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PD-L1を標的とする低分子タンパクは抗PD-L1抗体免疫療法より強力

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PD-L1を標的とする低分子タンパクは抗PD-L1抗体免疫療法より強力

米国がん学会(AACR) プレスリリース

 

9月16~19日に行われたCRI-CIMT-EATI-AACRがん免疫療法国際会議(International Cancer Immunotherapy Conference)で発表された非臨床データによると、腫瘍上のPD-L1に結合できる高親和性合成PD-1低分子タンパクは、従来の抗PD-L1抗体に比べてより有効な抗腫瘍免疫療法であり、この低分子タンパクは従来の抗PD-L1抗体に比べて他の免疫療法との併用でより有効であった。

 

「現在では、PD-1、PD-L1、CTLA4などの免疫チェックポイントやその他の免疫調節経路を標的とする多くの抗体薬(ペンブロリズマブやイピリムマブなど)があります。しかし、この種の薬剤ではそれらの有効性を制限する可能性のある弱点が見過ごされてきました」と、カリフォルニア州スタンフォード大学医学部Ludwigセンター、Irving Weissman研究室のメンバーで大学院生のSydney Gordon氏は述べた。

 

「まず、PD-L1を標的とする薬剤が腫瘍内部に到達できれば理想的です。しかし、抗体は大きいため、腫瘍内部に効果的に到達できず、十分に効力を発揮できないのです」とGordon氏は述べた。「第二に、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体は同時に逆効果も引き起こし、本来は活性化させるはずの抗腫瘍免疫細胞の一部を枯渇させることがあります」。

 

Gordon氏と、MD/PhDプログラムに在籍するAaron Ring氏(Weissman研究室。イェール大学医学部免疫生物科助教就任予定)および共同研究者らはPD-L1を標的とし、PD-1/PD-L1シグナルを阻害可能な低分子合成タンパクはこれらの弱点を克服し、すぐれた免疫療法として機能する可能性があるという仮説を立てた。

 

研究者らは定向進化と呼ばれる方法を用いて低分子タンパクPD-L1拮抗薬をデザインした。「最終的には、私たちが開発した最善のPD-1変異体は、天然のPD-1タンパクに比べて約50,000倍強力にPD-L1に結合しました」とRing氏は述べた。彼らが開発した低分子タンパクである、高親和性PD-1変異体は抗体の10分の1の大きさであった。

 

まず、研究者らは高親和性PD-1タンパクが抗PD-L1抗体と比べて固形組織により効果的に浸透できるかを検証した。検証のため、高親和性PD-1タンパクと抗PD-L1抗体を異なる2色の蛍光色素で標識し、担癌マウスにこれら2種類の蛍光タンパクを同時に注入した。腫瘍を外科的に切除し、顕微鏡で観察したところ、抗体は主に血管付近(腫瘍の外側)で認められたのに対し、高親和性PD-1タンパクは腫瘍のはるかに深いところまで分布可能であった。

 

次に、高親和性PD-1タンパクの免疫細胞への影響を検証した。この検証のために、PD-1タンパクを投与したマウスとPD-L1抗体を注投与したマウスの血液とリンパ節を採取し、T細胞数を推定した。高親和性PD-1タンパクは血中またはリンパ節中のT細胞数に影響しなかったが、抗PD-L1抗体はT細胞を著しく枯渇させた。さらに、抗体を他の免疫療法と併用するとこの枯渇がさらに顕著になることがわかった。「これは免疫療法の併用を患者に最適化する際に重要な意味を持つでしょう」とGordon氏は述べた。

 

最後に、高親和性PD-1タンパクの抗腫瘍活性を検証し、マウスに米粒大(50 mm3)の腫瘍がある場合、PD-1タンパクおよび抗PD-L1抗体ともに腫瘍縮小効果があることがわかった。しかし、マウスにエンドウマメ大(150mm3)の腫瘍があった場合は、抗PD-L1抗体は抗CTLA4抗体と併用してもまったく有効ではなかった。高親和性PD-1タンパクは大きな腫瘍の成長を遅延させることもでき、抗CTLA4抗体との併用でより効果的であった。

 

「抗PD-L1抗体および抗PD-L1抗体のがん患者に対する有効性を考えると、現時点では我々の研究はこのPD-1/PD-L1経路を十分に標的としたと仮定してよさそうです。しかし、私たちの結果では、低分子タンパクを用いると、従来の抗体と比べ、さらに顕著な抗腫瘍活性が可能であると示されています」とRing氏は述べた。「広義に解釈すると、低分子タンパクによる治療は、PD-1およびPD-L1以外の他の免疫治療上の経路において同じ利点を示す可能性があります」。

 

高親和性PD-1タンパクは小さいため、体内から迅速に排出され、抗体より頻回の投与が必要になる。さらに、「免疫原性」、つまり、患者が薬剤自体に免疫応答を発現する可能性がある。「臨床用に開発される高親和性PD-1または同様の低分子タンパクによる治療のために、これらの2つの問題に取り組む必要があるでしょう」とGordon氏は述べた。

 

本研究はスタンフォードのLudwig Centerの資金提供を受けた。一部の著者は高親和性PD-1薬剤の特許の出願者である。Sydney Gordon氏はAb Initio Biotherapeutics社のコンサルティングを行っている。Aaron Ring氏を含め一部の著者はAb Initio Biotherapeutics社の創始者で、同社の科学審議会委員を務める。

 

原文掲載日

翻訳吉田加奈子

監修田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/福岡東医療センター)

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