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虫垂がんは他の消化器がんと異なる遺伝子特性をもつ

  • 2018年10月14日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

虫垂がんのDNA変化についての過去最大規模の試験により、このまれながんは大腸がんや他の胃腸系のがんと異なることが明らかになった。さらに、腫瘍にみられる特異的な遺伝子変異が、その腫瘍が侵襲的でありうるかどうかを予測するための一助になる可能性があることが、試験著者により報告された。

虫垂がんを手術により完全に切除できない場合、標準治療は、大腸がんの治療に用いられるのと同じ化学療法を使用することとなる。

しかし、虫垂がんに対して他の胃腸のがんと同じであるかのような治療法は間違いかもしれないことが、虫垂がんの分子的特徴を分析する近年の試験により示唆された。虫垂がんは「大腸がんと非常に異なる」ことがこの新たな試験により確認されたと、この試験の中心人物の一人であり、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の博士研究員であるJohn Paul Shen医師は語った。

「虫垂がんの患者に対して大腸がん患者で検討された化学療法を行うのではなく、特に虫垂がんを対象とした治療法を開発するべきであるのは、当然のことです」とShen医師は続けた。

この試験は、JCO Precision Oncology誌の電子版で8月8日に発表された。

 

腫瘍はそれぞれ異なる

この新たな試験では、Foundation Medicine社により開発された検査を用いて、703人の患者から得た虫垂腫瘍組織において300個超のがん関連遺伝子のDNA配列を分析した。昨年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、Foundation Medicine社の遺伝子パネルを腫瘍に対する初の総合的なゲノムプロファイリング検査のひとつとして承認した。

主要ながん遺伝子の変異の頻度は、虫垂がんでは、先行研究で分析された大腸がんおよび膵がんと比較して明らかに異なると、Shen医師らは報告した。たとえばTP53遺伝子とAPC遺伝子は、虫垂がんでは大腸がんよりもはるかに変異が起こりにくいようである。

変異の頻度は、虫垂がんの型(がんの肉眼型、または組織病理により定義される)でも異なる。たとえばKRAS遺伝子の変異は、虫垂の内層を基部とする腺がんでは一般的であるが、杯細胞カルチノイドとして知られる型においては、それほど頻度は高くない。

 

予後に関連する変異プロファイル

最も特筆すべき知見のひとつは、GNAS遺伝子変異のある患者は、腫瘍にTP53遺伝子変異のある患者と比較して予後に違いがあることであった。

カリフォルニア大学サンディエゴ校で治療されたGNAS変異のある76人の患者群は平均余命が診断後10年であったのに対して、TP53変異のある患者は平均余命が3年であった。どちらの変異もない腫瘍を有する患者は平均余命が6年であった。

加えて、GNAS変異は、急速に増殖し広がる腫瘍(高悪性度の腫瘍)にはほとんどみられない。GNAS変異のある低悪性度の腫瘍は高悪性度の腫瘍へと進展しないことがこの知見により示唆されたと、著者らは報告した。対照的にTP53変異は、腫瘍の悪性度にかかわらず予後不良と関連していた。

このデータが臨床診療を変えることはまだないであろうとShen医師は語ったが、「がん専門医としては、大抵の場合、特にまれな腫瘍については手引きとなるデータがほとんどないことを考えると、どのようなデータも有益だと思います」と付け加えた。

比較的まれであまり理解が進んでいないがんについて「この種の情報を得ることには大きな価値があります」と、NCIがん治療評価プログラムの消化器がん治療の主任であるCarmen Allegra医師はコメントした。この種の研究が、「特異的でより良い」治療のためのより多くの研究や探索の推進を可能にすると、Allegra医師は語った。

虫垂がんに対するより有効な治療を開発するために、研究者らは、あらゆる虫垂の腫瘍を単一のがんの型または大腸がんの型として考えるのではなく、これらのがんについて分子タイプによる分類を始める必要があるかもしれないと、Shen医師は示唆した。

分子タイピングの追加は、腫瘍の分類を簡素化する方法として役立つかもしれないとShen医師は語った。病理学者らがほぼ30%の割合で虫垂がん腫瘍について相反する分類を行っていたことが、2017年の試験により明らかになった。

「何よりもまず、腫瘍を正確に分類することが間違いなく重要です」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの膵がん専門の病理学教授であるAnirban Maitra, M.B.B.S氏は認めた。彼は「病理組織学は依然として究極の判断基準です」とする一方で、分子タイピングは補足的であり、ますます「より洗練された型の分類」を提供する一助となりつつあると付け加えた。

 

影響と今後の方向性

10個未満の遺伝子を分析することは虫垂の腫瘍を分類するのに非常に有益であるという証拠が試験により得られたが、「実用的な変異」、すなわち標的薬がすでに使用可能である遺伝子の変異は、この試験では明らかにならなかったと、Shen医師とMaitra医師は指摘した。

しかし、ごく一部の患者の腫瘍には、腫瘍に多数の遺伝子変異を引き起こすおそれのある、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)として知られる変化があった。ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は、高頻度マイクロサテライト不安定性腫瘍を有する患者に対するがんの型を問わない治療薬として、米国食品医薬品局により承認されている。腫瘍が高頻度マイクロサテライト不安定性である虫垂がんの人々に対してこの治療の選択肢を検討すべきであると、Shen医師は提案した。

この試験は、さらなる研究への他の可能性を提起する。たとえばShen医師は、GNAS変異のある虫垂がんを治療するためには外科的切除だけで十分であるか知りたいと考えている。TP53変異のある進行した虫垂がんをどのように治療するのが最適であるかという課題に取り組むためにはより多くの研究が必要である、ともShen医師は報告した。彼の発言は、他の腫瘍とは別に試験を行うべきであるということである。

研究者らは、分子プロファイルに基づいてさまざまな虫垂がんの型の細胞株モデルを開発しはじめているため、それぞれの型に対して最も効果的であろう治療について試験を開始することができるとShen医師は語った。

翻訳串間貴絵

監修中村 能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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