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2009/04/21号◆スポットライト「血管新生阻害による想定外の影響が研究結果で示される」

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2009/04/21号◆スポットライト「血管新生阻害による想定外の影響が研究結果で示される」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年4月21日号(Volume 6 / Number 8)
「第100回米国癌学会(AACR)年次総会から」

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

PDFはこちらからpicture_as_pdf

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スポットライト

血管新生阻害による想定外の影響が研究結果で示される

腫瘍の血管系を攻撃することにより作用すると考えられている血管新生阻害剤は、一般的な過程をたどっている。単独投与または化学療法と併用することによって、無増悪生存期間や全生存期間が若干改善することが数種類の進行癌患者で確認され、試験での血管新生阻害薬の使用が拡大している。現在、早期癌患者を対象とした臨床試験において、いくつかの薬剤が術前および術後において検討されている。

血管内皮増殖因子(VEGF)を標的とする血管新生阻害薬ベバシズマブ(アバスチン)の術後療法を検討する第3相臨床試験からの最初の有効性解析結果が年内に発表されるものと期待されている。この試験は、ステージ2および4の結腸直腸癌患者を登録した米国乳癌・消化器癌術後療法プロジェクト (NSABP)C-08試験(※下記追加情報参照)である。

腫瘍学関係者らがこの試験の結果を心待ちしているなか、先月、動物モデルを用いた複数の試験結果が発表され、試験に対する関心がますます高まっている。動物モデルでは、血管新生を阻害することによって確かに腫瘍は縮小したが、最初に効果がみられた後、しばしば腫瘍は侵襲性を増して再増殖した。その腫瘍は、治療前に比べてはるかに転移しやすく、一部では生存率が低下した。

腫瘍が治療に対して抵抗性を持つようになるということは予期されていなかったわけではないと研究者らは認めている。しかしこの研究結果は、どのように血管新生阻害剤が患者で試験されるべきかについて厳重な監視が必要であることを示していると動物モデルの試験のひとつを実施したトロント大学の血管新生研究の第一人者、Dr. Robert Kerbel氏は言う。研究結果からは、血管新生阻害薬は治療に対する一般的な耐性の誘導ではなく、腫瘍の生態を根本的に変化させてしまうと考えられるからである。

「われわれのマウスでの研究結果が関連づけられるとすれば、これらの試験で当初の期待や予想ほどは良い結果がでないだろうと見る理由がわかるだろう。」

火のついた油に水を掛けるように

血管新生阻害がそのような悪影響をもたらす可能性があることは、他の実験や動物モデルの試験でも示唆されている。しかし、最近のこれらの研究結果はこの上ない直接的な証拠を示すものである。

Kerbel氏のチームでDr. John Ebos氏が主導し、先月Cancer Cell誌に発表された研究では、実験のいくつかは術前および術後化学療法の「おおまかな再現」であるとKerbel氏は説明した。例えば、転移乳癌細胞を静脈内注射する前か後に短時間、血管新生に必須なタンパク数種類を阻害するスニチニブ(スーテント)を投与したところ、未処置のマウスに比べて転移が加速し、全生存期間が短縮したという。

Cancer Cell誌の同じ号に発表されたもうひとつの試験では、マウスの膠芽細胞腫モデルと膵癌モデルを用いて、いくつかの抗血管新生療法が検討されている。膵癌モデルでは、臨床試験段階の血管新生阻害剤を1週間投与したところ、最初は腫瘍が縮小した。しかし、投与を継続すると腫瘍は増殖して「広範囲にわたって浸潤」し、周囲組織へと拡がったとDr. Marta Pàez-Ribes氏(カタラン腫瘍研究所、スペイン)らは記載している。一方、未治療の腫瘍は局所にとどまり、浸潤も少なかった。

Pàez-Ribes氏の論文の共著者であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Gabriele Bergers氏によれば、この2つの試験で興味深い点のひとつは、腫瘍に栄養を供給する血管の内皮細胞に分子標的薬に対する感受性が残っていたとしても腫瘍は適応しているということである。

「腫瘍はより浸潤性を高め、血管新生を再開することで、成長する方法を見つけだす」という。「この機序は、腫瘍細胞が薬物を取り込まなくなったり、排泄してしまうというような従来から知られている腫瘍細胞の薬剤耐性とはかけ離れたものである。回避による適応に対しては、この回避経路を阻害するような阻害剤を加えることができるという可能性がある。」

血管新生の阻害が、腫瘍とその微小環境の強い反応を誘導するのは明らかであるとKerbel氏は強調する。一例を挙げると、VEGFや、血管新生にとって重要なもうひとつの増殖因子PIGF-1の濃度は現に上昇する。

「われわれは特にG-CSF、SDF-1、SCF、オステオポンチンに着目してきた」とKerbel氏は言う。「われわれはすべてにわたって調べてみて、多くの他の成長因子やサイトカインやケモカインもすべてが増加していることを確かめた。しかし、それがなぜ起こっているのかは分からない」いずれも腫瘍増殖を促進する因子として知られているものであると同氏は補足した。

動物モデルで得られた結果からヒトの臨床試験の結果を推測するのは困難であると注意を促しつつ、これらのデータからいくつかの重要な教訓が得られると消化管癌を専門とするメイヨークリニックのDr. Axel Grothey氏は言う。

「腫瘍の生態について、いかにまだ明らかでないことが多いかを認識させられる」とGrothey氏は述べている。

臨床への影響

血管新生阻害剤を用いて現在実施されている術後および術前療法の臨床試験が、動物モデルを用いた研究で提起された問題を少しでも明らかにすることに役立つことを期待する、とNCI癌治療評価プログラムのDr. Helen Chen氏は言う。しかし、Chen氏は、放射線治療に関する非臨床試験でもサイトカイン放出および腫瘍細胞の挙動に同様の影響がみられたことに言及し、この問題に関して1つの側面のみで判断を下すべきではないと強調する。

「それは、身体と腫瘍がストレスに反応して起こる現象であるが、その反応の性質と強さおよび最終的な転帰は、試験対象の薬剤や腫瘍によってさまざまであろうと思われる」とChen氏は説明する。

NSABP C-08試験を総括する試験責任医師であるフロリダ大学シャンズがんセンターのDr. Carmen J. Allegra氏は、血管新生阻害剤のデータにもとづけば、これらの新たな研究結果は臨床に直結するものではないと言う。しかし、「どのようにこの薬を用いるべきかを考えなおす根拠を私に与えてくれた。特に、患者の病変が明らかに見つかっているもののみとみられ、治癒の可能性がある病態の場合はなおさらである、と続けた。

薬剤の使用法がそれぞれ異なるため比較は困難だが、少なくとも進行癌については、動物モデルで得られた結果が臨床的に問題とならないことを示す証拠が、Grothey氏指導のBRiTE試験から得られている。患者1,900人を対象としたこの非ランダム化観察試験では、ベバシズマブ投与群で2年以上の全生存期間が達成されている。しかし、一次治療の一部としてベバシズマブの投与を受けた期間中に病勢進行がみられた1,400人を超える患者のうち、病勢進行後もベバシズマブを投与した患者では、病勢進行後にベバシズマブの投与を中止した患者と比べて全生存期間が52%改善した。生存期間中央値の群間差は1年近かった。

患者には血管新生阻害剤に対する耐性が発現するが、Grothey氏が治療にあたった患者では、Cancer Cell誌で報告されたような過剰な「適応反応」はみられなかったという。とはいえ、同誌に発表された試験は、臨床試験の範囲外で血管新生阻害剤を適応外使用しないことの重要性を浮き彫りにしているとGrothey氏は力説した。

一方Chen氏は、実験や動物モデルの試験から、血管新生阻害剤との併用を試験するために最も有効かつ安全と思われる治療法を選択し、優先順位を決定する手がかりが得られると付言した。

「真の課題は、新たに発生した代替経路としてはどのようなものが関与しているか、またその経路を狙いを定めて攻撃するにはどうすればよいかを解明することである」とChen氏は語った。

—Carmen Phillips

追加最新情報:4月21日、ベバシズマブを製造するジェネンテック社は、NSABP C-08試験は予備的エンドポイントである無病生存期間の改善を達成できなかったと発表した。この発表は、同社のプレスリリースによれば、計画されていた試験データの最終解析に基づくものである。最終解析の全ての結果は、5月29日から始まる米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会での発表に向けて提出された。

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市中 芳江 訳

平 栄(放射線腫瘍医/武蔵村山病院)監修

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