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2012/10/02号◆特別リポート「Mycタンパク質が遺伝子発現を増幅:新たな見解」

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2012/10/02号◆特別リポート「Mycタンパク質が遺伝子発現を増幅:新たな見解」

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NCI Cancer Bulletin2012年10月2日号(Volume 9 / Number 19)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

Mycタンパク質が遺伝子発現を増幅:新たな見解

癌研究において最もよく研究されたタンパク質は、最もミステリアスなものでもある。

Mycタンパクは細胞増殖に関わる遺伝子を調節し、多くの癌に関与している。何千もの研究が行われてきたが、研究者は、Mycが正常細胞および癌細胞においてどのように作用するのかについて、肝心な部分を未だ解明できずにいる。

しかし、2つの新たな研究は、この領域の多くに新たな光を与え、いくつかの答えを示し、新たな疑問を投げかけた。これらの研究で示されたMycは、特定の遺伝子を活性化するというより、細胞内にあるほぼ全ての活性遺伝子の発現を明らかに増幅させた。

「細胞のいかなる作用も、Mycの影響でさらに増強されます」と、NCI癌研究センターのDr. David Levens氏は述べた。Levens氏は米国国立心肺血液研究所のDr. Keji Zhao氏と共同で、2つの研究のうち一方を主導した。両研究は先週、Cell誌で発表された。

新たな展望

Levens氏らは、分子的な「タグ」を用い、白血球細胞内のMyc活性を追跡した。このアプローチにより、Mycは特定の遺伝子と選択的な相互作用を起こさないことが明らかになり、代わりにすでに発現しているほぼ全ての遺伝子上に確認された。

ホワイトヘッド・バイオメディカル研究所のDr. Richard Young氏らは、2つめの研究で、別の方法と細胞を用いて同様の結論に達した。「Mycの主要な役割が、細胞内で活性のある全ての遺伝子へ移動して可変抵抗器のように作用し、その遺伝子発現を増幅させることがわかりました」とYoung氏は述べた。

これらの研究は、”とてもよく行われた研究”、とペンシルバニア大学アブラムソンがんセンターのディレクターDr. Chi Van Dang氏や、今回の研究に関与していないMyc研究者らは述べた。 「今回の研究は、調節が解除されたとき、相対的に強力な癌遺伝子がどのように働くかという、さらなる観点を提示しています」。

しかし、今回のモデルは、Mycに関して論文で十分に立証されている知見の一部を説明していない、とDang氏は言う。

「例えば、Mycは細胞分化を阻害するということがわかっています」と述べた。「つまり、Mycは活性遺伝子の発現を単に増幅させるのではなく、細胞内の何かを抑制しているはずだということです。これら研究は、全ての活性遺伝子が増幅されるわけではないことを示しており、事実、最大3分の1の遺伝子は抑制されていました」。

もう一つの重大な疑問は、Mycがどのくらい高いレベルになれば癌に寄与する可能性があるかということ、とDang氏は述べた。「Mycをかなり増やしたときに、なお増幅器として作用するとしたら、不均衡な遺伝子発現を引き起こし、(RNAを変化させることによって)癌を引き起こすのでしょうか?」と疑問を投げかけた。

同様の疑問に対し研究者は長年時間を割いていたと、付随論説の筆者は述べた。これらの「将来性のある」研究により、初めて「Mycの理路整然とした全体像」が垣間見えた、と英国ケンブリッジ大学のDr. Gerard Evan氏らが論説に記した。

Mycに対するこの見解は、単一の転写サイン-すなわち、Mycによって一貫して活性化される一連の遺伝子があるのではないことを示している。なぜなら、新しいモデルによれば、Myc活性が、細胞のタイプおよびMycが活性化された時の細胞の状態に完全に依存するためである。

将来的な意義

もし今回の新たな知見が確認されれば、それは癌研究者にとって意義をもつ可能性がある。医薬品開発者は、特定の遺伝子に焦点を当てるより、Mycの遺伝子増幅作用に関与する細胞機構を破壊する戦略を立てるかもしれない、とYoung氏は述べた。

「もしMycが細胞内にある全ての活性遺伝子を増幅しているとすれば、それらの遺伝子の一部を標的にする発想は成功しないでしょう」と述べた。「Mycが作用したあとを標的とすると有益でしょう」。新しい研究結果から、Myc自体を標的とする取組みが復活する可能性があるとYoung氏は予測するが、他の転写因子と同様にMycも標的としづらいことが証明されている。

研究者はMycの作用経路を長期にわたり探し続けている。「われわれの知見は、Mycが発癌過程のどの段階にも関与することを示唆しています」と、Levens氏は述べた。

この研究に着手する前、Levens氏は、自身がMycに関する大量の科学論文に何か新たなことを加えられるかどうか自問した。彼は現在、Mycの生物学に関して、数多くの不可解でしばしば矛盾する結果を統合して説明する新しいモデルを考えている。

「われわれの研究は、新しいというよりも集大成なのです」と彼は語った。「Mycについて本当に新しい何かを語るのは困難です」。

— Edward R. Winstead

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佐々木亜衣子 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
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