OncoLog 2015年5月号◆In Brief「センチネルリンパ節マッピングによりリンパ節転移を有する高リスク子宮体がんを同定」

MDアンダーソン OncoLog 2015年5月号(Volume 60 / Number 5)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

センチネルリンパ節マッピングによりリンパ節転移を有する高リスク子宮体がんを同定

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターにおいて現在実施されている試験を先行的に解析した結果から、センチネルリンパ節(SLN)マッピングにより、リンパ節転移を有する高リスク子宮体がんが正確に同定されることが示された。

高リスク子宮体がんの女性の場合、初期治療および病期分類に対する現行の標準治療は、子宮摘出術と骨盤リンパ節および傍大動脈リンパ節の完全郭清術の併用である。しかし、その手術には術中および術後合併症のリスクが伴う。SLNマッピングでは、染料を子宮頸部に注入し外科医がSLNの位置を確認、それを取り出して生検を行うことができるため、標準的な手術法よりも低侵襲性である。

「リンパ節完全郭清術を行わずに、センチネルリンパ節マッピングのみでリンパ節転移陽性患者を同定することができれば、合併症の発生率を低減できる可能性があるとともに、適切に術後療法の必要性を決定することもできます」と、婦人科腫瘍・生殖医療科准教授のPamela Soliman医師は述べた。

Soliman氏は、現行試験の研究代表医師であるが、その試験の目的は、リンパ節転移を検出するためにSLNマッピングと電子断層撮影法/コンピューター断層撮影法(PET-CT)を比較することである。この単一施設前向き試験において、高リスク、グレード3子宮体がん患者を対象に術前PET-CT検査を行い、手術中にSLNマッピングを行った後、子宮摘出術およびリンパ節完全郭清術による標準治療を実施した。

60人の評価可能な患者のうち、56人(93%)において最低1個のSLNが、また37人(62%)において両側性のSLNが同定された。病理学的検査の最終結果においてリンパ節転移を有する患者はいずれも、最低1個の陽性SLNが同定され、感度は100%であった。偽陰性率は0%であった。

「今後も同様の有望な結果を得続けることができれば、他のがんの場合と同ように、センチネルリンパ節マッピングを行うことで、子宮体がんに対する治療法全体が変化する可能性があります。その場合でも、PET-CT検査データの確認は必要です」とSoliman氏は語った。

Soliman氏らは、3月にシカゴで開催された米国婦人科腫瘍学会年次総会において研究成績を発表した。

*監修 者注
センチネルリンパ節:がんがリンパ管に入り込んだのち、最初に到達するリンパ節。逆に、ここに転移がなければ、それ以外のリンパ節には転移がない目印となることが期待されており、乳癌や悪性黒色腫では実用されている。

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

翻訳担当者 栃木和美

監修 喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

子宮がんに関連する記事

NCIミニット:子宮がんの死亡率の画像

NCIミニット:子宮がんの死亡率

米国国立がん研究所(NCI)が制作した動画に、一社)日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT/ジャムティ)が日本語字幕を付けたものです。 ◆─────────────────◆ 最新のNCI Minuteでは、NCI報道部長のJames
進行子宮内膜がんにレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用がQOL悪化までの時間を延長の画像

進行子宮内膜がんにレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用がQOL悪化までの時間を延長

治療歴のある進行子宮内膜がんに対するレンバチニブ(販売名:レンビマ)とペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)併用療法の有用性が、患者報告アウトカム(PRO)によって裏付けられた プラチナ製剤による治療後に進行した子宮内膜がん患者において、
HPVワクチンの1回接種で発がん性感染症を予防できる可能性強まるの画像

HPVワクチンの1回接種で発がん性感染症を予防できる可能性強まる

ケニアでの研究から得られた新たな結果から、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの1回接種は、発がん性HPV型による子宮頸部感染に対する若年女性での予防に極めて有効であることを示す科学的根拠がさらに追加された。 一部のHPVの型は、子宮頸
米国で子宮がん死亡者数増加、黒人女性が最多の画像

米国で子宮がん死亡者数増加、黒人女性が最多

研究結果 米国では子宮がんによる死亡が増加しており、非ヒスパニック系黒人女性で最も多いことが、米国国立衛生研究所の一部門である国立がん研究所(NCI)主導の新たな研究により明らかになった。子宮がんの死亡率の高さは、子宮がんの中でも侵襲性の高