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予後不良の小児がん領域における大規模なプレシジョン医療の前進

ASCOの見解

「本研究は、私たちの最も大切ながん患者集団である小児の生存期間を延長するプレシジョン医療の可能性を示しています。米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、進歩を加速させるべき研究優先事項のリストの中で、小児患者の治療にプレシジョン医療を取り入れることの重要性を指摘しています。これらの初期の結果は、この分野の研究を継続するための基礎を提供します」と、FACP、FSCT、FASCOでもあるASCO最高医学責任者兼副会長のRichard L. Schilsky医師は述べた。

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バージニア州アレクサンドリア―研究者らは、予後不良の再発小児がんにおいて、分子標的を同定し、分子標的治療と組み合わせるアルゴリズムを開発した。最近の研究では、このアプローチにより、優先度の非常に高い標的を有する小児がん患者の小規模のグループにおいて、病勢進行までの期間を3カ月延長することができた。本研究の結果は、2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のバーチャル科学プログラムで発表される予定である。

試験概要

【主題】 予後不良の再発小児がんにおいて、分子標的を同定し、分子標的治療と組み合わせるアルゴリズムを試験する

【対象】 INFORMレジストリ(患者の疾患、治療内容、治療経過など を管理するデータベース)の小児患者525人

【結果】 患者の8%が優先度の非常に高い治療標的を有していた。分子標的治療と組み合わせることができた患者20人で、無増悪生存期間の中央値が204.5日であった。

【意義】 予後不良の小児希少がん患者におけるプレシジョン医療の実行可能性を実証

現在の小児がんの治療では、全治癒率が高い一方で、高リスクのがん再発は予後不良と関係している。がんプレシジョン医療によって予後が改善されている成人がんとは異なり、小児がん治療には、がんプレシジョン医療はまだほとんど適用されていない。

「小児患者では、がんが再発した場合の予後が悪く、新しい革新的な治療法がほとんどありません」と、筆頭著者で、ハイデルベルグホップ小児がんセンターの小児腫瘍医のCornelis van Tilburg医学博士は述べた。「多くの新しい試験、多くの新しいバイオマーカーおよび多くの新薬がある成人のがんケアと比較してみてください。小児がん診療は、プレシジョン医療と新薬開発に関して言えば、非常に遅れています」

INFORM(INdividualized Therapy FOr Relapsed Malignancies in Childhood)レジストリは、小児腫瘍医とゲノム研究者の共同体によって設立されたもので、プレシジョン医療に基づくアプローチを開発し、高リスクの再発または治療抵抗性の小児がんに対するその有効性を評価することを目的としている。

主な知見

各患者を最も優先度の高い標的(分子変化から、がんの発生および生存に対して重要な分子経路における遺伝子発現の変化まで)でグループ化したところ、患者の8%が優先度の非常に高い標的を有しており、以下、優先度が高い(14.8%)、やや高い(20.3%)、中間(23.6%)、やや低い(14.4%)、低い(2.5%)、非常に低い(1%)標的を有する患者、そして活性を有する標的を有さない患者(15.4%)と続いた。

全149人の患者が、臨床小児腫瘍医の裁量で、アルゴリズムを用いて同定された標的に基づいて標的治療を受けた。このうち、20人の患者が優先度の非常に高いレベルの標的、主にALK変異、BRAF変異、NRAS変異、MET融合およびNTRK融合を有していた。このグループの患者の無増悪生存期間中央値は204.5日であったのに対し、他のすべての患者では114日であった。全生存期間では臨床的に意義のある差は認められなかった。

今回の結果は、再発小児がんにおいて、治療アプローチに関する臨床的な意思決定の指針となりうるプレシジョン医療の標的を同定することが可能であることを示している。

「本レジストリは小児がん診療におけるゲノムの展望を開きました」と、van Tilburg博士は述べた。「本レジストリは、特定の小児患者集団において、新しい薬や薬剤のアイデアを適切なバイオマーカーと組み合わせる上で有用な、独自の情報源を提供します」と、同博士は述べた。

本研究について

INFORMレジストリでは、難治性、再発、進行悪性がんを有する小児患者の新鮮凍結腫瘍検体から臨床データおよび分子データを収集している。この解析では、8カ国、年齢中央値12歳の525人の患者を対象としている。

7段階のアルゴリズムにより、理論的に承認薬や治験薬の標的となりうる分子変化や影響を受けた分子経路に優先順位をつけた。優先順位のレベルは、ドラッガビリティ(druggability、*薬剤開発が可能かどうか)、遺伝子の変化や発現、薬剤の標的、経路の直接的な活性化などの特性に基づいている。このアルゴリズムを用いて、ゲノム特性または分子特性について、分子標的薬と組み合わせ可能な優先度の最も高い標的から、活性の無い標的までの範囲で、患者のサブグループを同定した。治療を行っている腫瘍医は、この分子標的情報にアクセスし、臨床上の意思決定に利用することができた。さらに、INFORMは、潜在する腫瘍素因症候群(遺伝的にがんになりやすい素因があって発症する疾患)や脳腫瘍の診断改善(遺伝子診断)のような重要な診断情報を提供している。

次のステップ

このアルゴリズムを用いて本レジストリのデータを引き続き解析する予定である。本レジストリでは、生存腫瘍検体を用いたex vivo薬剤スクリーニングや複雑なバイオマーカーアルゴリズムなどの追加の分子解析および機能解析が実施されている。さらに、INFORMレジストリから得られた結果に基づいて、バイオマーカーを用いる一連の第1相試験および第2相試験(INFORM2と呼ばれる)が開始されている。

資金調達

本研究は、German Cancer Aid、German Childhood Cancer Foundation、Ein Herz für Kinder Foundation、German Cancer Consortiumからの資金提供を受けている。

翻訳会津 麻美

監修野長瀬 祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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原文掲載日

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