2012/01/24号◆クローズアップ「分子標的治療が進行腎癌に対する治療選択肢に」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/01/24号◆クローズアップ「分子標的治療が進行腎癌に対する治療選択肢に」

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2012/01/24号◆クローズアップ「分子標的治療が進行腎癌に対する治療選択肢に」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年1月24日号(Volume 9 / Number 2)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

分子標的治療が進行腎癌に対する治療選択肢に

何十年もの間、腫瘍医らは進行腎癌患者の治療に楽観的になれなかった。しかし、この15年で、重要な発見により、腎臓以外へ転移した癌(転移性腫瘍)を治療し、より効果的な治療開発の新たな方向性を示す標的治療がもたらされている。

NCI泌尿器腫瘍科長であるDr.W.Marston Linehan氏は「われわれが1980年代初期に初めて腎癌の研究に着手した時、腎癌は単一の疾患だと考えられ、すべて同じように治療されていました」と述べた。

そのため、現在と同様に、外科手術が転移していない腎細胞癌(RCC:最も多くみられる腎癌)に対する初期治療であった。しかし、癌が転移すると患者は通例予後不良となり、多くは1年以内に死亡した。

ジョージタウン大学ロンバルディ総合がんセンターの研究者であるDr. George Philips氏は「腎癌は容赦なく死をもたらす疾患だと考えられていました」と述べた。

従来の化学療法は腎癌に奏効しないため、進行腎癌患者はサイトカイン(インターロイキン-2あるいはインターフェロンαのいずれか)で治療されたが、両薬剤は共に毒性の強い副作用を有していた、とPhilip氏は続けた。完全かつ持続的な奏効がみられたのは、高用量インターロイキン‐2で治療を受けた患者のうちわずか5~10%の患者のみであった。

そういった患者の状態を改善するため、米国国立衛生研究所(NIH)のLinehan氏らは、腎癌患者が複数いる家族の募集を開始した。「われわれが腎癌の遺伝子と考えていたものを確認したかったのです」とLinehan氏は述べた。「もし腎癌を発症させる遺伝子が解明できれば、それが標的治療によるアプローチの開発基盤となるかもしれない、ということがわれわれの願いでした」。

10年後、研究者らはフォン・ヒッペル・リンドウ病(淡明細胞型腎細胞癌という特異的な組織型つまり細胞構築をもつ腎腫瘍が発生する遺伝性癌症候群)患者のVHL遺伝子の変異を確認した。さらに、多くの非遺伝性淡明細胞型腎細胞癌においても、VHL遺伝子は変異しているか発現していないことを突き止め、VHL遺伝子が探していた腎癌遺伝子であることが示唆された。

この発見により、研究者らはVHLを標的とする治療を検証し、今日6品目の進行淡明細胞型腎細胞癌患者の治療薬が米国食品医薬品局(FDA)から承認されている。すなわち、血管内皮成長因子(VEGF)受容体阻害薬(ソラフェニブスニチニブパゾパニブ)、VEGF結合抗体(ベバシズマブ)、およびもうひとつのVEGF制御因子であるmTOR経路の阻害薬(テムシロリムスエベロリムス)である。これらの薬剤により、多くの患者が大きな恩恵を受けたが、治癒した患者はわずかであった。

多くの遺伝子、多くの疾患

腎明細胞癌のほぼ75%が淡明細胞型である。しかし、それ以外にさまざまな組織型がみられる。そういった稀な癌の遺伝的原因を調べるため、Linehan氏らは非淡明細胞型腎細胞癌の家系を調査した。こうした家系の中から、遺伝性乳頭状腎細胞癌(HPRC)という新たなタイプの腎癌が確認された。

HPRCの家系では、フォン・ヒッペル・リンドウ症候群の臨床的特徴はみられず、VHL遺伝子変異もみられなかった。研究者らは、代わりに癌原遺伝子METの変異を確認し、異なる遺伝子が異なるタイプの腎癌を引き起こすことを初めて示した。

研究チームは、これが偶然かもしれず、他のRCC組織型がさらに別の遺伝子の変異に関連するかもしれないと考えた。バート・ホッグ・デュベ症候群(多発的皮膚病変により特徴づけられる症候群)の家系を調査して、これらの患者に嫌色素性のオンコサイト様腎細胞癌が発症することを確認した。これまでの淡明細胞型や乳頭状腎細胞癌とは異なり、これらの腫瘍ではこのグループが命名した新規遺伝子であるFLCNに変化が認められた。

さらに、別の研究グループが、遺伝性平滑筋腫症-腎細胞癌(Linehan氏の研究グループが1980年代後期から研究していた非常に進行の速い腎癌)患者ではフマル酸ヒドラーゼ(細胞がグルコースからエネルギーを生み出すために使われ、代謝経路で重要な役割を果たす酵素)に変異が認められることを明らかにした。これまでに、異なる型の腎癌を引き起こす15種類の遺伝子が確認されている。

「現在では、腎癌は単一の疾患ではないことが明らかになっています」とLinehan氏はコメントした。「腎癌にはたくさんのタイプがあり、それぞれが別の組織型をもち、異なる臨床経過をたどり、治療に対する反応性も違い、異なる遺伝子の変異により生じます。しかし、各遺伝子は基本的に同じ経路(酸素、鉄、栄養素、エネルギーを察知する細胞の能力)に関与しているのです。われわれは、腎癌は本質的に代謝性疾患であると結論付けました」。

より効果的な治療を求めて

新たに診断された患者のうち20%は転移をきたすため、たとえその腫瘍が十分に研究された淡明細胞型腎細胞癌であっても、ゴールからは遠い、とダナファーバー・ハーバード癌センター腎癌プログラムのリーダーであるDr.Michael Atkins氏はコメントした。

「われわれは、大部分の患者に持続的な効果を与えたいのです」と彼は述べた。

患者の治療成績を改善するために、最近の研究では、患者の癌の特性に基づいてどの治療を最初に行うべきか、現行治療での至適投与量とスケジュール、利用可能な治療を行う最適な順番を検討している。これらの腫瘍はきわめて血管が多いため、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)やポジトロン放出断層撮影(PET)のような画像技術により、かすかな治療効果を確認し、状況に応じて治療を修正していくことが可能となりうる。

他のグループがより選択的なVEGF受容体阻害薬を開発中である、とAtkins氏は続けた。そういったより選択的な薬剤により、選択性の少ない薬剤に関連した副作用を避けながら、臨床医が相乗的な抗腫瘍活性を示す併用療法を行えるようになるであろう。免疫系を活性化するサイトカイン療法の効果は限られるため、新しくより強力な免疫療法の使用について検討をせまられている。

また、研究者らは、腫瘍が現行の治療に耐性を示す経路を解明し、そこを標的とする新薬の開発に努めている。同様に、非淡明細胞型細胞癌を制御する遺伝子の発見により、多数の有望な薬物標的がもたらされた。たとえば、Linehan氏のグループはフマル酸ヒドラターゼを標的とした薬剤の臨床試験を行っている。

より稀な非淡明細胞型腎細胞癌を研究し、すべての腎細胞癌治療での全生存率の差をより厳密に評価するため、臨床試験のデザインを変更する必要があるかもしれない。さらに、癌・ゲノムアトラスなどの計画では、新たな治療標的の開発を目的とし、腎細胞癌を制御する新たな遺伝子や経路を探し続けている。

「腎癌については、飛躍的な進展を遂げていると考えています」とLinehan氏は述べた。「より向上しなければならないかって?もちろん!でも、わたしは将来について大変有望視していますよ」。

— Jennifer Crawford

【画像キャプション訳】

<上段>淡明細胞型腎細胞癌 (画像提供Nephron)
<中段>:乳頭状腎細胞癌(画像提供Nephron)
<下段>:オンコサイト様嫌色素性腎細胞癌(画像提供Nephron)  【画像原文参照

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佐々木亜衣子 訳
榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院) 監修
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