放射線治療を受けた小児癌経験者は、成人してから心疾患による死亡の危険性が高い

キャンサーコンサルタンツ
2010年3月

小児癌の治療において心臓部への放射線治療の線量がわずか5Gyであっても、後年になっての心臓死が有意に増加することが、フランスと英国の研究者らにより報告された。本研究の詳細は、2010年3月10日発行のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された[1]。

小児癌の経験者は多くの場合、癌自体とその治療のため、長期の晩期合併症の危険性にさらされている。これには後年における二次癌の発症が含まれ、多くが治療での放射線曝露によるものである。癌治療で生存率が改善されるにつれ、研究者らは他の長期間に渡る副作用として、心臓に与える治療の影響を評価することに注目している。小児癌経験者が治療後数年間で心疾患を発症するリスク因子には、女性、累積投与量の多いアントラサイクリン系抗癌剤治療、心臓部への放射線暴露があることが、これまでの研究により確認されている。これらリスク因子は小児・成人ホジキン病の経験者で最も高頻度に認められる。

本研究では、15歳までに癌(白血病以外)と診断された後、少なくとも5年間生存した4,122人の小児癌経験者について評価した。参加者らを現在まで平均27年間追跡調査した。放射線治療を受けた2,711人に対しては、医療記録から心臓部への放射線量を推定した。

その結果から、小児癌経験者は一般集団より心疾患で死亡する可能性が5倍以上高いことが示された。また、心疾患による死亡リスクが次の患者では著しく高いことも報告された。

  • 心臓部へ照射した放射線量が平均5Gy以上であった患者。
  • 治療におけるアントラサイクリン系抗癌剤の累積投与量が360 mg/m2以上であった患者。

コメント:これら結果は、小児癌経験者の健康について長期に渡るモニタリングが重要であることを強調している。

参考文献:
[1] Tukenova M, Guibout C, Oberlin O, et al. Long-term overall and cardiovascular mortality following childhood cancer: The role of cancer treatment. J Clin Oncol. 28:1308–1315, 2010.


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翻訳担当者 山下 裕子

監修 北村裕太(農学/医学部生)

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