ネクサバールによる肝細胞癌患者の生存期間の延長

キャンサーコンサルタンツ
2007年6月

2007年度米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された最新の抄録より、Nexavar〔ネクサバール〕(ソラフェニブ)の投与は進行性肝細胞癌 (HCC) 患者の生存期間を有意に延長し、増悪までの期間を2倍にするという結果を示した。ソラフェニブは肝細胞癌の治療で現在までに生存期間を延長した初めての薬剤である。

ネクサバールは、進行性腎細胞癌の治療薬として承認された経口マルチキナーゼ阻害剤で、広範囲の抗癌活性を持つ。

近年、SHARP(Sorafenib HCC Assesment Randomized Protocol)試験と呼ばれる国際共同プラセボ対照第3相臨床試験に、これまでに薬物治療を受けたことのない進行性肝細胞癌の患者602例が参加した。患者には無作為にソラフェニブ(400mg、1日に2回)またはプラセボを投与した。

・生存期間中央値は、対照群34.4週に対しソラフェニブ投与群46.3週であった。(ハザード比=0.69、p値=0.00058)
・増悪までの期間の中央値は、対照群12.3週に対しソラフェニブ投与群24週であった。(ハザード比=0.58、p値=0.000007)

ソラフェニブ投与群およびプラセボ投与群において最も多くみられたグレード3-4の有害事象は、下痢(それぞれ11%vs2%)、手足皮膚反応(8%vs1%)、倦怠感(10%vs15%)および出血(6%vs9%)であった。重篤な副作用はプラセボ投与群では54%に発現したのに比してソラフェニブ投与群では52%であった。

上述の結果は査読を受けて裏づけを得る必要があるが、ソラフェニブは進行性肝細胞癌患者の生存期間を延長させることを示した初めての薬であり、毒性も管理できるものであると担当医師らは結論付け、報告書には「ソラフェニブが肝細胞癌患者への全身療法の新しい標準薬である」と記載されていた。

参考資料

Llovet J, et al. “Sorafenib improves survival in advanced Hepatocellular Carcinoma (HCC): Results of a Phase III randomized placebo-controlled trial (SHARP trial)”. Proceedings from the 2007 annual meeting of the American Society of Clinical Oncology. Late-Breaking Abstract (LBA) #1.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 舛田 理恵

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肝臓がん・胆嚢がんに関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...
脂肪肝が肝臓がん転移を促す仕組みの画像

脂肪肝が肝臓がん転移を促す仕組み

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ大腸がんは肝臓に転移することが多く、いったん肝転移すると治療が非常に難しくなる。脂肪性肝疾患がある場合、がんは肝臓に転移しやすくなるが、その...
ザニダタマブはHER2増幅胆道がんの奏効を促進の画像

ザニダタマブはHER2増幅胆道がんの奏効を促進

MDアンダーソン・ニュースリリースMDアンダーソンによる試験が、選択肢の限られた患者に、ザニダタマブが治療の選択肢となる可能性を示す抄録4008

治療抵抗性のHER2陽性胆道がん...