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2007/03/20号◆癌研究ハイライト

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2007/03/20号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年03月20日号(Volume 4 / Number 12)
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◇◆◇癌研究ハイライト ◇◆◇

マウスにおける転移の位置を正確に特定する新規の分子イメージング化合物

研究者らは、癌細胞で代謝された場合のみ蛍光を発する新規の画像診断用化合物を創製した。この化合物を使用することにより科学者は、卵巣癌マウスの腹膜、すなわち腹壁を覆う組織にできたごく小さな腫瘍の92%を画像にて可視することができるようになった。この結果は、Cancer Research誌3月15日号で発表された。

本チームは、NCI癌研究センター1(CCR)分子イメージングプログラムのHisataka Kobayashi医師に率いられ、アビジンというタンパク質から成る化合物を創製した。アビジンは、腹膜へ転移した癌細胞によくみられるタンパク質で、これと蛍光発色化合物ローダミンXの3分子とが結合する。この複合体、Av‐3ROXは、癌細胞の表面と結合するとこれに取り込まれ、続いてリソソームで分解される。リソソームの酵素が分子をより小さく分解するとローダミンXから蛍光が放出され、画像診断法を用いて癌細胞を検出できるようになる。

Av-3ROXが腫瘍細胞内に特異的に取り込まれたことを確認するため、研究者らは赤色蛍光タンパク質(RFP)に関する遺伝子を保有する細胞を用いて、マウスに腫瘍および腹膜転移を誘発した。研究者らは、Av-3ROXをマウスの腹腔内へ注入してAv-3ROXとRFPの両方の蛍光画像を撮影し、両化合物を用いて特定した転移数を比較した。医師らによれば、Av3-ROXの感度は92%、癌細胞に対する特異度は98%であった。

ヒトではAv-3ROXが免疫システム反応を引き起こす恐れがあるため、研究者らは、アビジンの結合部位(癌細胞を認識する部分)をヒトの血清アルブミンに結びつける第2世代の化合物について目下研究しているところである。著者らは、分子イメージングに対するこのアプローチは「手術や内視鏡下手術の光学的に向上させうる方法として期待されており」、転移病変をより完璧に外科的に除去できるようになると考えている。

多くのプロテインキナーゼ遺伝子は癌と関連があった

研究者らは、プロテインキナーゼを産生する遺伝子における突然変異を分類した。プロテインキナーゼとは、他のタンパク質を調節し、特定の癌で役割を果たす酵素である。210種類のヒト癌のDNAを用いて、518個のプロテインキナーゼ遺伝子の配列を決めた。このうち約120個の遺伝子が癌発生と関連のある突然変異を保有しており、癌遺伝子として機能している可能性がある、と研究者らはNature誌3月8日号で報告した。

英国ケンブリッジWellcome Trust Sanger InstituteのAndrew Futreal医師とMichael Stratton医師らは、遺伝子ファミリーにおいて1,000を超える突然変異を同定したが、このうち癌を操縦する「ドライバー」変異はこの一部でしかない。その他は「乗客」変異であり、腫瘍に存在するものの、疾患には寄与しない可能性がある。これらの結果は、癌細胞における突然変異の大半が乗客変異である可能性を示唆している。

突然変異は、肺癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌、および腎癌で比較的よくみられ、精巣癌や乳癌ではまれである。「われわれはわずか518個の遺伝子についてしか研究しておらず、各癌種の数が限られていたことを考えるならば、ヒト癌遺伝子変異の範囲は以前予想していたよりも広いと考えられる」と研究者らは述べている。

2006年9月に発表された別の大規模配列決定試験2とともに、本試験はヒト癌における一連の突然変異について、概ね偏見の無い概略を提示している。論説は、Massachusetts General HospitalのDaniel Haber博士とJeff Settleman博士によるものである。これらの研究は「癌ゲノムにはさまざまな独特の異常がみられ、同定された突然変異のすべてが等しく関連癌の発現に寄与するのではない」ことを示唆していると著者らは述べている。

2種類の移植法を比較する試験

イタリアの臨床試験によれば、新たに多発性骨髄腫(MM)と診断された患者で、自分の幹細胞の移植(自家幹細胞移植)を受け、次に「HLA適合」兄弟姉妹から幹細胞を移植(同種幹細胞移植)された者の生存率は、自家幹細胞移植を2回受けた患者よりも優れていた。

New England Journal of Medicine誌3月15日号で発表された本試験は、新たにMMと診断された、65歳未満かつ1名以上の兄弟姉妹がいる、連続する患者162例を対象とした。血液細胞が遺伝的に同じ表面抗原、すなわちヒト白血球抗原を発現している兄弟姉妹がいる患者、いわゆるHLA適合患者に、自家-同種治療レジメンという選択肢が提供された。兄弟姉妹がHLA適合である確率は4分の1である。

両群とも同じ初回化学療法レジメンの投与を従来の用量で受け、次に骨髄機能を失わせるような高用量化学療法と自家幹細胞移植を受けた。HLA適合兄弟姉妹がいる患者は、放射線療法と兄弟姉妹の細胞を用いた同種幹細胞移植を受けた(60例)。HLA同一の兄弟姉妹がいない患者は、再度高用量化学療法と2回目の自家幹細胞移植を受けた(59例)。このうち、同種移植を受けた58例と2回の自家移植を受けた46例が治療を完了した。

同種幹細胞移植は、強力な抗腫瘍細胞作用を有することから治癒可能性が大きいと考えられているが、高い治療関連の死亡率との関連性が認められた。イタリアの試験で使用されたのと同じく、「用量強度の低い」化学療法または放射線療法を使用してから同種移植を行う併用レジメンは、移植関連死亡率を約15%まで減少させる」と、筆頭著者であるトリノ大学のBenedetto Bruno博士らは述べた。しかし、これらのレジメンが生存期間を延長させるかどうかは不明である。

本試験では、両群間に治療関連死亡率の差はほとんど認められなかった。しかし、死亡率については、全死亡率が67%改善し、無事象生存率も53%改善したことから、明らかに自家-同種移植群のほうが良好であった。

アフリカ系アメリカ人のクラス別前立腺癌死亡率

アフリカ系アメリカ人男性の前立腺癌死亡率が白人男性の2倍であるという事実は、しばしば低学歴、脅威に対する認識不足、および未確認の遺伝因子が原因であると考えられている。

実際に、オンライン版Cancer誌3月12日号で発表された試験によれば、スクリーニング、治療の選択肢、および保健行動は、いずれも「情報不足や、時にその後に生じると考えられる文化に根ざした誤解ではなく、社会経済的地位における人種格差から直接生じる障壁」により全て影響されることが示されている。

ハーバード大学医学部Center for Outcomes Research(アウトカム・リサーチセンター)のJames A. Talcott医師らは、最近前立腺癌と診断されたノースキャロライナのアフリカ系アメリカ人男性207人および白人男性348人を調査した。博士らが発見した格差は、一般には社会的地位の低さによるものであり、われわれより詳細な情報が少ない研究では見逃される可能性がある医療上の不利益となる」と著者は述べている。

例えば、研究者らは、アフリカ系アメリカ人のほうが白人よりも前立腺癌リスクやスクリーニングを受ける責任をより理解していることを見いだした。しかし、利用できる医療施設や公的もしくは民間の医療保険が少なく、融通のきかない労働環境であるため、良質な医療を受ける機会がより少ない。

アフリカ系アメリカ人の受診経験における医師への不信感も認められた。所得、教育レベル、そして社会的地位が低いために公立診療所や救急治療室を利用しがちになり、継続的な医療を受けられない可能性がある。また、主治医とも持続的な関係を結べず、定期的な検査の頻度が減り、大事な医学的な訴えに対するフォローアップが行われなくなる。これらの知見から、研究者らは、アフリカ系アメリカ人は「医師やその他の医療提供者をよく知らないため、十分な信頼関係を作れないだけである」と結論付けた。

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Oyoyo 訳

大藪友利子(生物工学)、瀬戸山 修(薬学) 監修
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