米国のHIV陽性者でがん罹患数が上昇

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2015年2月9日

米国人HIV感染者約90万人のうち,推定約7760人が2010年に新たにがんと診断された。米国における最初の包括的な研究によると、これらのうち約半数のがん(3,920人)で、HIV感染者のがん罹患リスクが一般集団と同等と想定した場合よりも、実際の罹患数がはるかに多かった。NCIの研究者らは、米国のHIV感染がん患者数を推定し、非感染者よりも患者数の多いがんを特定したところ、非ホジキンリンパ腫(1440人増)、カポジ肉腫(910人増)、肛門癌(740人増)および肺癌(440人増)であった。EBウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヒトヘルペスウイルス8としても知られている)、およびヒトパピローマウイルスの感染は、それぞれ非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、および肛門癌の原因であった。また、習慣的な喫煙は肺癌の増加の大きな原因であった。免疫抑制もまた、がん増加の重要な原因となっている。この研究は、2011年の研究に新たな結果を追加したもので、  National Cancer Institute誌の電子版で2015年2月7日に公表された。2015年4月号に掲載される予定である。

Hilary A. Robbins医師およびEric A. Engels医師 (NCIがん疫学・遺伝学部門[DCEG] らは、これらのHIV感染者で増加しているがんに罹患するサブグループについても言及している。若年成人で増加しているがんの主なものはカポジ肉腫と非ホジキンリンパ腫であり、両者とも通常は抗HIV薬治療により予防が可能である。男性と性交渉を持つ男性では肛門癌が増加し、注射麻薬使用者では意外にも肺癌が増加していた。本研究で示されたHIV感染者のがん増加は、感染者に対するがん対策の推進が有効であることを示唆している。

原文

翻訳担当者 滝坂美咲

監修 下村昭彦(腫瘍内科、乳癌、早期開発/国立がん研究センター)

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