電子たばこの煙は有害だが、認識不足が大多数

ダナファーバーがん研究所

電子たばこ使用者から吐き出される蒸気は、純水の霧のように見え、フルーティーな香りを漂わせている。しかしながら、ダナファーバーがん研究所の研究者らによる新たな研究によれば、蒸気には水分以外にもホルムアルデヒドなど、有害性のおそれのある物質が含まれていることに大半の人々が気付いていないとのことである。

Risk Analysis誌電子版に本日発表された論文の著者らによると、電子たばこの蒸気の受動的吸引に含まれる物質についての正確な知識のないことが懸念される。

過去の研究では、たばこの副流煙を吸い込むことによるリスクは低いとみる人々は、自分自身が喫煙者である傾向が示されている。

現在、この同じ傾向が電子たばこ使用者、特に若年層で繰り返されることが懸念される。

回答者の大半(58~75%)は、電子たばこの蒸気が水蒸気のみか、それともタールまたはホルムアルデヒドも含んでいるかどうか知らなかった。

少数派ではあるがかなりの人々が、「蒸気の受動的吸引には水蒸気のみが含まれる」(21%)、「タールが含まれる」(10%)、「ホルムアルデヒドは含まれない」(15%)などの誤った回答をした。

現在の喫煙者は非喫煙者と比較して、受動的に吸引される蒸気に含まれる化学物質についての知識がより乏しかった。

本研究の知見は、レストラン、バー、および公園など公共の場での電子たばこの蒸気放出に関する政策方針にも影響がある。

過去の研究では、たばこ副流煙の危険性についての市民の認識が、しばしば禁煙政策を後押しすることがわかっている。

そして今回も、同じ理由が電子たばこ蒸気の放出制限に当てはまると考えるのは当然のことである。

「米国食品医薬品局(FDA)は最近、電子たばこ製造業者に対し、明らかに有害または有害なおそれのある成分を含む製品を検査し、その検査結果をFDAに報告することを求める行政権限を行使しています」と本研究の筆頭著者で、ダナファーバー研究所およびハーバード公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)のAndy Tan氏(医学博士、公衆衛生学修士)は述べた。

「私たちの研究結果は、これらの製品の潜在的危険性についての情報が市民に十分に周知されるように、新たなルールを業界全体で実施する必要性を明確に示しています」。

本研究の試験責任医師は米国の成人1,449人にオンラインで調査を行い、電子たばこの蒸気に含まれているのが水蒸気のみかどうか、またはタールやホルムアルデヒドも含まれるかどうかを聞いた。

蒸気を受動的に吸い込むことが健康に有害と思うかどうかについても尋ねた。

受動的に吸引される化学物質について正確な知識を持っている人々は、蒸気を有害とみなす傾向が高いことも試験責任医師は見出した。

本研究は、比較的新しいが急速に拡大する(電子たばこという)習慣の潜在的危険性に関する公教育の必要性をいち早く示唆している。

米国疾病管理予防センターのデータによると、電子たばこは2006年に米国で導入され、昨年時点で米国の成人約13%が1回以上試したことがあり、使用経験がある人の8%は毎日のように使用している。

米国肺協会によると、たばこの煙には7,000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち少なくとも69種類は発がん性があることがわかっている。それと比較すると、電子たばこの蒸気に含まれる化学物質の種類は少なく、量も少ないのではあるが、過去に広告や販促キャンペーンで主張されてきた「水蒸気のみ」とは程遠いとTan氏は述べる。

最近の研究では、電子たばこの蒸気にはニコチンとホルムアルデヒドのほか、少量ではあるが重金属や粒子状物質など多様な物質が含まれていることが明らかになってきている。

本研究の統括著者は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のCabral Bigman医学博士である。
共著者は、ノースイースタン大学のSusan Mello医学博士、ミシガン州立大学のAshley Sanders-Jackson医学博士である。

本研究は、ペンシルベニア大学アネンバーグ校および南カリフォルニア大学をはじめ、米国国立心肺血液研究所(助成金番号 T32HL007034)、米国国立がん研究所(助成金番号 P20CA095856)による助成を受けた。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所) 

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