骨髄異形成症候群の造血幹細胞移植に遺伝的分類が有用

骨髄異形成症候群(MDS)の患者の中に幹細胞移植の恩恵を受ける可能性がある人がいるかどうか、もしいるのであれば、その移植が高用量または中用量の化学療法(および症例によっては放射線療法)のどちらを要するかが血液検査でわかる可能性がある。この所見は、第58回米国血液学会(ASH)年次総会でダナファーバーがん研究所の研究者により発表される研究結果によるものである。

研究者らは、患者1,514人の血液サンプル中の127の遺伝子を解析し、その結果を患者の臨床データと結びつけ、医師が患者の適切な治療法を決定する際の手引きとなる6つの分子サブタイプを特定した。 結果は会議での口演発表で論じられる。

MDSは、骨髄が健康な血球を十分に供給しなくなる疾患の一つである。 治療は患者の具体的なMDSタイプによって異なるが、標準の薬物治療後に再発リスクが高い患者には、一般的に造血幹細胞移植が行われる。

この新しい研究は、医師がこれらの高リスク患者の治療選択肢をより正確なものにするのに役立つと著者らは述べている。 この研究により、血球の遺伝子TP53に突然変異がみられる患者は、造血幹細胞移植後の生存が1年未満の傾向にあり、急速に再発することがわかった。 これらの所見は、患者が高用量の化学療法および放射線療法(もしくはいずれか)を伴う標準的な移植(骨髄破壊的前処置)、または低用量の低強度移植(骨髄非破壊的前処置)のいずれかを受けたに関わらず、当てはまっていた。

血液細胞においてRASシグナル伝達経路に関与する8つの遺伝子のいずれかで突然変異がある患者についても、再発のため生存率は低いが、高強度の幹細胞移植を受けることで有意に恩恵を受けることがわかった。 血液細胞にJAK2遺伝子変異がある患者は、通常は再発しないことが多いが、移植そのものによる合併症のリスクは高かった。

MDSにより造血幹細胞移植を受ける患者のうち、約20%にTP53変異、15%にRAS変異、2〜3%にJAK2変異がある。

「造血幹細胞移植がMDS患者に適しているかどうかを判断するには、潜在的な利益と合併症のリスクとのバランスをとることが常に必要です。私たちの研究結果は、医師にとって、移植が適切な患者を特定し、最も効果的と考えられる治療強度を特定するのに役立つでしょう」とダナファーバーの研究筆頭著者R. Coleman Lindsley医学博士は述べた。

 この研究の上級著者はBenjamin Ebert医師。共著者は以下のとおりである。Brenton Mar, MD, PhD, Robert Redd, MS, Corey Cutler, MD, MPH, Joseph Antin, MD, and Donna Neuberg, ScD, of Dana-Farber; Wael Saber, MD, MS, and Tao Wang, PhD, of the Center for International Blood and Marrow Transplant Research (CIBMTR) at the Medical College of Wisconsin; Michael Haagenson, MS, and Stephen Spellman, MBS, of CIBMTR, National Marrow Donor Program/Be The Match®, Minneapolis, Minn.; Peter Grauman, of Brigham and Women’s Hospital; Stephanie Lee, MD, of Fred Hutchinson Cancer Research Center; Michael Verneris, MD, of the University of Minnesota; Katharine Hsu, MD, PhD, of Memorial Sloan-Kettering Cancer Center; and Katharina Fleischhauer, MD, of University Hospital Essen, Essen, Germany.

翻訳担当者 白石里香

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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