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2007/05/01号◆スポットライト「膵臓腫瘍に関する研究からマイクロRNAサインが明らかになる」

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2007/05/01号◆スポットライト「膵臓腫瘍に関する研究からマイクロRNAサインが明らかになる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年5月1日号(Volume 4 / Number 16)
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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

膵臓腫瘍に関する研究からマイクロRNAサインが明らかになる

悲惨な疾患に対する新しい取り組みとして、研究者らは膵臓腫瘍に対する分子サイン(signature)を研究してきた。将来、今回の研究成果はこの致死的な癌の診断および治療において役立つであろう。

これまでに、マイクロRNA(遺伝子の活性化を制御する短いRNA分子)の活性化についてプロファイリングが行われてきた。これらの短い遺伝物質は、癌に関連するものも含め、重要な生物学的プロセスを制御すると考えられる。マイクロRNAサインは、種々の癌について開発され、腫瘍を分類するために実験的に使用されてきた。

オハイオ州立大学(OSU)のCarlo Croce医師を始めとする同研究者らは、膵臓腫瘍にてマイクロRNAをプロファイリングすることで医師や患者にとって有益な情報が得られるか否かを検討するため、一連の実験を実施した。結果は肯定的であったが、予備的なものであった。

同研究者らは、90%の症例にて膵臓癌を正常組織から判別可能なマイクロRNA活性の明確なパターンを特定した。さらに、一部のマイクロRNAは、生存期間が24ヵ月未満の患者よりも24ヵ月以上の患者にて多く認められた。

膵臓癌は、他の組織に転移した後に診断されることが多く、多くの患者は診断後1年以内に死亡する。

同研究者らは、Journal of the American Medical Association (JAMA)誌に本日付けで公表されたこの結果について、前向きな試験にて検証する必要があると警告している。しかし、本結果は、すべてではなくとも多くの癌においてマイクロRNAがある役割を担っており、診断や治療にも利用できることを示す大きな証明である。

代表著者であるOSUのMark Bloomston医師は、「今回は、膵臓癌におけるマイクロRNAの役割を理解しようとする上での第一段階である。しかし、本試験から、マイクロRNAが膵臓癌にて重要なものであることも明らかになった」と述べている。

マイクロRNAの報告はニュースとして伝えられた。今週号のScience誌に掲載された3つの研究では、あるマイクロRNAを欠損させるよう遺伝子操作した結果、健康上に重大な影響がもたらされたマウスについて記述している。心不全で死亡したマウスや、免疫力が低下したために感染を阻止できなくなったマウスもいる。

Croce医師は多くの癌についてプロファイリングを行ってきたが、「正常な発達や分化において、マイクロRNAが重要であることは明らかである。さらに、マイクロRNAの脱制御が癌の原因になり得る」と述べている。

種々の腫瘍にて、脱制御化したマイクロRNAが認められている。例えばmir155があるが、これはScience誌に掲載された2つの試験の焦点となっており、いくつかの膵臓癌で変異が確認されている。

マイクロRNAの多様な生物学的機能については、理解され始めたばかりであるが、マイクロRNAの欠損と癌については、十分に立証されている。あるマイクロRNAは、癌を正常に抑制する遺伝子や癌を引き起こす遺伝子(癌遺伝子)を制御する。

Bloomston医師は、「膵臓癌におけるマイクロRNAに対する希望としては、医師が分子プロファイリングを用いて、手術や積極的治療が最も有益となる可能性の高い患者を特定できるようになることである」と述べている。

もう1つの利用方法は、早期発見である。膵臓癌の家族歴が多くある人々など本疾患の高リスク患者を対象としてマイクロRNAをプロファイリングし、膵臓の新規病変部位および前癌状態(慢性膵炎など)をモニタリングする。

JAMAの付随論評では、本試験から臨床腫瘍学における未来の明るい兆しがうかがえると述べられている。

トーマス・ジェファーソン大学で生物学的マーカーおよび癌を研究している共著者のScott Waldman医師は「この結果は、悲惨な疾患における診断および治療に対する非常に有望な素晴らしい発見である」と述べている。

しかし、同医師はOSUの研究者らと同様に、膵臓腫瘍におけるマイクロRNAフィンガープリントの発見は、翻訳およびバリデーションという長いプロセスの初期段階に過ぎないと強調している。

Waldman医師は「近道などないと理解することは、重要である」と述べ、癌に対する有望なバイオマーカーの研究は途中で中止されるものも多いと記している。

少なくとも、以前に行われた1つの試験は今回の新しい所見を裏付けるものである。1月にはOSUの別のグループが膵臓腫瘍に対する分子サインについてInternational Journal of Cancer誌に記載している。2つのOSUグループは別々に研究をしており、異なる技術および患者サンプルを用いたが、同じような結論に至った。

試験責任者であるTom Schmittgen医師は「われわれが重要なものとして同定したマイクロRNAの多くは、彼らのリストにも挙げられていた」と述べている。同医師は、オクラホマ大学健康科学センターの研究者らと共同研究している。

さらには「あなた方の結果において、われわれの結果が再現されたことについて、非常に心強く思う」と付け加えている。現在、同医師の研究所は、診断の手段および癌細胞のマイクロRNAを阻害する方法について、Croce医師らと共に研究している。

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斉藤 芳子 訳
大藪 友利子(生物工学)監修
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