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PARP阻害剤の新しい作用機序を発見(NCIプレスリリース)

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PARP阻害剤の新しい作用機序を発見(NCIプレスリリース)

2012年11月1日

NCIプレスリリース

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health(NIH))の研究者は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤、またはPARPとして知られる種類の化学療法剤の重要な新規の作用機序を明らかにした。彼らは臨床試験において現在評価されているこの種類の3つの薬剤の毒性の違いも同定した。NIHの一部である米国国立癌研究所(National Cancer Institute(NCI))の研究者によるこの研究は2012年11月1日のCancer Research誌に掲載された。

近年、PARP阻害剤として分類される薬剤は乳癌や卵巣癌に対する抗癌剤として有望であることが示されている。タンパクのPARPファミリーのメンバーは、DNA損傷の修復やプログラム細胞死などの多数の重要な細胞プロセスに関与している。この研究が行われる前は、PARP阻害剤は主にPARP酵素活性を阻害し、それ故DNA損傷の修復が抑制され、最終的に細胞死をもたらすことで作用すると考えられていた。

本研究において研究者は、もう一つの作用機序をPARP阻害剤が有することを立証した。DNA損傷部位へPARP蛋白が局在化することにより抗腫瘍活性をもつというものである。捕捉されたPARPタンパク-DNA複合体はDNAの複製を阻害するため、高い細胞毒性を示す。研究者がPARPタンパクの損傷DNAへの捕捉能の差に関して3つのPARP阻害剤を評価したところ、阻害剤の捕捉能が大きく異なっていることがわかった。

「われわれの研究にとって重要なことは、各々のPARP阻害剤はPARPの阻害を引き起こす度合としては同等の活性を示すと想定されてきたが、PARPを捕捉する活性の観点からは同等の活性ではないということが今回分かったという点である。」とNCI癌研究センターのYves Pommier医学博士は述べた。「われわれの発見により、PARP阻害剤は酵素阻害能に加えて、PARPを捕捉する活性に応じて分類されるべきであることが示唆された」。

ヒトのタンパクのPARPファミリーにはDNA結合・修復タンパクであるPARP1とPARP2が含まれる。DNA損傷により活性化されると、これらのタンパクはDNAの修復作業を実際に行う他のタンパクを集合させる。正常な条件下では一度修復過程が進行するとPARP1とPARP2はDNAから放出される。しかし、本研究が示したように、PARP阻害剤と結合するとPARP1とPARP2はDNA上に捕捉されるようになる。研究者によって、PARP活性が無い場合に集積する未修復の一本鎖DNAよりも捕捉されたPARP–DNA複合体の方が高い細胞毒性を有することが示され、PARP阻害剤がPARP毒として作用することが示唆された。

NCI clinical and translational researchの副所長であるJames Doroshow医学博士と共同で、研究者は現在臨床試験中の3つのPARP阻害剤、MK-4827、olaparib、veliparibを比較するために、PARPアッセイ(細胞と組織におけるPARP活性を測定する方法)を用いた。

研究者はPARP酵素活性に対する阻害能が3つのPARP阻害剤で異なり、olaparibが最も強力な阻害剤であり、続いてveliparib 、MK-4827であることを発見した。しかし、細胞毒性の観点からはMK-4827が最も強力であり、続いてolaparib、veliparibであった。さらに、MK-4827あるいはolaparibとPARP1の複合体はveliparibの複合体よりDNAに強固に結合することが示された。

これらの知見により、主にPARP酵素活性の阻害作用を示し、DNA上のPARPタンパクを補足しない触媒阻害剤と、PARP 酵素活性の阻害とPARP毒としての作用の両方をもつ2重阻害剤の2種のPARP阻害剤が存在する可能性が示唆された。

「今回の知見により、臨床試験でPARP阻害剤を使用する医師はそれらの薬剤を慎重に選ぶべきであることが示唆されている。なぜなら、われわれは今、使用されたPARP阻害剤によって結果が変わる可能性があることを懸念しているからである」とNCI 癌研究センターのJunko Murai医学博士は述べた。「次の段階として、PARP捕捉とPARP阻害の両方に基づいて他の主要なPARP阻害剤を分類することに取り組んでいる」。

本研究はNCI Intramural Programと日本学術振興会(Japan Society for the Promotion of Science(JSPS))の先端研究拠点事業(Core-to-Core Program)から援助を受けた。第一著者のJunko Murai氏はNCI癌研究センターに勤務するJSPSの特別研究員である。資金はNCIの助成、Z01 BC 006150-19LMPから提供された。

参考文献:Murai J, et al. Differential trapping of PARP1 and PARP2 by clinical PARP inhibitors. Cancer Research. Nov 1, 2012.

キャプション:PARP阻害剤であるOlaparibの追加後に生じる緑の点により明らかにされたDNA損傷を有するリンパ球細胞の顕微鏡写真。

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下野龍太郎 翻訳
原野謙一(乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)監修
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原文

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