鎌状赤血球症の治療法として幹細胞移植の有効性が裏づけられる

キャンサーコンサルタンツ

このほど、HLA適合血縁同胞(兄弟姉妹)間幹細胞移植(SCT)を受けた鎌状赤血球症患者のうち90%を越える人が、治療後3年間、再発なく生存しており、おそらく治癒したとされるとの報告があった。

本報告では、1986年から2013年にかけて23カ国に所在する88の医療センターで、HLA適合同胞間幹細胞移植治療を受けた鎌状赤血球症患者1,000人の解析結果をまとめている。患者の平均年齢は9歳(1歳から54歳)で男女比はほぼ同じであった。SCT治療を行ったいちばんの理由は脳卒中の病歴であった。

本解析に含まれる患者1,000人のうち、3年全生存率は94%であった。骨髄由来、末梢血由来の幹細胞のいずれでも良好な結果が得られたが、多変量解析の結果、幹細胞ソースとして骨髄の方が有意に生存率を向上させたことがわかった。さらに解析を進めた結果、移植時に低年齢であること、骨髄由来または臍帯血由来の幹細胞を使うこと、また2000年以降の移植であることが、それぞれ個々に生存率の向上に関連しており、移植の安全性は時とともに改善していることを示唆している。

SCTの既知の合併症は、移植片対宿主病(GVHD)であり、急性のGVHDと慢性のGVHDの割合は、それぞれ14.4%と13.3%であった。死亡した患者は全部で67人、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植を受けた患者のそれぞれ6%、21%、1%であった。移植に関連しているとみられる死亡は59人であった。死因は59人のうち24人では不明、14人では感染症、12人では毒性、9人ではGVHDと関連していた。

本データは、年齢が全生存の独立予測因子であることから、重症の鎌状赤血球症患者に対しては早期に造血幹細胞移植のために専門医に紹介する必要性を強調している。

参考文献:
Cappelli B, et al “Hematopoietic stem cell transplantation from HLA identical sibling for sicke cell disease: An international survery on behalf of Eurocord-Monacord. EBMT Pediatric Disease Working Party and CIBMTR” ASH 2015; Abstract 541.


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翻訳担当者 大木勝弥

監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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