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AI二重染色検査により、子宮頸がん検診の精度と効率が向上

【NCIプレスリリース】
ヒトパピローマウイルス(HPV)検査による一次検診で陽性と診断された女性の追跡検査として、標準検査法である子宮頸部細胞診(パップテスト)と比較して、コンピューター・アルゴリズムが子宮頸がん検診の精度と効率を向上させたことが新たな研究で示された。この新たな手法は人工知能(AI)を使用して、二重染色の評価を自動化したもので、臨床所見に明確な意味を有するものである。

本研究結果は、Journal of the National Cancer Institute誌2020年6月25日号に掲載された。このアルゴリズムを、米国国立がん研究所(NCI、米国国立衛生研究所の一機関)の研究者が他複数機関の研究者と協力して開発し、本研究を実施した。

「HPV検査結果が陽性の場合の追跡調査としての子宮頸がん検診の完全自動化法を示すことができ、かつ、本研究でこの方法が標準検査法よりも優れた結果が得られたことに心躍ります。この結果に基づいて、この完全自動化法がより多くの前がん病変を発見し、偽陽性を減らすことで、子宮頸がん検診の効率を高める可能性があります。また、HPV陽性女性に対する不要な処置を大幅に削減する可能性があります」とNicolas Wentzensen医学博士(NCIがん疫学・遺伝学部門、本研究を主導)は述べた。

近年、臨床医はデジタル画像処理と機械学習の進歩を利用して子宮頸がん検診を改善することを望んできた。HPV検査陰性女性はその後の10年間は、子宮頸がんになるリスクが低い。また、HPV検査陽性を引き起こすHPVの子宮頸部感染でさえ、前がん病変に至ることはほとんどない。課題は、HPV検査結果が陽性の女性の中で、どの女性の子宮頸部細胞が前がん病変に至る可能性が最も高いのか、その結果、どの女性の子宮頸部をコルポスコピーで観察し生検用検体を採取すべきか、または、どの女性が直ちに治療が必要か、の特定である。

現在、HPV検査結果が陽性の女性は、コルポスコピー、生検、または治療の必要性を評価するために、HPV検査またはパップテスト(子宮頸部細胞診 *日本の現行の子宮頸がん検診)を再度受けることがある。パップテストは、特別な訓練を受けた臨床検査技師(細胞検査士) が染色されたスライドを評価して異常細胞を探すもので、がんに進行する前の前がん病変を見つけ出すために行われる。しかし、この検査は理想的なものではない。実際、パップテストは時間を要し、低感度で、偽陽性所見が出やすい。

二重染色検査は、HPV検査結果が陽性の女性で子宮頸部に前がん病変が出現する可能性をより正確に予測する方法として登場した。この検査では、子宮頸部検体中にp16とKi-67という2種類のタンパク質がないかを評価する。過去の2つの研究で、Wentzensen氏らは、二重染色検査結果が陰性の女性はその後5年間で子宮頸部前がん病変の発症リスクが低く、パップテストと比較して二重染色検査結果が陽性となる女性が少ないことを明らかにした。2020年3月、手動二重染色細胞診検査は、一次HPV検診結果が陽性の女性を対象に、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。

手動二重染色細胞診検査には、細胞検査士がスライドを観て結果を確定する必要がある、という主観的要素が含まれる。今回の新たな研究では、研究者らは完全自動二重染色細胞診検査が手動検査と同等、または、それ以上の性能を発揮できるかどうかを確認したいと考えていた。Niels Grabe博士とBernd Lahrmann博士(医療システム生物学に関するシュタインバイス技術移転センター、およびハイデルベルク大学と提携)との共同研究で、ディープ・ラーニングによる訓練後、子宮頸部細胞にp16とKi-67の両者が染色されているかどうかを確定できるスライド全体の画像処理プラットフォームが開発された。カイザー・パーマネンテ北カリフォルニアとオクラホマ大学のHPV陽性の子宮頸部および肛門の前がん病変に関する3件の疫学調査の1つに参加した合計4,253人由来の検体を用いて、この検査法を従来のパップテストおよび手動二重染色検査の両者と比較した。

AIを用いた二重染色検査はパップテストと手動二重染色検査の両者と比較して陽性率が低く、パップテストと比較して感度(前がん病変がある患者を正確に識別する能力)が高く、特異度(前がん病変が無い患者を正確に識別する能力)が大幅に高いことが分かった。パップテストと比較して、AIを用いた二重染色検査では、その後のコルポスコピーでの確認が約3分の1減少した(約42%対60%)。この検査法は確立しており、肛門細胞診でも同等の性能を示した。

要するに、AIを用いた二重染色検査は現行の標準検査法であるパップテストの性能を凌ぎ、偽陽性結果の数を減少させ、不必要なコルポスコピー検査での確認を大幅に減少させた。この結果は、この検査法が肛門がん検診の選択肢としてさらに評価されることも支持するものである。この検査法は臨床応用が可能であることが明白で、クラウドベースの実装により、全世界で利用可能であると研究者は指摘する。このプラットフォームの他の応用例としては、補助診断、セカンド・オピニオン、品質管理などがある。

手動二重染色検査は、HPV検査結果が陽性の女性の検診用にFDAによる承認を得たばかりであるため、その使用はまだ始まったばかりである。AIを用いた二重染色検査を用いてHPV陽性の女性の検診ができるようにするためには、FDAによる追加承認が必要となる。この結果はデジタル病理学とディープ・ラーニングを臨床診療に導入するための重要な実例として役立ち、かつ、この検査法は子宮頸がん検診を大幅に改善し、毎年何百万人も発生するHPV陽性の女性に影響を及ぼすと言われている。

参考文献

Wentzensen N, Lahrmann B, Clarke MA, et al. Accuracy and Efficiency of Deep-Learning-Based Automation of Dual Stain Cytology in Cervical Cancer Screening. J Natl Cancer Inst. June 25, 2020. doi: 10.1093/jnci/djaa066

翻訳渡邊 岳

監修喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

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