患者自身の免疫細胞により悪性脳腫瘍に対するウイルス治療が鈍る可能性/オハイオ州立大学総合がんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

患者自身の免疫細胞により悪性脳腫瘍に対するウイルス治療が鈍る可能性/オハイオ州立大学総合がんセンター

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患者自身の免疫細胞により悪性脳腫瘍に対するウイルス治療が鈍る可能性/オハイオ州立大学総合がんセンター

投稿日:2012年11月25日

  • 膠芽腫と呼ばれるタイプの脳腫瘍患者の平均生存率は12カ月であるため、この悪性腫瘍に対する新しい治療法が大いに求められている。
  • 癌を破壊するようデザインされているウイルスによりこれら腫瘍の治療は安全に行われているが、ウイルス治療は期待されていたよりも効果が薄い。
  • 今回の研究から、患者の免疫システムが抗癌性ウイルスを除去しようとすること、またこの免疫活動をブロックすれば癌細胞を破壊するための時間をウイルスにもたらすことが明らかとなった。

 

コロンバス、オハイオ - 現在、医師らは致死的で急速に成長する脳腫瘍の患者を治療するのに癌破壊ウイルスを使用している。臨床試験から、こういった治療目的のウイルスは安全ではあるが期待されたよりは効果が低いことが示された。

 オハイオ州立大学総合がんセンターArthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Institute (OSUCCC – James)の研究者らによる新しい研究から、その理由の一つに患者自身の免疫システム、つまり抗癌ウイルスを迅速に除去する働きによることが示された。

 Nature Medicine誌に掲載された知見では、身体は感染したものとして抗癌ウイルスに応答することが示されている。数時間の内に、ナチュラルキラー(NK)細胞と呼ばれる特殊化した免疫細胞が脳内の治療的ウイルスを除去するため進入する。

 研究者らは、NK細胞表面にNKp30とNkp46と呼ばれる特異的分子が発現するとNK細胞がウイルスを攻撃することを見いだした。「これら受容体分子は、ウイルスが腫瘍を破壊する前に、NK細胞が抗癌ウイルスを認識し破壊できるようにします」と、オハイオ州立大学総合がんセンター所長で共同主席著者、James Cancer Hospital and Solove Research InstituteのCEO、また本研究の主席著者であるMichael A. Caligiuri医師は述べている。

 「これら受容体をブロックすると、ウイルスは機能するための時間をより多く持て、脳腫瘍を持つマウスはより長期に生存できます。次のステップは、膠芽腫患者のNK細胞上にあるこれら分子をブロックし、アウトカムを向上できるか確認することです」と、John L. Marakas Nationwide Insurance Enterprise Foundation Chair in Cancer ResearchでもあるCaligiuri医師は述べている。

 この癌細胞破壊(または腫瘍退縮性)ウイルスの研究は、トランスレーショナルリサーチの持つ有用性の模範例である。そこでは臨床試験中に観察された問題は、解決策を考案するため実験室で研究される。

 「今回の場合、腫瘍崩壊性ウイルスの臨床試験により脳内での使用は安全であることが立証されましたが、治療後の脳腫瘍内に相当数の免疫細胞を認めました」と、主席著者で脳神経外科(オハイオ州立大学在籍中は脳神経外科の主任教授)のE. Antonio Chiocca医師は述べている。

 「このプロセスを理解するため、私たちは実験室に立ち戻りました。そして治療ウイルスで治療したマウスにおいて、NK細胞が腫瘍に急速に浸潤することを示しました。またこれらNK細胞は、入り込むために炎症細胞に信号を送り、腫瘍内の癌殺傷ウイルスを破壊するのです。」

 この研究では、腫瘍崩壊性の単純ヘルペスウイルス、ヒト膠芽腫組織、ヒト膠芽腫細胞とヒトNK細胞を移植したマウスを含む、複数のマウスモデルが使用された。主要な技術的知見は以下の通りである。

 動物モデルにおいて治療ウイルスが腫瘍細胞内で複製すると、NK細胞のサブセットを腫瘍部位に急速に誘導した。

 腫瘍内のNK細胞は、抗ウイルスと抗癌の両特性を持つ他の免疫細胞(すなわちマクロファージとミクログリア)を活性化した。

 NK細胞を枯渇させると、治療ウイルスで治療した担癌マウスの生存率が向上した。

 ウイルスに感染した腫瘍細胞を破壊するNK細胞は、ウイルスを認識するNKp30とNKp46受容体分子が発現していた。

 「これらNK細胞受容体が結合する膠芽腫細胞上の分子を特定することで、この治療法に感応性がある患者を特定するのに、これら知見を利用できるかもしれません。」

 本研究は、米国国立衛生研究所/NINDS(助成金NS061811)、NCI(助成金CA069246、CA68458、CA98472)、および国立研究資源センター(助成金RR025753)、American Medical Association Foundation Seed Grant、Dardinger Neuro-oncology Laboratory and Pelotoniaによる資金提供を受けた。

 本研究の共同研究者はこのほか、オハイオ州立大学のChristopher A. Alvarez-Breckenridge、Jianhua Yu, Richard Price1、Jeffrey Wojton、Jason Pradarelli、Hsiaoyin Mao、Min Wei、Yan Wang、 Shun He、Jayson Hardcastle、Soledad A. Fernandez、Balveen Kaur 、現在英国リーズ大学の Sean E. Lawlerら、メディテラネ大学(マルセイユ、フランス)のEric Vivier、Hebrew University-Hadassah Medical SchoolのOfer Mandelboim(エルサレム、イスラエル)、ジェノア大学(ジェノア、イタリア)のAlessandro Morettaであった。

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山下裕子 訳
寺島慶太 (小児科/テキサス小児病院)監修
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原文

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