Apatinibは進行肝臓がんの中国人患者の生存期間を延長

Apatinib[アパチニブ]は前治療の後に進行した肝細胞がんの患者の全生存期間と無増悪生存期間の両方を延長することが、中国で新たに行われたランダム化比較試験により明らかとなった。

また、進行までの期間や客観的奏効を得た患者の割合など、すべての副次的評価項目においてもアパチニブがプラセボより優位性を示すことが、Lancet Gastroenterology and Hepatology誌で報告された。

「一次治療の後に進行した肝細胞がんのアジア人患者には、その後の治療の選択肢がほとんどありません」と、秦叔逵(Shukui Qin)医師(南京中医薬大学附属八一医院がんセンター)らは著している。

「今回の試験において、患者はすべて日本以外のアジア諸国出身であり、彼らのベースライン時における進行肝細胞がんの特性が複雑かつ悪性であることを考えると、本試験で得られた知見は有望である」と同医師らは結論づけている。

高度選択的チロシンキナーゼ阻害薬アパチニブ(別名rivoceranib[リボセラニブ])は、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2)を標的とし血管新生を阻害する。現在のところ中国でのみ市販が承認されている。

研究チームは、進行した肝細胞がんの患者393人(年齢中央値51歳、男性86%)を多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第3相比較試験に登録した。そのうち340人はB型肝炎ウイルスに感染していた。参加者はすべて、全身化学療法または分子標的療法の少なくとも1種類の薬剤に対して不応性または不耐性を示していた。

参加者は、アパチニブ(1日750 mg)投与群またはプラセボ投与群に2:1で無作為に割り付けられ、28日周期で投与された。全生存期間中央値はアパチニブによる積極的な治療を受けた群で8.7カ月、プラセボ投与群で6.8カ月であった(p=0.048)。一方、無増悪生存期間においても、アパチニブ投与群4.5カ月、プラセボ投与群1.9カ月と有意差がみられた。

著者らは、前治療でソラフェ二ブの投与を受けていない59%の患者では「ソラフェ二ブの投与を受けた患者よりもアパチニブの効果が高い傾向が見られ、これはチロシンキナーゼ阻害剤の中で交差抵抗性の可能性があることで説明できるかもしれない」と述べている。

治療関連有害事象はアパチニブ投与群の97%、プラセボ投与群の71%の患者に発現した。重篤な治療関連有害事象の比率はそれぞれ17%、4%であった。

治療関連有害事象により投与が中断された患者の割合は、アパチニブ投与群で60%、プラセボ投与群で8%であった。このような有害事象により投与中止に至った患者は、アパチニブ投与群では12%であったのに対し、プラセボ投与群では皆無であった。

この研究がデザイン、開始された時点で、研究者たちは「医薬品規制当局に承認されている進行肝細胞がんに対する標準二次治療というものは、世界的にみてもまったくなかった」と述べている。

しかし、本試験の結果を受けてアパチニブは、進行肝細胞がんの患者に対する二次治療として中国の国家薬品監督管理局から2020年末に承認されたと、著者らは述べている。

この試験は、アパチニブを製造している江蘇恒瑞医薬(Jiangsu Hengrui Medicine)から資金援助を受けた。著者のうち3人は同社の社員である。

出典:Lancet Gastroenterology and Hepatology誌 オンライン版 2021年5月7日

翻訳担当者  白濱紀子

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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