PV-10投与が進行メラノーマ患者に有益である可能性

キャンサーコンサルタンツ
2010年11月

皮膚の他の部位や皮下に転移したメラノーマ患者において、試験研究中の薬剤PV-10をメラノーマに直接注入することによる有望な効果が、第2相臨床試験で示された。これらの結果は豪州のシドニーで行われたMelanoma 2010 Congressで発表された。
メラノーマは最も致死的な種類の皮膚癌である。毎年、米国ではおよそ68,000人がメラノーマと診断され、8,700人が死亡している。転移性メラノーマの最も一般的な転移部位は、肺、肝臓、骨、および脳である。さらに、皮膚の他の部位(皮膚転移)または皮下(皮下転移)に転移することがある。

PV-10は、皮膚転移および皮下転移したメラノーマを対象とした臨床試験で研究中の薬剤である。眼科医が眼障害の評価のため数十年来使用してきた染色剤であるローズベンガルの誘導体でもある。ローズベンガルは前臨床試験では抗癌作用を起こす可能性が示され、PV-10はメラノーマの早期臨床試験で安全かつ有効である可能性が示された。さらに、先行試験ではメラノーマの病変部に直接注入することにより、薬剤を注入していない病変部に「バイスタンダー」効果(周辺も同様に反応すること)が起こる可能性が示唆された。

現行の第2相臨床試験では、研究者らは進行メラノーマ患者80人を評価した。患者は、皮膚、皮下、およびリンパ節への転移1〜20個にPV-10を注入した。初期治療後、新たな病変、もしくは不変の病変を認める可能性があり、8 、12、もしくは16週目に再び治療を行い、最終追跡調査は52週間とした。さらに、1〜2箇所の病変を無治療のまま残してバイスタンダー効果を評価した。

初期の患者40人に関する予備データは、2010年度米国臨床腫瘍学会で発表された。今回の結果は臨床試験全体の最初の発表データに基づいている。

49%の患者に客観的な奏効が認められた(検出可能な癌の減少)。治療効果のあった患者で無増悪生存期間中央値は11.7カ月であった。

PV-10を注入した病変に、71%の患者で病勢が安定もしくは改善が認められた。未治療の病変においても効果が認められ、バイスタンダー効果の見解を支持するものであった。

副作用は概して軽度から中等度で、注入部位の痛み、変色、および炎症などがみられ、頻度は少ないが吐き気、下痢、嚥下困難の症状が認められた。

研究者らは、皮膚病変および皮下病変を伴う進行メラノーマの患者においてPV-10が有望であると結論づけた。さらなる試験実施によりこの開発戦略が明らかにされることになる。

参考文献:
[1] Agarwala AA, Thompson JF, Smithers BM, et al. Chemoablation of Metastatic Melanoma with PV-10. Presented at the Melanoma 2010 Congress. November 4-7, 2010. Sydney, Australia.

[2] Thompson JF, Hersey P, Wachter E. Chemoablation of metastatic melanoma using intralesional Rose Bengal. Melanoma Res. 2008;18:405-11.

[3] Agarwala SS, Thompson JF, Smithers BM, et al. Chemoablation of metastatic melanoma with rose bengal (PV-10). J Clin Oncol. 2010;28:15. (Abstract 8534).


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監修 野長瀬吉兼(医学、工学)、辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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