低悪性度神経膠腫の早期切除は患者の生存を改善する

キャンサーコンサルタンツ

Journal of the American Medical Association誌に発表された研究の結果によると、ノルウェーにおいて低悪性度神経膠腫の患者のうち、早期外科的切除を受けた患者は、生検と経過観察という方針となった患者に比べて、全体の生存が改善したことが分かった。

米国において、毎年約20,000人が脳に由来する癌の診断を受けている。脳腫瘍にはいくつかのタイプが存在し、腫瘍が生じる脳内の細胞、進展の程度、腫瘍の成長の早さ、および腫瘍の形質によって分類される。

神経膠腫は、脳腫瘍の中でも最も頻度が高い。低悪性度の神経膠腫はゆっくりと成長する腫瘍であるが、高悪性度の神経膠腫は成長が早い。神経膠腫、特に高悪性度の神経膠腫の予後は依然として不良である。

神経膠腫の標準治療は多くの場合、外科的切除、化学療法、放射線治療および/または生物学的療法からなるが、神経膠腫に関する治療指針が十分に確立されているわけではなく、しかも、低悪性度の神経膠腫の治療方針については見解が分かれている。

ノルウェーの研究者らは、治療方針が異なる2つの病院の低悪性度神経膠腫患者を対象に、生検および経過観察(ウェイトおよびスキャン)による治療と、早期外科的切除による治療の有効性を比較した。2つの病院は地理的に隣接する2地域にそれぞれ位置しており、地域医療を独占的に担っている。換言すれば、患者個人の治療法は当該患者の居住地に大いに依存している。

本試験は、低悪性度神経膠腫患者153人—生検および経過観察を優先する病院の患者66人、早期切除を優先する病院の患者87人—を対象に行った。生検および経過観察を優先する病院においては、患者の71%が初回治療としては生検のみを受けたのに対し、早期切除を優先する病院においては、初回治療として生検を受けた患者はわずか14%であった。最初の7年間の追跡調査の結果、研究者らは、早期切除を優先する病院で患者の32%が死亡したのに対し、生検および経過観察を優先する病院で患者全体の52%が死亡したことから、早期切除を優先する病院で全生存期間が有意に優れていることを見出した。生検および経過観察を優先する病院で低悪性度神経膠腫患者の生存期間中央値(50%の患者が死亡した期間[訳注])は5.9年であったのに対し、他方の早期切除を優先する病院においては追跡終了時においても50%以上の患者が生存していた。推定5年生存率は、生検および経過観察優先で60%であったのに対して、早期切除優先では74%であった。

研究者らは、生検および経過観察優先の病院に比べて、早期切除を優先する病院での低悪性度神経膠腫の治療による生存期間が優れていたと結論付けた。予後因子を(それぞれの施設の条件が対等になるように)調整後もなお早期切除優先の病院で生存の改善が認められた。

参考文献:
Jakola AS, Myrmel KS, Kloster R, et al. Comparison of a strategy favoring early surgical resection vs a strategy favoring watchful waiting in low-grade gliomas. Journal of the American Medical Association. 2012; 08(18):1881-1888.


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翻訳担当者 谷口 淳

監修 西川 亮(脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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