査)による再検査が行われ、適切な検査診断と治療が提供された。この研究では、コミュニティでスクリーニングを受けたグループの子宮頸癌による死亡が31%減少するという大変有意義な結果が示された。

この試験により死亡を減らすことができたのは、VIA検査とShastriチームが進める地域活動システムを組み合わせたためと考えられる。この研究の中間解析結果はInternational Journal of Cancer (参照: “A cluster randomized, controlled trip of breast and cervical cancer screening in Mumbai, India: methodology and interim results after three rounds of screening.” 2010:126:976-84. Indraneel Mittra, Gauravi A Mishra, et al)に発表されていた。VIAを組み合わせなかった他の研究は、このような良い結果を示さなかったが、それはおそらくフォローアップシステムが異なっていたからであろう。

欧米では、ステージが進行した状態で新たに発見される子宮頸癌の症例はそれほど多くはなく、細胞診(Pap検査)やHPV検査のどちらかによって早期の段階で発見されるほうがはるかに一般的である。早期・根治可能な段階で見つけられなかった子宮頸癌は局所や遠隔臓器へ広がる。進行子宮頸癌は治療が難しく、若い女性に診断されることが多く、彼女らの生命を脅かす疾患である。ASCOではTrimbleもNCIが後援した臨床試験の重要な結果について考察した。(参照: “Incorporation of bevacizumab in the treatment of recurrent and metastatic cervical cancer: A phase III randomized trial of the Gynecologic Oncology Group”)この試験の暫定結果は2013年2月にNCIから公表されていた。(参照http://www.cancer.gov/newscenter/newsfromnci/2013/GOG240

ベバシズマブ(アバスチン)は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)タンパクに結合するよう開発された薬である。ベバシズマブは腫瘍が近くの血管に侵入する能力を阻止し、成長を続けるために必要な血液の供給を妨げる。この米国婦人科腫瘍グループ(GOG)の研究では、これまでの標準的な化学療法剤に加えてベバシズマブが根治不可能な進行、再発、または転移癌の女性に投与された。試験ではベバシズマブと化学療法の両方を受けた女性と化学療法のみ受けた女性とが比較され、ベバシズマブを受けた女性のほうが4カ月近く長い生存期間を示し、低い死亡率であった。

これは進展の早い進行癌に対して有意な延命効果であった。具体的には、2009年から2012年に渡ってアメリカとスペインから合計452人の標準治療で根治不可能だった転移、再発、または病巣が残存した子宮頸癌の患者が試験に組み入れられた。この試験は、以下の2つの疑問に答えるために計画された。まず、トポテカンとパクリタキセルとの組み合わせがシスプラチンとパクリタキセルの組み合わせより優れているかで、2組の化学療法が比較された。そしてベバシズマブを両方のレジメンに加えた場合に全体の生存率が改善されるか調べられた。ベバシズマブを受けた患者は受けなかった患者より中央値で3.7カ月長く生存した。治療終了後の効果の持続時間を示す無増悪生存期間は、ベバシズマブを受けた女性が8.2カ月であるのに対し、化学療法のみは5.9カ月であった。しかしながらベバシズマブを投与された患者には投与されなかった患者よりも副作用が多く認められた。これらの副作用はいずれも以前からベバシズマブに関連した副作用として知られているものであり、高血圧、好中球減少(白血球減少)、血栓塞栓症または血栓形成であった。試験中のQOLも評価され、ベバシズマブを受けた患者と化学療法のみの患者で有意な違いは認められなかった。

「子宮頸癌に対する治療の進歩は大変困難であったため、これは喜ばしい知らせである。参加したGOGの医師や患者は重要な貢献をした」と、NCIの癌治療・診断部門の臨床ディレクターであるJeff Abrams医師は述べた。

酢酸を用いたインドの試験とベバシズマブを用いたアメリカの試験は、表面上は関係がないように思われる。しかし実際には特別な意味を持つ。酢剤は高価ではないがベバシズマブは、他の多くの先進的な化学療法薬剤と同様に比較的高価である。

早期の診断を改善する酢酸を用いた子宮頸部の視診は、効果的に患者を援助し、適切にフォローアップを行いながら行えば、子宮頸癌が女性の癌の多くを占め主要な死亡原因となっている地域では大きな成果をみることができる。ベバシズマブはすでに進行してしまった疾患の治療の選択肢である。

「NCIの希望は、ASCOで今年報告された酢酸を用いた子宮頸部視診の研究によって、同じくASCOで進行子宮頸癌に対し有用性が報告されたベバシズマブと化学療法剤の使用の必要性が最終的にはるかに減少していくことである」と、NCIの臨床研究部の婦人科プログラムの代表であるElise Kohn医師は述べた。

(キャプション:腫瘍への血液供給を示す子宮頸癌の微小血管密度)

原文

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中村奈緒美 訳
喜多川亮 (産婦人科/NTT東日本関東病院) 監修
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