治験中の免疫治療が膀胱がんの生存期間を延長

プラチナ製剤ベースの化学療法後に転移性膀胱がんが進行した患者のうち、治験中のテーラーメイドペプチドがんワクチンと最善の支持療法(best supportive care: BSC)を受けた患者は、BSCのみを受けた患者と比較して全生存期間が延長した。この第2相ランダム化臨床試験の結果が米国癌学会(AACR 2015)の学会誌Clinical Cancer Researchで発表された。

「近年、免疫療法は進行がん治療として実現可能な魅力ある方法として姿を表してきました」と医学博士で日本の久留米大学先端癌治療研究センター臨床研究部門の野口正典教授は話した。「私たちは今回の研究で、私たちの開発したテーラーメイドペプチドワクチンという新しい免疫療法のアプローチが、プラチナ製剤ベースの化学療法後に抵抗性を示した進行膀胱がん患者の転帰を改善するかどうか検討しました。病状としては、予後不良であり、プラチナ製剤ベースの化学療法開始から生存期間中央値がわずか13~15カ月でした」。

「私たちはテーラーメイドペプチドワクチンが全奏効率を有意に改善するとわかり、興奮しました」と野口教授は続ける。「プラチナ製剤ベースのレジメンが有効でなかった進行膀胱がん患者に対し、この免疫療法アプローチが治療選択肢となる可能性があると示唆されたのです。ただし、今回の結果を確実なものにするには大規模ランダム化臨床試験が必要です」。

野口教授と研究チームは、プラチナ製剤ベースの化学療法を受けた後、進行が見られた膀胱がん患者80人を第2相臨床試験に登録した。テーラーメイドペプチドワクチン投与とBSCを受ける患者39人と、BSCのみを受ける41人を無作為に割り付けた。BSCの内容には、緩和的放射線療法、抗生剤の投与、疼痛緩和等が含まれた。野口教授の説明では、テーラーメイドペプチドワクチンは2~4種類のペプチドを週1回8週間、その後2週間おきに4回患者に投与する。ペプチドは、各患者に対し投与されるペプチドを予め用意された31種類のペプチドから選択するのだが、ヒト白血球抗原( HLA )のクラスIA抗原というマーカーのどの型が患者に発現されるか、および患者の血中のペプチドに免疫反応が存在する徴候があるかどうかによって決定された。

テーラーメイドペプチドワクチンの投与とBSCを受けた患者のうち9人、BSCを受けた患者では0人がRECIST ガイドライン第1.1版により部分奏効と判定された。部分奏効と判定されたうち2人の患者は、2014年4月20日データカットオフの時点で病態が進行せず生存していた。

全生存期間中央値は、テーラーメイドペプチドワクチンの投与とBSCを受けた患者で7.9カ月であり、BSCを受けた患者の4.1カ月の約2倍の長さだった。

無増悪生存期間の中央値の有意な差は両群で見られなかった。野口教授は、テーラーメイドペプチドワクチンの投与は、直接腫瘍縮小をもたらすことができる化学療法や低分子医薬品とは対照的に、抗腫瘍免疫反応が表れるまで時間がかかる可能性があるためと説明した。

教授によると、今回の研究の主な限界は、研究者が少数の患者しか登録できなかったこと、そして臨床試験が非盲検デザインであったことである。この課題に対処すべく、教授はプラチナ製剤ベースの化学療法後の進行転移性尿路上皮がん(骨盤、尿管、膀胱のがん)患者を対象に第2相二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を計画していると話した。

今回の研究は日本の文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラム(グローバル型)の補助を受けた。野口教授は株式会社グリーンペプタイドの諮問委員会顧問を務めている。



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翻訳担当者 廣瀬千代加

監修 大野 智(腫瘍免疫学、免疫療法、補完代替医療/大阪大学・帝京大学・東京女子医科大学)

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