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ヒトパピローマウイルス(HPV)とがん

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ヒトパピローマウイルス(HPV)とがん

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ヒトパピローマウイルスとは何ですか?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は200種類以上あるウイルスの一群です。 その内の40種類以上の型が直接的な性的接触を通じて、感染者の皮膚や粘膜からそのパートナーの皮膚や粘膜へ容易に伝染する可能性があり、膣性交、肛門性交、および口腔性交により伝染します(1)。他の型のHPVは生殖器以外にできるいぼの原因になりますが、こうしたいぼは性感染しません。

 

性感染性HPVは以下の2種類の型に分類されます。

  • 低リスク型:がんを引き起こしませんが、生殖器、肛門、口、もしくは咽頭上に、またはその周辺に皮膚のいぼ(専門用語で尖圭コンジローマと言われます)を引き起こすことがあります。具体的には、全ての性器いぼの90%がHPV6型と11型です。HPV6型と11型は、鼻および口から肺に至る気道内において良性腫瘍が増殖する稀な疾患である再発性呼吸器乳頭腫症も引き起こします。
  • 高リスク型:がんを引き起こすことがあります。これまでに約10種類の高リスク型HPVが特定されています。このうちHPV16型と18型の2種類が、ほとんどのHPVによるがんを引き起こします(2,3)。

 

HPV感染症は米国で最も頻度の高い性感染症です。毎年、性器HPV感染症が新たに約1,400万症例発生しています(4)。実際、性交渉経験がある男性の90%以上と性交渉経験がある女性の80%以上が、生涯のある時点で1種類以上のHPVに感染すると米国疾病予防管理センター(CDC)は推定しています(5)。こうしたHPV感染の約半数は高リスク型HPV感染です(6)。

 

ほとんどの高リスク型HPV感染は、何の症状も発現せずに1~2年以内に消失し、がんを引き起こしません。しかし、一部のHPVは長期間持続感染することがあります。高リスク型HPVの持続感染により細胞が変化することがあり、また未治療だとがんになることがあります。

 

どのようながんがHPVにより引き起こされますか?

高リスク型HPVは以下の数種類のがんを引き起こします。

 

  • 子宮頸がん:とんど全ての子宮頸がんがHPVによるもので、全症例のうち約70%がHPV16型と18型の2種類です(7,8)。
  • 肛門がん: 肛門がんの約95%がHPVにより引き起こされます。そのほとんどがHPV16型により引き起こされます。
  • 中咽頭がん(軟口蓋、舌根、および扁桃を含む咽喉中間部のがん): 中咽頭がんの約70%がHPVにより引き起こされます。米国では、中咽頭がんと診断されたもののうち半数以上がHPV16型に関係しています(9)。
  • 希少がん:HPVは膣がんの約65%、外陰がんの約50%、および陰茎がんの約35%を引き起こします(10)。 こうしたがんのほとんどがHPV16型によるものです。

 

高リスク型HPVは全世界で全てのがんの約5%を引き起こします(11)。米国では、女性のがん症例全ての約3%、男性のがん症例全ての約2%が高リスク型HPVによるものです(12)。

 

どのような人がHPVに感染しますか?

性交渉経験がある(すなわち、膣性交、肛門性交、または口腔性交を含む皮膚同士が接触する性行為をしたことがある)人は誰でもHPVに感染する可能性があります。HPVはパートナー同士の間で性行為を介して容易に伝播します。性的パートナーが多数いる人や、あるいは性的パートナーが多数いた人と性交している人ではHPV感染がより起こりやすくなります。HPV感染はよく起こることなので、ほとんどの人は初めての性交の直後にHPVに感染します(13,14)。性的パートナーが1人だけの人でもHPVに感染する可能性があります。

 

何年も前にたまたまHPV感染者と一度だけ性交をし、その後何の症状も出ていないという人でも、HPVに感染している可能性があります。

 

HPV感染を予防することはできますか?

性交渉経験がない人は、性器HPV感染症を発症することはほとんどありません。また、性交前のHPVワクチン接種により、そのワクチンが標的とする型のHPVによる感染リスクが減少する可能性があります。

 

米国食品医薬品局(FDA)は HPV感染予防ワクチンであるガーダシル、ガーダシル9、およびサーバリックスの3種類を承認しています。こうしたワクチンは新たなHPV感染に対して強い防御効果を示しますが、HPVの感染が確立した場合やHPVによる疾患の治療には効果がありません(15,16)。

 

正しくかつ常にコンドームを使用することで、性的パートナー間のHPV感染が減少しますが、余り使用しないと感染は減少しません(8)。しかし、コンドームで覆われていない部分がHPVに感染する可能性があるため(7)、コンドームはHPV感染に対して完全な防御効果を示す可能性は低いです。

 

HPV感染を検出することはできますか?

細胞標本におけるウイルス由来DNAまたはRNAの有無を調べる検査を実施することで、HPV感染を検出することはできます。

 

現在FDA により数種のHPV検査が、以下の子宮頸がん検診の適応3例に対して承認されています。それは、パップテストの結果に異常が認められるらしい女性の追跡検査、30歳を超える女性を対象とする子宮頸がん検診+パップテスト、25歳以上の女性を対象とする初回一次子宮頸がん検診としての単独実施に対してです。

 

最も一般的なHPV検査はHPV群内で数種の高リスク型HPV由来DNAを検出しますが、現存する特定の型を同定することはできません。さらに他の検査は、HPV関連がんの大部分を引き起こすHPV16型と18型の2種類由来のDNAまたはRNAの有無を特定します。異常な細胞の変化が認められる前、また細胞の変化に対する治療が必要になる前に、こうした検査はHPV感染を検出することができます。

 

男性におけるHPV感染を検出する検査は存在しますが、FDAに承認されていません。パップテストと同様に、肛門、外陰、膣、陰茎、または中咽頭の組織におけるHPV感染が引き起こす細胞の変化の検出を目的とする検査も現在は推奨されていません。とはいえ、こうした検査は現在研究中の分野です。

 

HPV感染者の治療選択肢にはどのようなものがありますか?

現時点では、異常な細胞の変化と関連しないHPVの持続感染に対する薬物療法は存在しません。しかし、HPV感染由来性器いぼ、良性気道腫瘍、子宮頸部の前がん病変、およびがんは治療することができます。

 

一般的に使用されている子宮頸部の前がん病変の治療法には、凍結手術(組織を死滅させる凍結術)、ループ型電気メス切除術(loop electrosurgical excision procedure:LEEP、高熱のループ状の電極を用いる子宮頸部組織の切除術)、外科的円錐切除術(外科用メス、レーザー、またはその両者を使用して、子宮頸部と子宮頸管から組織片を円錐状に切除する術式)、およびレーザー蒸散円錐切除術(子宮頸部組織を死滅させるレーザーの使用)が含まれます。

 

HPV由来の他の良性気道腫瘍および前がん病変(膣、外陰部、陰茎、および肛門の病変)、ならびに性器いぼの治療法には、局所用化学物質もしくは薬剤、切除術、凍結手術、電気外科手術、およびレーザー外科手術が含まれます。さまざまな治療法が、肛門の前がん病変の治療がヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の肛門がんリスクを減少させるかどうかを確認するランダム化対照試験を含む臨床試験(英語)で、検証されています。性器いぼの治療に関する詳細は、米国疾病予防管理センター(CDC)性感染症治療ガイドライン2010(英語)に記載されています。

 

がんを発症するHPV感染者は通常、腫瘍の種類と病期に応じて、HPV非関連腫瘍を有する患者と同様の治療を受けます。ただし、HPV陽性中咽頭がんと診断された人はHPV陰性中咽頭がん患者と異なる治療を受けることがあります。最近の研究で、HPV陽性中咽頭腫瘍を有する患者の予後は良好で、低強度の治療でも良好である可能性があることが示されています。進行中の臨床試験がこうした疑問を調査しているところです(17,18)。

 

高リスク型HPVはどのようにしてがんを引き起こしますか?

HPVは上皮細胞に感染します。上皮細胞は層状になり、皮膚、咽頭、生殖管、および肛門を含む人体の内面と外面を覆います。

 

HPVは上皮細胞に侵入すると、符号化しているタンパク質を作り始めます。高リスク型HPVが作る2種類のタンパク質(E6とE7)は通常は過増殖を抑制する細胞機能に干渉し、細胞が無秩序に増殖し、細胞死を回避するよう促します。

 

多くの場合、HPV感染細胞は免疫系に認識され、排除されます。しかし、時には、HPV感染細胞は排除されず、持続感染が生じることがあります。持続感染細胞は増殖し続けるにつれて、さらに異常な細胞増殖を促す細胞内遺伝子変異を発生させ、細胞の前がん病変や最終的にはがん性腫瘍を引き起こすことがあります。

 

他の因子が、高リスク型HPV感染が持続し、がんを引き起こす可能性があるリスクを増加させることがあります(19)。以下のものが含まれます。

  • 喫煙や噛み煙草(中咽頭がんリスクが増加するため)
  • 免疫系の機能低下
  • 多子(子宮頸がんリスクが増加するため)
  • 経口避妊薬の長期使用(子宮頸がんリスクが増加するため)
  • 不十分な口腔衛生(中咽頭がんリスクが増加するため)
  • 慢性炎症

 

最初のHPV感染から腫瘍形成まで10~30年を要するとされています。しかし、高度異常細胞が子宮頸部に認められる(頸部上皮内腫瘍[CIN3]という疾患)時でさえ、必ずしもがんを引き起こすとは限りません。CIN3病変が浸潤性子宮頸がんに進行する比率は50%以下と推定されています(20)。

 

どうすればHPVに関してより詳しく知ることができますか?

以下の米国連邦政府関係機関がHPVに関してより詳しい情報を提供しています。

機関:米国疾病予防管理センター

住所: 1600 Clifton Road Atlanta, GA 30333

電話番号:1–800–CDC–INFO (1–800–232–4636) 午前8:00~午後8:00(東部標準時)、月~金曜日

フリーダイヤル:1–888–232–6348

ウェブサイト:http://www.cdc.gov/std

http://www.cdc.gov/hpv/

電子メール:cdcinfo@cdc.gov

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)|知っていましたか?

米国国立がん研究所(NCI)によるこの動画はがん調査における主要な話題を強調することで、米国内のHPVの動向を調べています。

 

主要参考文献

  1. American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2014Exit Disclaimer. Atlanta: American Cancer Society; 2014. Accessed February 25, 2014.
  2. Lowy DR, Schiller JT. Reducing HPV-associated cancer globally. Cancer Prevention Research (Philadelphia) 2012;5(1):18-23. [PubMed Abstract]
  3. Centers for Disease Control and Prevention. Human papillomavirus-associated cancers—United States, 2004-2008. Morbidity and Mortality Weekly Report 2012; 61(15):258-261. [PubMed Abstract]
  4. Satterwhite CL, Torrone E, Meites E, et al. Sexually transmitted infections among US women and men: Prevalence and incidence estimates, 2008. Sexually Transmitted Diseases 2013; 40(3):187-193. [PubMed Abstract]
  5. Chesson HW, Dunne EF, Hariri S, Markowitz LE. The estimated lifetime probability of acquiring human papillomavirus in the United States. Sexually Transmitted Diseases2014; 41(11):660-664. [PubMed Abstract]
  6. Hariri S, Unger ER, Sternberg M, et al. Prevalence of genital human papillomavirus among females in the United States, the National Health and Nutrition Examination Survey, 2003–2006. Journal of Infectious Diseases 2011; 204(4):566–573. [PubMed Abstract]
  7. Division of STD Prevention (1999). Prevention of genital HPV infection and sequelae: report of an external consultants’ meeting. Atlanta, GA: Centers for Disease Control and Prevention. Retrieved December 27, 2011.
  8. Winer RL, Hughes JP, Feng Q, et al. Condom use and the risk of genital human papillomavirus infection in young women. New England Journal of Medicine 2006; 354(25):2645–2654. [PubMed Abstract]
  9. Chaturvedi AK, Engels EA, Pfeiffer RM, et al. Human papillomavirus and rising oropharyngeal cancer incidence in the United States. Journal of Clinical Oncology 2011; 29(32):4294–4301. [PubMed Abstract]
  10. Gillison ML, Chaturvedi AK, Lowy DR. HPV prophylactic vaccines and the potential prevention of noncervical cancers in both men and women. Cancer 2008; 113(10 Suppl):3036-3046. [PubMed Abstract]
  11. de Martel C, Ferlay J, Franceschi S, et al. Global burden of cancers attributable to infections in 2008: A review and synthetic analysis. Lancet Oncology 2012; 13(6):607-615. [PubMed Abstract]
  12. Jemal A, Simard EP, Dorell C, et al. Annual Report to the Nation on the Status of Cancer, 1975-2009, featuring the burden and trends in human papillomavirus (HPV)-associated cancers and HPV vaccination coverage levels. Journal of the National Cancer Institute 2013; 105(3):175-201. [PubMed Abstract]
  13. Collins S, Mazloomzadeh S, Winter H, et al. High incidence of cervical human papillomavirus infection in women during their first sexual relationship. British Journal of Obstetrics and Gynaecology 2002; 109(1):96-98. [PubMed Abstract]
  14. Winer RL, Feng Q, Hughes JP, et al. Risk of female human papillomavirus acquisition associated with first male sex partner. Journal of Infectious Diseases 2008; 197(2):279-282. [PubMed Abstract]
  15. Hildesheim A, Herrero R, Wacholder S, et al. Effect of human papillomavirus 16/18 L1 viruslike particle vaccine among young women with preexisting infection: A randomized trial. JAMA 2007; 298(7):743–753. [PubMed Abstract]
  16. Schiller JT, Castellsague X, Garland SM. A review of clinical trials of human papillomavirus prophylactic vaccines. Vaccine 2012; 30 Suppl 5:F123-138. [PubMed Abstract]
  17. Mirghani H, Amen F, Blanchard P, et al. Treatment de-escalation in HPV-positive oropharyngeal carcinoma: Ongoing trials, critical issues and perspectives.International Journal of Cancer 2015;136(7):1494-503 [PubMed Abstract]
  18. Urban D, Corry J, Rischin D. What is the best treatment for patients with human papillomavirus-positive and -negative oropharyngeal cancer? Cancer 2014; 120(10):1462-1470. [PubMed Abstract]
  19. Shi R, Devarakonda S, Liu L, Taylor H, Mills G. Factors associated with genital human papillomavirus infection among adult females in the United States, NHANES 2007-2010. Biomed Central Research Notes 2014; 7:544. [PubMed Abstract]
  20. McCredie MR, Sharples KJ, Paul C, et al. Natural history of cervical neoplasia and risk of invasive cancer in women with cervical intraepithelial neoplasia 3: A retrospective cohort study. Lancet Oncology 2008; 9(5):425-434. [PubMed Abstract]

 

原文掲載日

翻訳渡邊 岳

監修高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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