初の進行胆管がん治療薬としてペミガチニブが英国で承認

ペミガチニブ[販売名:Pemazyre(日本での販売名:ペマジール)]は、初回化学療法後に進行または転移した希少タイプの胆管がんの患者に対して、今後選択肢の一つとなるであろう。

英国国立医療技術評価機構(NICE)は、FGFR2と呼ばれる分子ががん細胞の表面に異常な形で存在し、標準治療に反応しない胆管がんを有する成人患者への本薬剤の使用を承認した。

キャンサーリサーチUKの政策開発責任者であるKruti Shrotri氏は、今回の決定は、この希少タイプの進行胆管がんに罹患している人々にとって「良いニュース」であると述べている。

「現在、このタイプのがんには有効な治療法がほとんどありません。今回の決定は、がんが再発したり、他の治療に反応しなかったりする患者の治療選択肢を広げるのに役立つはずです」と述べている。

NICEでは、約50人がこの治療の対象となると見込んでいる。

新たな治療法の確立が急務

現在、この種の胆管がんを治療するための有効な治療法は、英国の国民健康保険制度である英国医療サービス(NHS)にはなく、この疾患に対する治療法は10年以上改善されていない。

異常な形のFGFR分子(FGFRの「融合」または「再構成」と呼ばれる)を有する進行胆管がんであり、治療に反応しない患者には、現在、症状をコントロールするための治療のみが行われており、3種類の化学療法剤を組み合わせたmFOLFOX化学療法が行われることもある。

患者団体は、治療選択肢がほとんどないがんと診断されること、特に、体調が良いにもかかわらず今後の見通しは悪いとしばしば言われることの苦難をNICE委員会に対して訴えた。

ペミガチニブは、選択肢が極めて限られているこれらの患者にとって、新たな希望となる。

この治療法はどのように作用するのか?

ペミガチニブは、「プロテインキナーゼ阻害薬」と呼ばれる薬剤グループに属する。これらの薬剤は、プロテインキナーゼと呼ばれる、細胞内や細胞間のメッセージ伝達を助ける分子を阻害することで作用する。

ペミガチニブは、「線維芽細胞増殖因子受容体」と呼ばれる特定のタイプのプロテインキナーゼを標的とする。線維芽細胞増殖因子受容体は、がん細胞の表面に存在し、がん細胞の増殖と拡散に関与している。

ペミガチニブは、プロテインキナーゼ阻害薬として、FGFRがメッセージを送るのを阻止し、がんの増殖を阻止することができる。

証拠は?

この治療法の有効性を示す臨床的証拠は、第2相非盲検試験から得られた。この試験には、治療効果のなかった進行胆管がん患者146人が参加し、各患者のがん細胞上のFGFR分子にはさまざまな変化がみられた。

この試験では、患者107人にFGFRの融合または再構成が認められ、そのうち38人(35.5%)に治療効果が認められた。これらの患者のうち3人は、試験終了時にはがんが検出されなかった。

単群試験である本試験では、ペミガチニブの使用を現在の治療法と直接比較していないため、現在の治療法に関するデータと間接的に比較する必要があった。この間接的な比較により、ペミガチニブが現在の治療法よりも有効である可能性が示されたが、これは確実ではなかった。

希少がんであるため、この種の試験に十分な人数が参加することは難しく、確実な比較ができない。

NICE委員会は、この疾患には効果的な治療法がなく、新しい治療法の開発も進んでいない、つまり、本疾患の患者には未だ満たされていない緊急のニーズがあることから、今回の不確実性は許容できると結論づけた。

全体として、本治療法は英国医療サービスでの使用において費用対効果が高いとNICEは判断し、今後、イングランドの英国医療サービスでの選択肢の一つとなる。NICEの決定は、通常、ウェールズと北アイルランドでも採用されるため、今回の決定は3カ国の患者に影響を与えることになる。スコットランドでは、医薬品を審査するプロセスが別にある。

NICEの副事務局長兼医療技術評価センター長のMeindert Boysen氏は次のように述べている。「極めてまれなタイプの胆管がん患者に、この延命治療法を推奨できることをうれしく思います。この種のがんに対する治療法は長い間改善されておらず、この疾患を有する患者には未だ満たされていない緊急の医療ニーズがあると認識しています」。

「今日の決定は、前回のドラフトガイダンスで委員会が指摘した懸念事項を、製薬企業側がわれわれと協力して解決したことによります。今回の推奨は、NICEと製薬企業が緊密に協力することで、いかに患者に変化をもたらすことができるかを示す好例です」。

翻訳担当者 有田香名美

監修 泉谷昌志(消化器がん、がん生物学/東京大学医学部附属病院消化器内科)

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