ニボルマブが再発、転移した頭頸部扁平上皮がん患者の生存期間を延長

免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)による治療は、試験責任医師が選択した単剤化学療法と比較して、プラチナベースの化学療法後に進行した再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者の生存期間を延長した。これは、米国がん学会年次総会(2016年4月16日~20日開催)で発表されたCheckMate-141第3相臨床試験の結果である。

「プラチナベースの化学療法が奏効しない再発または転移性頭頸部扁平上皮がんは、非常に速く進行し、患者の予後は極めて不良です。通常は単剤化学療法を行いますが、この患者集団の生存期間を延長する治療法はこれまでありませんでした。新しい治療選択肢が切望されています」と、オハイオ州立大学総合がんセンターArthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Institute (OSUCCC-James)の内科教授Maura L. Gillison 医学博士は語った。

「本試験は、プラチナ製剤に反応しない再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者の全生存期間が延長することを明白に示した、初のランダム化臨床試験です。われわれは、今回の結果によりニボルマブが、この患者集団に対する新たな標準治療選択肢となり、膨大なアンメットニーズ(現時点で満たされていない要望)を満たすものと期待しています」。

CheckMate-141試験は、PD-1阻害薬ニボルマブが、プラチナ製剤に反応しない再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者の全生存期間を延長するかについて調べた第3相ランダム化臨床試験であり、よく使用されるドセタキセル、メトトレキサート、セツキシマブのうち、試験責任医師が選択するいずれかの薬剤と比較検討することを目的とした。

本試験に登録した361人のうち、240人をニボルマブ群に、121人を試験責任医師が選択する単剤化学療法群に無作為に割りつけた。

218件の事象が確認された時点で実施された中間解析では、ニボルマブ群の死亡リスクが、単剤化学療法群と比較して30%低下したことが判明した。全生存期間の中央値は、ニボルマブ群が7.5カ月であったのに対し、単剤化学療法群は5.1カ月であった。12カ月の時点では、ニボルマブ群の36%が生存していたのに対し、単剤化学療法群の生存率は17%であった。

特に中咽頭(舌の付け根と扁桃腺を含む喉の奥の部位)に生じるものなど特定のタイプの頭頸部扁平上皮がんでは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連がみられたため、試験責任医師らは患者の腫瘍についてHPVの有無に関するデータも評価した。

全生存期間に対するニボルマブの効果は、HPV陽性および陰性の頭頸部扁平上皮がん患者でみられた。HPV陽性患者では、ニボルマブ群の全生存期間の中央値が9.1カ月であったのに対して、単剤化学療法群では4.4カ月であった。HPV陰性患者では、ニボルマブ群の全生存期間の中央値が7.5カ月であったのに対して、単剤化学療法群では5.8カ月であった。

ニボルマブ群における延命効果は全試験集団でみとめられた。探索的解析では、ニボルマブ群のうち、1%以上の腫瘍細胞でPD‐L1の発現がみられる患者やHPV陽性患者で、延命効果がより大きいことを示した。

「全体的に、われわれのデータは非常に胸躍るものです。本臨床試験は頭頸部扁平上皮がんが免疫療法に反応することを立証しました。これは、本疾患の患者が免疫療法によって受ける将来的な恩恵の、氷山の一角にすぎないと期待しています」とGillison医学博士は述べた。

本試験はBristol-Meyers Squibb社の資金提供を受けた。本試験におけるGillison医学博士の活動についてはOral Cancer Foundation(口腔がん協会)が部分的に資金を提供した。Gillison医学博士はこの1年間、Bristol-Meyers Squibb社、Eli Lilly社、Merck社の顧問を務めた。

翻訳担当者 有田香名美

監修 北丸綾子(分子生物学/理学博士)

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