atezolizumabが局所進行・転移性尿路上皮がんに有効

プラチナベースの化学療法後に進行した患者を対象とする第2相試験結果

 ・議題:泌尿生殖器がん/免疫腫瘍学

Atezolizumab[アテゾリズマブ]は、プラチナベースの化学療法後に進行した局所進行、および転移性尿路上皮がん患者に持続的な効果を発揮し、忍容性は良好であった。これは単群2-コホートの第2相試験の結果で、2016年3月4日のLancet誌電子版に掲載された。免疫細胞上のプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)の発現レベルが高いほど高い奏効率が認められた。

転移性尿路上皮がん患者は、プラチナベースの化学療法に失敗した後の治療選択肢がほとんどない。この臨床試験では、研究者らはPD-L1に選択的に結合する遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体atezolizumabの治療効果を評価した。

手術不能の局所進行、または転移のある尿路上皮がんで、プラチナベースの化学療法後に進行した18歳以上の患者を欧州、および北米の主要大学医療センター、地域のがん治療実施施設の70カ所から登録した。

登録の主な適格基準は、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)全身状態(PS)スコアが0もしくは1で、固形がんの腫瘍縮小効果判定規準(RECIST v1.1)により測定可能な病変があること、十分な血液学的機能と臓器機能を有し、自己免疫疾患や活動性の感染症がないことであった。

登録前、すべての患者から十分な生存腫瘍細胞を含む腫瘍組織の、ホルマリン固定パラフィン包埋標本が必要とされた。腫瘍に浸潤している免疫細胞(ICs)上のPD-L1発現量を免疫組織化学によって前もって測定した。発現割合が1%未満はIC0、1~5%未満はIC1、5%以上はIC2/3とした。

主要評価項目は2つで、1つは第三者機関がRECIST v1.1に基づいて評価した客観的奏効率(ORR)であった。もう1つは免疫関連RECISTに基づく試験者判定のORRであり、ITT解析によって解析された。

2014年5月~11月、486人の患者がスクリーニングされ、315人が試験に登録された。そのうち310人にatezolizumab 1200mgが3週毎に静脈内投与された(登録患者のうち5人は後に適格基準を満たさないことが判明したため、試験薬を投与されなかった)。

2015年5月5日をデータカットオフとする初回解析では、atezolizumabの治療を受けた患者集団のRECIST v1.1によるORRは、あらかじめ特定した免疫細胞のPD-L1発現レベルのいずれにおいても、ヒストリカルコントロールのORR 10%と比べ有意に改善し、IC2/3の集団では27%、IC1/2/3の集団では18%、全患者集団では15%であった(各p<0.0001、p=0.0004、p=0.0058)。

フォローアップ期間を延長した2015年9月14日をデータカットオフとする解析では、第三者機関評価のORRは、IC2/3の集団で26%、IC1/2/3の集団で18%、310人すべての患者で15%であった。中央値11.7カ月のフォローアップにおいて、奏効が得られた45人中38人(84%)で奏効が持続していた。

探索的解析では、がんゲノムデータベース(The Cancer Genome Atlas[TCGA])に基づくサブタイプ、および変異荷重がそれぞれ独立して、atezolizumabの効果予測因子となり得ることが示された。

治療と関連したグレード3~4の有害事象は310人のうち16%に発現し、最も多かった事象は疲労(2%)であった。免疫を介するグレード3~4の有害事象は310人のうち5%に発現し、主な事象は間質性肺炎、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇、発疹、および呼吸困難であった。試験期間中、治療と関連した死亡はなかった。

著者らは、局所進行、または転移のある尿路上皮がん患者において、atezolizumabは持続的な抗腫瘍効果と良好な忍容性を示したと結論した。免疫細胞に発現するPD-L1レベルが高いほど奏効率が上昇した。本試験の結果は、TCGAサブタイプと免疫チェックポイント阻害に対する反応の関連性、進行尿路上皮がんにおける免疫チェックポイント阻害薬に対する反応バイオマーカーとしての変異荷重の重要性を示した初めての報告である。

本試験は、F・ホフマン・ラ・ロシュ社の資金提供を受けた。

翻訳担当者 川又総江

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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