ボトリエントは進行性分化型 甲状腺癌の治療薬として有望である可能性

キャンサーコンサルタンツ

ボトリエント (パゾパニブ)は進行した、放射性ヨードに治療抵抗性を示す分化型甲状腺癌の治療に高い有効性を示した。これらの結果は第14回国際甲状腺学会で発表された。

甲状腺は主に身体の代謝過程に関与するホルモンを産生する、咽喉部にある腺である。一般的に甲状腺癌は治癒率の高い癌とみなされており、甲状腺癌と診断された人の5年生存率は少なくとも97%である。すべての甲状腺癌の95%近くが分化型甲状腺癌に分類される。分類は癌のタイプや特徴による。

ボトリエントは多標的チロシンキナーゼ阻害剤として知られている経口薬である。この薬剤は 血管新生(新しい血管の成長)を阻害、または遅らせ、癌の成長に必要な酸素と栄養分を欠乏させる。米国食品医薬品局(FDA)は進行性腎細胞癌(腎癌)の治療薬としてボトリエントを承認している。

従来の化学療法は、進行性分化型甲状腺癌に奏効を示さなかった。しかしながら、チロシンキナーゼは癌の進行に関係しているため、ボトリエントのようなチロシンキナーゼ阻害剤は、この型の甲状腺癌の治療に有効であると考えられてきた。

ボトリエントの進行性の放射線ヨード治療抵抗性分化型甲状腺癌に対する有効性を評価するため、研究者らは第2相多施設臨床試験を行った。データは、最大2回まで治療を受けた、測定可能病変を持つ、登録前6カ月間に癌が進行した37人の患者から収集された。患者はボトリエント800mg/日の投与を受けた。

• 1サイクル4週間のボトリエントによる療法を中央値で12サイクル実施した後に18例が部分奏効 (PR) を示した。
• 研究者らは部分奏効は66%の患者で1年間持続すると予測する。
• 無増悪生存期間は中央値で11.7カ月であった。
• 1年後の全生存率は81%であった。
• 甲状腺癌の種類ごとに病変を測定した結果、11人の濾胞癌患者のうち8例(72.7%)、11人のヒュルトレ細胞癌患者のうち5例(45.4%)、15人の乳頭癌患者のうち5例(33.3%)で部分奏効が認められた。
• 抗サイログロブリン抗体陰性(甲状腺が産生する蛋白サイログロブリンに対する抗体を持たない)患者の66.7%に、30%以上のサイログロブリン減少を認めた。
• 副作用は軽度であったが、有害作用のため、15人の患者に対し、ボトリエントの投与量を減量した。主な副作用は下痢および高血圧であった。

研究者らは、ボトリエントには 高い有効性があり、進行性分化型甲状腺癌に高い奏効性を示し、十分な忍容性があり、治療に有望であると結論した。 今後予定されている第3相臨床試験で、同じ症例の患者母集団を対象にさらに評価されることになる。

参考文献:
Bible KC, Suman VJ, Molina JR, et at. Evidence of clinical efficacy of the multi-targeted tyrosine kinase inhibitor pazopanib in rapidly progressive radioiodine-refractory metastatic differentiated thyroid cancers: results of the Phase 2 consortium study MC057H. Presented at the 14th International Thyroid Congress, Paris, France, September 11-16, 2010. Abstract OC-022.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 芝原広子

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

甲状腺がんに関連する記事

甲状腺結節が見つかることは多い:首元の検査後にすべきことの画像

甲状腺結節が見つかることは多い:首元の検査後にすべきこと

甲状腺結節は珍しくはなく、甲状腺の不規則な増殖(過形成)であり、悪性ではないことが多い。、しかし、時々頸部をチェックして、なにか心配なことがあれば医療チームに伝えるべきとされる。アラバマ大学バーミンガム校(UAB)のオニール総合がんセンター
プラルセチニブはRET遺伝子融合に対し、腫瘍部位によらない組織横断的な有用性を達成の画像

プラルセチニブはRET遺伝子融合に対し、腫瘍部位によらない組織横断的な有用性を達成

あらゆるがん種で有効な選択肢となる分子標的療法の可能性が、第1/2相試験で示唆される 高選択性RET阻害薬プラルセチニブ(販売名:GAVRETO、Blueprint Medicines Corporation社)は、腫瘍部位にかかわらず、R
米国女性に甲状腺がん診断数がなぜ急増しているかの画像

米国女性に甲状腺がん診断数がなぜ急増しているか

甲状腺がんの診断は、男性と比較して女性に多く、過去数十年の間にこの性差は大幅に拡大している。 しかし新たな研究により、この性差は表面的にみえているものとは異なることが判明した。8月30日、JAMA Internal Medicine誌に掲載
FDAが12歳以上の分化型甲状腺がんにカボザンチニブを承認の画像

FDAが12歳以上の分化型甲状腺がんにカボザンチニブを承認

2021年9月17日、米国食品医薬品局(FDA)は、VEGFR(​​血管内皮細胞増殖因子受容体)を標的とした治療後に進行した、放射性ヨウ素治療に不適応または抵抗性の局所進行性/転移性分化型甲状腺がん(DTC)の成人および12歳以上の小児患者