ルキソリチニブは真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の長期疾患コントロールにおいて安全で有効である可能性

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真性赤血球増加症/真性多血症(PV)患者において、ルキソリチニブ(Jakafi)は少なくとも1年間の疾患コントロールをもたらし得る。この知見は、2015年6月11日~14日にオーストリアのウィーンで開催された第20回欧州血液学会議で発表された[1]。

PVは、進行の遅い血液がんであり、骨髄増殖性腫瘍(MPN)と呼ばれる血液疾患に属する。このような血液疾患では、血液細胞を産生する骨髄細胞が異常に増殖し、異常な機能を示す。PVでは、骨髄が血液細胞、特に赤血球を過剰に産生する。血液細胞が過剰に産生されると、血液が濃くなり、血液凝固や出血のリスクといった合併症が引き起こされる場合がある。PVは、治療を行わなければ、生命を脅かすおそれがあり、骨髄線維症や急性白血病などの重篤な血液がんに移行する可能性がある。有効な治療を行えば、このようなリスクや合併症は顕著に低下する。

PVは完治しない。そのため、PVの症状をコントロールする治療がきわめて重要である。PV患者でよく認められる症状は、疲労、そう痒、筋肉痛、寝汗、日中の発汗である。現行の標準療法では、これらの症状を十分にコントロールできない。

ルキソリチニブは、PV患者[ヒドロキシ尿素(Hydrea)などの標準療法が不忍容または無効な患者を含む]の有効な治療薬であることが実証されている。ルキソリチニブは、異常な数の血液細胞を産生させてMPNの発生に関与していると考えられているタンパク質(JAK1/JAK2タンパク質)を阻害して機能を発揮する。ルキソリチニブによる症状コントロールはヒドロキシ尿素より優れていると考えられる。

RESPONSE試験として知られている第3相試験では、ヒドロキシ尿素が無効または不忍容なPV患者222人を対象として、ルキソリチニブと「利用可能な最善の治療法(best available therapy)」の有効性を比較した。222人中、110人がルキソリチニブ、112人が標準療法による治療を受けた。ヘマトクリット値をモニタリングした。ヘマトクリット値は、総血液容積に占める赤血球容積の割合である。PV患者では赤血球が過剰に増加することから、ヘマトクリット値は疾患コントロールの指標として利用される。X線検査を実施して脾臓サイズもモニタリングした。標準療法に割り付けられた患者は、8カ月間の治療を終了すれば、ルキソリチニブに切り替えることが許可された。

RESPONSE試験の初期結果は、最後の患者が治療を開始してから12カ月後に報告された。これらの結果に基づき、PV患者においてルキソリチニブは標準療法より優れた症状コントロールをもたらすことが示された[2]。

後期解析は最後の患者が治療を開始してから20カ月後に実施し、ルキソリチニブの長期的な有効性を検討した。ルキソリチニブの治療による「主要効果」と判断される項目を評価した。各患者において主要効果を達成したと判定するためには、8カ月時点の脾臓体積が35%以上減少し、かつ瀉血(血液を体外に抜く手法で、PVの治療に使用される)を行うことなく8カ月にわたりヘマトクリット値がコントロールされている必要があった。各患者における主要効果の持続期間および血液細胞数の正常化(血液学的完全寛解)についても確認した。また、ルキソリチニブの安全性についても評価した。

20カ月時点の追跡調査にて、ルキソリチニブ群の110人中91人(82%)が治療を継続していた。一方、標準療法群では20カ月時点に治療を継続していた患者はいなかった。ルキソリチニブ群では、23人(21%)が主要効果の基準(脾臓体積の35%以上減少およびヘマトクリット値のコントロール)を満たした。標準療法群では、1人しか主要効果の基準を満たさなかった。

大半のルキソリチニブ投与患者で治療効果は長期間維持された。早期の8カ月時点の追跡調査にて、瀉血を行うことなくヘマトクリット値のコントロールを達成した患者の割合は、ルキソリチニブ群では60%であったのに対し、標準療法群ではたった20%であった。また、脾臓体積が35%以上減少した患者の割合は、ルキソリチニブ群では38%であったのに対し、標準療法群ではたった1%であった。ルキソリチニブ群のうち98人が8カ月時点において治療を継続しており、このうち90%の患者は8カ月時点と20カ月時点の追跡調査の間に瀉血を行わずにすんだ。ルキソリチニブ群の患者のうち、8カ月時点に脾臓体積の減少が認められた患者全員において、減少が維持された。ルキソリチニブ群において8カ月時点に血液学的完全寛解を達成した患者の割合は、標準療法群より高かった(24% 対 9%)。また、ルキソリチニブ群において8カ月時点に血液学的完全寛解を達成した患者における20カ月時点での推定寛解維持率は69%であった。

ルキソリチニブ群の副作用は軽度から中等度の傾向が認められた。高頻度に報告された訴えは、頭痛、下痢、そう痒、疲労であった。また、ごく一部の患者に中等度から高度の貧血と血小板減少症(血小板数の減少)が認められた。ルキソリチニブ群において副作用により投与中止を余儀なくされた患者はごく少数であった。

これらの結果に基づき、PV患者に対するルキソリチニブの治療効果は少なくとも1年間は持続すると考えられる。また、全般的にルキソリチニブの忍容性は良好である。RESPONSE試験の結果により、ルキソリチニブが有望なPV治療薬であることが引き続き実証される。

参考文献:
[1] Kiladjian JJ, Vannucchi AM, Griesshammer M, et al. Ruxolitinib Versus Best Available Therapy in Patients with Polycythemia Vera: 80-Week Follow-Up from the Response Trial. Abstract presented at: 20th Congress of the European Hematology Association (EHA); June 11-14, 2015; Vienna, Austria. Abstract S447.
[2] Vannucchi AM, Kiladjian JJ, Griesshammer M, et al. Ruxolitinib versus Standard Therapy for the Treatment of Polycythemia Vera. New England Journal of Medicine. 2015 Jan 29;372(5):426-


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翻訳担当者 永瀬祐子

監修 吉原 哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)

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