2011/11/01号◆特集記事「臓器移植患者では、さまざまな癌の発症リスクが増加」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/11/01号◆特集記事「臓器移植患者では、さまざまな癌の発症リスクが増加」

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2011/11/01号◆特集記事「臓器移植患者では、さまざまな癌の発症リスクが増加」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年11月01日号(Volume 8 / Number 21)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

臓器移植患者では、さまざまな癌の発症リスクが増加

腎臓、肺、心臓などの固形臓器移植を受けた患者では、一般人口に比べて癌の発症リスクが約2倍であり、そのリスクは多様な癌種にわたるとする研究報告が、11月1日付 JAMA誌に掲載された。

医師らは、臓器移植が始まった当初から、この人命を救うことも多い手術の合併症として癌が起こり得ることはわかっていた。今回の試験は、米国の固形臓器移植患者の大規模集団において、癌リスク(あまり一般的でない癌種を含む)の傾向を概説した初の試験である。

「癌のリスクは、非常にさまざまな癌種で高まります」と、NCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)に所属する試験責任医師Dr. Eric Engels氏は述べる。「今回の試験では、リスクが高まる癌の範囲が明らかになりました。これによって、なぜそういうことが起こり得るかを考える一助となるでしょう」。

Engels氏らは、176,000人近くの移植患者を対象としたTransplant Cancer Match Studyにおいて、32の癌種でリスクが増加することを発見した。

臓器移植患者で癌リスクが増加する大半の原因は、ドナーの臓器を拒絶する免疫機能を抑えるために用いる薬剤にある。免疫機能の抑制はある種の癌、特にウイルスなどの感染病原体によって引き起こされる癌のリスクを高めてしまう。

最近実施された試験によれば、EBウイルスが引き起こす非ホジキンリンパ腫が最も発症頻度が高く、臓器移植患者のリスクは一般人口と比較して、大幅に増加した。また、感染症との関連が確立されていない癌(メラノーマ、口唇癌および甲状腺癌など)についてもリスクが増加することがわかった。肺癌、腎臓癌および肝臓癌も一般人口と比べて、発症頻度が高かった。

この試験結果は、癌の予防に免疫システムが重要な役割を果たしていることを裏づけている、とオーストラリアにあるニュー・サウスウェールズ大学のDr. Claire Vajdic氏は指摘する。同氏は、本試験には関わっていないものの、臓器移植と癌に関する研究に携わっている。

「本研究結果から、この集団では、極めて幅広い種の固形癌および血液癌のリスクが高まることが非常に明確に示されました」と、同氏は電子メールに書いた。「このハイリスク集団における癌予防対策は、極めて重要なことです」。

移植患者の癌リスクについて理解を深めれば、悪性腫瘍の発症に関わる免疫機能、感染症およびその他の要因の役割を解明する手助けになるのではと、試験の著者らは指摘する。また、臓器移植の安全性を高めるための方法が明らかになる可能性があるとも述べた。

Engels氏らは、U.S. Scientific Registry of Transplant Recipients(米国移植レシピアントの科学的登録)(1987〜2008年)および13の州と地域の癌登録所に登録された固形臓器移植患者のデータを分析した。過去に実施された試験の大半は、あまり一般的でない癌に対するリスク・プロファイルを明らかにするには、規模が小さすぎるものであった。

「この試験結果にはとても興奮しています」と、保健資源事業局内移植部門の医長を務めるDr. James Bowman氏は述べている。「現在まで、こうしたあまり一般的でない癌に対して、信頼できる数値を得る方法がなかったのです」。

Bowman氏によれば、癌リスクに関する情報は、ひいては一般開業医が、臓器移植を受けた患者の潜在的な癌リスクに関して「警戒をやめない」ための一助となる可能性がある。

本試験によって、一般的な癌は移植後6カ月以内に発症する確率が高いことが明らかになったとVajdic氏は言う。しかし、これらの確率は、手術や免疫システムによって発症した癌ではなく、患者自身の臓器に以前から存在していたが、移植時には発見されていなかった癌が含まれた数字かもしれないとも同氏は忠告した。

時折ニュースで、腫瘍の診断が未確定であるドナーから臓器提供を受けた後に、同じ部位に癌を発症した可能性があるという例が報道されている。しかし、Engels氏は、今回の試験から、この種の報道内容は、たとえあるとしても、おそらく非常に稀有な事例にすぎないのではないかとしている。

今回の試験で説明がつかないのは、腎臓以外の臓器提供を受けた患者で腎臓癌のリスクが増加したことである。英国の試験責任医師らも最近、同様の結果が得られたことを報告している。

「この件に関する解釈は不明ですが、こうした結果は、なぜ移植患者で癌が発症するのかについて、試験責任医師らに新たな疑問を投げかけているのかもしれません」とEngels氏は述べた。「癌リスクを高めているのは単に免疫機能の抑制だけはなく、他の要因も関わっているように思います」。

Dr.Israel Penn氏が移植患者における癌の発症を初めて報告してから40年以上が経った。臓器移植のパイオニアとして、氏は国家登録を開始したことで移植患者における癌リスクの研究を促進し、近年実施されている試験の土台を作ってきた。

「臓器移植は、現代医学が起こした奇跡の一つであり、これは臓器不全のある患者にとって寿命が延びることを意味します」と、Engels氏は述べる。「われわれは、こうした患者が抱える癌の重荷をどうすれば最小限に抑えられるのかを知るため、研究を続けていくのです」。
—Edward R. Winstead

 

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濱田 希  訳
大渕 俊朗 (呼吸器外科/福岡大学医学部) 監修
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