2012/10/02号◆クローズアップ「乳癌分子像への理解を深める新たなツール」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/10/02号◆クローズアップ「乳癌分子像への理解を深める新たなツール」

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2012/10/02号◆クローズアップ「乳癌分子像への理解を深める新たなツール」

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NCI Cancer Bulletin2012年10月2日号(Volume 9 / Number 19)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

乳癌分子像への理解を深める新たなツール

癌ゲノムアトラス(TCGA)研究ネットワークの研究者らは解析ツールを複数用いて、825人の女性の乳房腫瘍に関する分子学的研究を完了した。Nature誌に報告された最新結果では、乳癌の主な4つの分類が確認され、これらの疾患に潜在する生化学的変化に関する新情報が追加されている。

研究者らは、この腫瘍分類の特徴を明らかにするため6つの異なる技術を利用した。DNAとRNAの塩基配列決定に加え、DNAのメチル化パターンの特徴を明らかにするとともに腫瘍の遺伝子コピー数を数えた。本研究は腫瘍検体のタンパク質発現パターンを報告する最初のTCGA研究でもある。

これらの結果の統合により、乳癌の各分類の遺伝的異常およびエピジェネティックな異常を一覧でき、これらの腫瘍は多くの面において異なる疾患であるという考えが明らかになった。

「今年Nature誌に掲載された本試験および他の5試験(乳癌ゲノムに関するもの)において、乳癌の基礎研究ならびにトランスレーショナル(臨床応用に向けた初期段階の)研究実施に向けた新たな行程表が示されました」と、セントルイスにあるワシントン大学医学部のDr. Matthew Ellis氏は述べ、「研究者らがこれらの結果を追跡調査するには10年かかるでしょう」とつけ加えた(囲み記事のリンクから試験アブストラクトを参照)。

過去の複数の研究では分類の一つである基底細胞様乳癌が、卵巣癌の一種に遺伝的に似ていることが示唆されていた。本TCGA研究においてこの考えが確認されるとともに、現在一部の卵巣癌で検討中の治療法をこれらの乳癌に対しても検討できるかもしれないことが示唆された。

「本知見は正に卓越したものです。これにより乳癌患者に対する最も適切な化学療法はなにかが(研究の著者らの間で)議論になりました」とEllis氏は述べた。その他の分類はluminal A、luminal BおよびHER2過剰発現乳癌として知られている。

さまざまな技術の活用

先週、癌研究に関する記者会見でNCI部長のDr. Harold Varmus氏は、乳癌の4つの分類は以前から知られていたと述べ、目新しいことは、TCGAの研究者らが各分類に関して今まで以上に詳しく「遺伝的異常の概要」を示すため、複数の技術を用いたことであるとした。

「私たちはこれまで同種の腫瘍については幅広い分析を行ってきたものの、こうした各分類に関してそれほど価値のある情報の保管庫を持っていませんでした。非常に重要な情報の宝庫です」という。

本研究では何百もの腫瘍を調査したため、一般的ではないがよく起こる変異を調べることが可能となった。これらの変異のうちの一部では、既存薬が腫瘍に奏効する可能性が示された。「本疾患の治療において、既存薬の再活用が重要になるでしょう」とEllis氏は述べた。

患者の2%にしか起こらない変異であるとしても、その変異を標的とした既存薬を試す臨床試験に十分な数の女性を登録できるほど、乳癌は一般的な疾患であると同氏は続けた。

腫瘍のBRCA1とBRCA2遺伝子の解析結果から、基底細胞癌様腫瘍患者の約20%は、PARP阻害薬として知られる薬剤の候補者であるかもしれないと研究者らは述べた。トリプルネガティブ乳癌を含む基底細胞癌様腫瘍の治療は困難であり、また、特に若年女性とアフリカ系アメリカ人が罹患することが多い。

理解する(トランスレーション)段階

10%以上の患者で、TP53、PIK3CA、GATA3の3つの遺伝子のみに変異がみられた。PIK3CA遺伝子の欠陥が引き起こした変化を標的にした薬剤が開発されており、一部の乳癌患者を対象に試験が行われるであろう。しかし大規模臨床試験を計画し、実行するには何年もかかると、研究者らは注意を喚起した。

「この種の研究がいつ臨床に影響を及ぼすのか、人々は常に知りたがります。私どもはこれらを発見しましたから、現在は実用化する段階にあります」と、もう一人の研究リーダーであるノースカロナイナ大学ラインバーガー総合がんセンターのDr. Charles Perou氏は述べた。

これらの新発見の多くは現在、臨床試験において検証することが可能である。例えばこの研究ではHER2陽性の腫瘍を有する患者には少なくとも2群あり、これらの群は治療に対して異なる反応を示す可能性が示されている。

「過去に行われた遺伝子発現に関する研究から着想を得ました。しかしプロテオミクスを含むTCGAの解析を統合した本結果は、いずれか一つの技術に基づく結果をはるかにしのぐ、説得力と示唆に富むものです」とPerou氏は述べた。

Perou氏は癌のサブ分類を鑑別するためにゲノム解析を用いた最初の研究のうちの一つの共著者である。その研究は2000年に発表され、女性42人の乳房腫瘍遺伝子8000個の発現を解析するため、当時の新機器であるDNAマイクロアレイを用いたものであった。

10年以上が経ち、ゲノム研究の技術進歩は目覚ましかったとEllis氏は語った。現在欠けているのは、タンパク質と癌細胞の生化学に関する情報であると彼は考えている。

「次の10年で、私どもがDNAとRNAに関し過去10年に行った研究と同じやり方によってタンパク質を研究する必要があります」と同氏は述べ、「そうすることによって初めて、癌細胞の生化学の全体像を描くことができるでしょう」とつけ加えた。

Nature誌に掲載された6試験ヒト乳房腫瘍の包括的分子像
乳癌サブタイプの変異と転座に関するシーケンス解析
全ゲノム解析により、アロマターゼ阻害薬に対する乳癌の反応が明らかになる
乳癌の癌遺伝子と変異プロセスの概要
乳房腫瘍2000個のゲノムとトランスクリプトミクス構造より新たなサブグループが明らかになった
原発性トリプルネガティブ乳癌のクローン変化と変異のスペクトル

— Edward R. Winstead

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大倉綾子 訳
原 文堅(乳癌/四国がんセンター) 監修
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