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2011/11/29号◆特集記事「メラノーマ治療薬の耐性に関する新たな機序の発見」

  • 2011年12月6日

    同号原文

    NCI Cancer Bulletin2011年11月29日号(Volume 8 / Number 23)

    日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
    PDFはこちらからpicture_as_pdf

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    ◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

    メラノーマ治療薬の耐性に関する新たな機序の発見

    研究者らは、進行癌患者に、一時的ではあるものの劇的な効果を示す標的治療、vemurafenib[ベムラフェニブ](Zelboraf)による治療において、メラノーマ細胞が耐性となり得る新たな機序を発見した。数例において、本剤により腫瘍が縮小ないし消失することもあるが、決まって効力を失う。

    スローンケタリング記念がんセンターのDr.David Solit氏らのチームは、実験室にて長期間にわたりメラノーマ細胞を薬剤に曝露させることで、ベムラフェニブが標的とする変異BRAFタンパクの短縮型を、耐性細胞が作り出すことを知った。短縮型タンパク‐中間部分がない‐は薬剤存在下でも活性化していることを、研究者らは11月23日Nature誌電子版にて報告した

    「これは、メラノーマ腫瘍が薬剤の効果を無にするというよく知られる機序です」とSolit氏。このような機序で耐性腫瘍がある患者19人の内6人が、短縮型のタンパクを持ったとしている。「この発見が、さらに有効な治療へとつながることを期待しています」。

    ベムラフェニブは、V600Eとして知られるBRAF遺伝子の変異によって活性化された増殖促進シグナルを阻害する。8月に米国食品医薬品局(FDA)は、この変異がある切除不能あるいは転移性メラノーマを持つ患者に対する治療薬としてベムラフェニブを承認した。この変異は、メラノーマの約60%でみられる。

    この実験において、Solit氏らはBRAF V600Eタンパクの短縮型はスプライシング変異によるものであることを発見した。つまり、それらは遺伝子から転写されたRNAのプロセシングで起こる変化を通じて生じるということである。

    「これは、BRAF自体の構造的変化に作用するBRAF阻害剤の最初の耐性機序を同定した重要な実験なのです」。この実験には参加していないがメラノーマ患者の治療に従事している、ペレルマン・ペンシルベニア大学医学部のDr.Ravi Amaravadi氏は述べた。

    この耐性機序が、他の提唱された耐性機序と比較して、どのくらい広範かを判断するのが重要だろうとAmaravadi氏はつけ加えた。

    現在のところ、研究者らはベムラフェニブ耐性腫瘍においてのみBRAF V600Eタンパクのこの型を発見している。選択的スプライシングはBRAFに対して特異的で、他のスプライシングには影響を及ぼさないと彼らは考えており、これは変異あるいはエピジェネティックな変化から生じていることを示唆している。

    「概念的に、われわれはあらゆる薬剤に対する耐性の新しい型を発見しました」とSolit氏は言う。「他の標的治療にも生じるとともに、薬剤の効果はなくなるが、その機序は異なります」。

    例えば、イマチ二ブ(グリベック)またはエルロチニブ(タルセバ)のような薬剤では、薬剤がその標的分子と結合するのを阻む新たな遺伝子変異を腫瘍が獲得したときにしばしば耐性が生じるが、これらの耐性機序が発見されたことにより、ダサチニブ(スプリセル)のような、イマチニブが結合できないBCR-ABLキナーゼの変異型と結合できる第二世代の薬剤の開発に、この知識が利用された。

    ベムラフェニブでは、短縮型BRAFタンパクが、薬剤の存在下で増殖シグナルを活性化する複合体を細胞内に形成する。その耐性を克服するため、研究者らはさらに効力のある薬剤を開発し、複合体を破壊する方法の探索を試みている、と著者らは記している。

    別の戦略として、異なるタンパクを標的とする薬剤の併用があげられ、すでに取り組まれている。例えば6月に、研究者らは、BRAFと同様のシグナル経路の一部である、第二のキナーゼ MEKを阻害する薬剤とBRAF阻害剤との併用を検証した、早期臨床試験からのポジティブな中間結果を報告した。その結果、MEK阻害剤との併用は、BRAFの薬剤耐性を持つ短縮型の進行を抑えるまたは遅らせる可能性があるとした。

    「本試験結果に基づき、われわれは、BRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用は、どちらかを単独で用いた場合と比較して、より有効で毒性が低いという仮説をたてました」とSolit氏は語る。「しかし、この概念を検証するためには、ランダム化比較試験が必要です」。

    ベムラフェニブ耐性の原因となる付加的機序の同定と同様に、ベムラフェニブに対する耐性を引き起こすRNAプロセシング変化の分子基盤を完全に特徴付けるためにも研究が必要である。RNAプロセシング変化に対応するために薬剤が開発されれば、これらの薬剤はベムラフェニブと併用して投与されるであろう、とSolit氏はいう。

    Amaravadi氏は、これに賛同する。BRAFスプライスバリアントにより生じた分子的変化の背景に応じた新薬の開発は、「BRAF阻害剤の臨床的有用性を有意に延長するだろう」と予測した。

    「本試験は、潜在的によくみられる耐性機序としてRNAプロセシングを同定した」と共著者でありNCI癌研究センターのDr.Tom Misteli氏は述べている。この知見は、疾患の機序としての選択的スプライシングの重要性を示唆する研究を増加させるだろう、と氏はいう。

    「スプライシング変異による疾患数は増えているが、治療戦略としてRNAプロセシングを標的としようとするわれわれの努力は現時点では十分ではありません。RNA療法は、大部分が未開拓。だが、有力な治療戦略を与えてくれます」とMisteli氏は話す。

    —Edward R. Winstead

    【上段画像下キャプション訳】

    写真左から

    ベースライン・ 2カ月・6カ月
    進行メラノーマ患者の腹部腫瘤(赤で囲った部分)のCTスキャン。癌はベムラフェニブに対し反応を示すが、治療6カ月後には進行(画像提供:マサチューセッツ総合病院 Dr. Keith Flaherty氏) [画像原文参照

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    滝川 俊和 訳
    須藤 智久  (国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
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