FDAが再発性または治療抵抗性の急性骨髄性白血病にenasidenibを承認

米国食品医薬品局(FDA)は本日、新規分子標的薬enasidenib(商品名:Idhifa)を、特定の遺伝子変異をもつ再発または治療抵抗性の急性骨髄性白血病(AML)の成人患者を対象とする治療薬として承認した。この薬剤の承認はコンパニオン診断を条件としており、AML患者のIDH2遺伝子における特定の変異を検出するためにRealTime IDH2 Assayが用いられる。

Enasidenibは、十分な治療法がないIDH2変異をもつ再発または治療抵抗性AML患者のニーズを満たす分子標的療法です」と、FDAオンコロジー・センター・オブ・エクセレンスのセンター長でFDA医薬品評価研究センター血液・腫瘍学製品室室長代理のRichard Pazdur医師は述べた。「Enasidenibを用いたところ、一部の患者では完全寛解につながり、赤血球および血小板輸血のいずれの必要性も低下しました」。

AMLは、骨髄に生じる進行の速いがんで、血流中や骨髄内で異常な白血球の数が増加する。米国国立衛生研究所国立がん研究所は、今年AMLと診断されるのは約21,380人、2017年のAMLによる死亡者数は約10,590人であると推定している。

Enasidenibはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2阻害薬で、細胞増殖を促進する数種類の酵素を阻害することによって効果を発揮する。RealTime IDH2 Assayを用いてIDH2変異が血液または骨髄検体中に検出された患者は、enasidenibによる治療に適格であると考えられる。

Enasidenibの有効性は、RealTime IDH2 Assayによって検出されたIDH2変異を有する再発または治療抵抗性AML患者199人による単群試験において検討された。この試験では、疾患の徴候がなく治療後の血球数が完全に回復した(完全寛解、CR)患者、および疾患の徴候がなく治療後の血球数が部分的に回復した(部分的な血液学的回復をともなう完全寛解、CRh)患者の割合を調べた。治療期間6カ月間以上で、患者の19%において中央値8.2カ月間のCRが、4%において中央値9.6カ月間のCRhが認められた。試験開始時にAMLが原因で赤血球または血小板輸血を必要とした157人の患者のうち34%は、enasidenibによる治療後、輸血を必要としなくなった。

Enasidenibによくみられる副作用には、悪心、嘔吐、下痢、ビリルビン(胆汁に含まれる物質)増加、および食欲減退などがある。 妊娠中または授乳中の女性は、発育中の胎児または新生児に害を及ぼす可能性があるため、enasidenibを服用すべきではない。

Enasidenibの添付文書には枠組み警告として、分化症候群として知られる有害反応が起きる可能性があり、治療しなければ致命的となる可能性があると記載されている。分化症候群の徴候および症状には、発熱、呼吸困難、急性呼吸促迫、肺の炎症(X線検査による肺浸潤像)、肺または心臓周辺の液体貯留(胸水または心嚢液貯留)、急激な体重増加、腫脹(末梢性浮腫)または肝、腎あるいは多臓器不全などがある。医師は、最初に症状を疑った時点で、症状がなくなるまで患者に副腎皮質ステロイド薬を投与し、患者を注意深く監視するべきである。

Enasidenib優先審査指定を受けた。この指定は、FDAがその薬剤が承認されれば重篤な疾患の治療、診断、または予防の安全性または有効性を有意に向上させると判断した場合に認められ、6カ月以内に申請を審査することを目標としている。Enasidenibオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けた。この指定は、希少疾病用医薬品の開発を支援および促進するためのインセンティブを提供する。

FDAIdhifaの承認をCelgene Corporation社に付与した。また、RealTime IDH2 Assayの承認をAbbott Laboratories社に付与した。

処方情報全文はこちら: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2017/209401s000lbl.pdf

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 野﨑健司(血液・腫瘍内科/大阪大学大学院医学系研究科 )

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