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ジヌツキシマブは高リスク神経芽腫小児患者 の生存率を改善

高リスク神経芽腫小児患者約1,200人を対象とした臨床試験で、免疫療法薬ジヌツキシマブ(販売名:ユニツキシン)が小児患者の生存期間を延長させることが確認された。

ジヌツキシマブ+2種類の免疫賦活薬+イソトレチノイン併用療法を受けた小児患者の5年全生存率は72%で、5年無再発生存率は61%であった。

本臨床試験結果は、Journal of Clinical Oncology誌7月15日号に発表された。

本臨床試験結果は、当初イソトレチノイン単剤療法とイソトレチノイン+ジヌツキシマブ+2種類の免疫賦活薬併用療法を比較した臨床試験の拡大版に由来するものである。

初期の臨床試験で、ジヌツキシマブ併用療法により、患者の2年無再発生存率が著しく上昇し、全生存期間が延長したことが示された。2015年、米国食品医薬品局(FDA)はジヌツキシマブを高リスク神経芽腫小児患者用治療薬として承認した。

ジヌツキシマブによる延命効果が明らかになると、小児患者の初期の臨床試験への登録は継続しつつ、すべての新規登録小児患者にジヌツキシマブを投与した。

「これらの患者の生存転帰は、初期の臨床試験で示されたジヌツキシマブの有効性を確認するものです」とAlice Yu医師(カリフォルニア大学サンディエゴ校、NCI主導の小児腫瘍学グループが実施する本臨床試験を主導)は述べた。

Nita Seibel医師(NCIがん治療・評価プログラム小児固形腫瘍治療学長)は、こうした多数の患者における長期データは、ジヌツキシマブの有効性を確認する重要なものであると述べる。ジヌツキシマブの初期の成功に続き、この薬剤の可能性を最大限に引き出すために現在進行中および計画中の研究に大きな期待を寄せていると言う。

「高リスク神経芽腫小児患者の治療において、さらなる進歩が期待できます」とSeibel医師は言う。

Ami V. Desai医師(シカゴ大学小児腫瘍医で、本臨床試験に参加)はこれに同意し、「ジヌツキシマブは神経芽腫患者の治療法を変えました。どのようにすればジヌツキシマブの有効性をさらに高められるのでしょうか、また、どのようにすれば治療の様々な部分に使用できるのでしょうか」と述べた。

ジヌツキシマブの効果をさらに理解する

神経芽腫は未熟な神経細胞による小児がんで、米国では年間診断者数が800人程度の希少疾患であり、患者は主に乳幼児と4歳以下の小児である。神経芽腫は、原発巣から転移している場合など、侵襲性を示す特定の特徴を有する場合に高リスク型と称され、毎年診断される小児患者の約半数が高リスク群である。

高リスク神経芽腫小児患者は通常、以下の3つの段階を含む集学的治療コースを受ける。

・第1段階は導入化学療法で、小児患者は化学療法を受け、時には原発巣切除手術を受けることもある。

・第2段階は地固め療法で、大量化学療法と 自家造血幹細胞移植を受け、その後放射線治療を受ける。

・第3段階は維持療法で、残存がん細胞を殺傷し、疾病再発を予防するために、イソトレチノインを通常6サイクル投与する。

2009年に終了した最初の臨床試験で、200人以上の高リスク神経芽腫小児患者は、イソトレチノイン単剤療法患者とイソトレチノイン+ジヌツキシマブ+免疫賦活薬(インターロイキン-2[IL-2]+顆粒球マクロファージ コロニー刺激因子[GM-CSF])併用療法患者にランダムに割り付けられた。

2年生存率は、イソトレチノイン+ジヌツキシマブ+免疫賦活薬併用療法患者では86%で、イソトレチノイン単剤療法患者では75%であった。腫瘍の増殖や再発がなかった患者の割合はジヌツキシマブ併用療法患者で66%、イソトレチノイン単剤療法患者では46%であった。

その後も新規患者の登録は継続されたが、この有望な結果を受け、2009年に本臨床試験のランダム化部分が中止され、研究者らはジヌツキシマブのFDAによる承認を申請した。患者をジヌツキシマブ併用療法患者として登録し続けることで、研究者らは、より多くの患者において、この治療法が生存に与える影響をさらに評価し、ジヌツキシマブの副作用をより詳しく理解することができた。

本臨床試験を非盲検にし、全患者にジヌツキシマブを維持療法の一環として投与することで、「承認検討中でも患者がその薬剤を利用できるようにもなりました」とYu医師は述べた。

Seibel医師は、ジヌツキシマブの製造や本臨床試験での使用にNCIが「大きな役割を果たした」と指摘し、Yu医師も同意した。ジヌツキシマブの承認後、NCIは製造部門をUnited Therapeutics社に移管し、同社がその商品化に着手した。

当初の成功を踏まえて

本臨床試験の非ランダム化部分は高リスク神経芽腫小児患者を対象とした最近で最大の臨床試験で、1,183人が参加した。大多数の患者は6サイクルの治療を完了し、そのうち5サイクルにはジヌツキシマブの静脈内投与が含まれた。

5年後、大多数の患者が腫瘍の増殖や再発がない状態で生存しており(無イベント生存)、生後18カ月以上の高度進行がん(ステージ4)患者の一部も同様に生存していた。

 

本臨床試験参加患者の12%はタンデム移植(患者が1回ではなく2回の造血幹細胞移植を受ける新規治療法)の治療歴があった。タンデム移植は1回移植と比較して良好な転帰を示し、標準治療となっているが、本臨床試験ではタンデム移植歴があるために患者の無イベント生存率が上昇したとは思われなかった。

ジヌツキシマブ併用療法は複数の重度の副作用を伴い、中でも疼痛が最も多く認められた。アレルギー反応、毛細血管漏出症候群、発熱、および血圧低下などの重度の副作用の一部は、IL-2を含む治療サイクルでより高頻度に発生した。

Desai医師は、本非ランダム化試験が実施されて以来、IL-2(毒性が高い)がジヌツキシマブ併用維持療法の一部として使用されなくなったことを指摘した。こうした変更は、欧州で実施された臨床試験でIL-2の追加は転帰を改善せずに毒性をもたらすことが示唆され、その後の臨床試験の予備データで同様の結果が示されたためにおこなわれた。

ランダム化試験と比較して登録資格要件が厳格ではないにもかかわらず、非ランダム化試験でも生存率や副作用は同等であることが示され、初期の臨床試験の成功を裏付けたとDesai医師は述べた。

ジヌツキシマブの次の段階

ジヌツキシマブの有効性にもかかわらず、本臨床試験参加患者の40%で5年以内に高リスク神経芽腫が再発したとYu医師は述べ、ジヌツキシマブ併用療法に伴う重度の副作用を考慮しつつも、「(ジヌツキシマブ併用療法の)利益を受けやすい患者を特定するにはどうすればよいか」と問う。

その疑問の解決に向けて精力的に研究されている分野の1つが、バイオマーカーの特定である。本臨床試験で、治療効果が最も期待できる患者を特定する可能性があるバイオマーカーが数種類発見された。こうしたバイオマーカーやその他のバイオマーカーの役割をより詳しく理解するための研究が現在進行中であるとYu医師は述べた。

その他の臨床試験では、ジヌツキシマブを導入療法の一環として化学療法と併用投与可能かどうかが検討されている。小規模パイロット臨床試験がすでに終了しており、導入療法の一環としてジヌツキシマブを検証する第3相試験が計画されている。この第3相試験でジヌツキシマブの前投与による生存率の上昇が確認されれば、次の段階として「患者のために(本当に辛い手術である自家造血幹細胞移植を)省略できるかどうか」を検証するとSeibel医師は述べた。

 

監訳:加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)

翻訳担当者渡邊 岳

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