2011/05/31号◆特別リポート「HPV検査とパップテストを併用すれば、子宮頸癌検診の間隔を延長できる」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/05/31号◆特別リポート「HPV検査とパップテストを併用すれば、子宮頸癌検診の間隔を延長できる」

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2011/05/31号◆特別リポート「HPV検査とパップテストを併用すれば、子宮頸癌検診の間隔を延長できる」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年5月31日号(Volume 8 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

HPV検査とパップテストを併用すれば、子宮頸癌検診の間隔を延長できる

子宮頸癌や癌の前兆となる病変部の検診を受けるために、多くの女性が婦人科や一般開業医を毎年訪れる。しかし、癌を起こす種類のヒトパピローマウイルス(HPV)の有無を検出する検査を組み込んでいれば、大半の女性は子宮頸癌検診を毎年行う必要がないことを示すエビデンスが増え続けている。

複数の婦人科学と腫瘍学のグループは、パップテストが正常で、HPV検査が陰性であった30歳以上の女性においては検診の間隔を3年に延ばすように推奨してきた。しかしこの推奨は一般の医療現場には広く浸透していない

米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会に先立ち開かれた5月18日の記者会見で、北カリフォルニア地域のカイザー・パーマネンテ[Kaiser Permanente of Northern California:KPNC(非営利医療団体)]が行った臨床治療についての大規模研究の結果が発表された。もはや毎年のパップテストは不必要であるという、おそらく最も強力な確証を提供するものである。この試験では、30歳以上の女性でパップテストの結果が正常でHPV遺伝子検査も陰性であった場合、その後3年間に癌、あるいは前癌状態の変化が検出された例はほとんどないことが明らかになった。

「検診を行わない3年間の癌リスクへの不安という点で、この試験結果は臨床医や患者に対して、この間隔が安全であるということを保証するものです」と、試験の責任医師でNCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)のDr. Hormuzd Katki氏は述べた。

試験では、HPV陰性の女性における非常に低い癌リスクを、パップテストが大幅に改善するものではないことが示された。一方、HPV陽性の女性においては、パップテストが癌の高リスク群を特定するのに役立つことが示された。これらの知見は、HPV検査を先行して行い、陰性の場合は3年後に検診を受けるよう勧めてもよいという「強力な仮説」を示しているとKatki氏は述べた。HPV検査が陽性だった場合、子宮頸部の癌の徴候を調べるコルポスコピー(膣鏡診)を実施するかを決めるために、パップテストは有用である。

「しかし、この手順を実際の臨床でルーチン化する可能性について確認できるまでには、さらなる研究と評価が必要です」と同氏は述べた。

現実の医療現場での研究

この試験が特に重要なのは、「現実の医療現場での経験」に基づいているからであると、ASCO会長Dr. George Sledge氏は記者会見で述べた。試験には大規模総合健康管理団体である北カリフォルニア地域のカイザー・パーマネンテに登録する 33万人以上の女性が参加し、この種の分析としては今までで最大規模のものとなった。

「この試験は癌検診の今後を示しています。細胞病理学といった古い技術から、さらに分子に基づく技術への移行により、子宮頸癌患者において癌の特異的な原因を実際に調べることが可能になるのです」。

この試験に参加した女性達は、2003年にカイザー・パーマネンテが始めたHPV検査とパップテストの併用プログラムに自主的に登録していた。プログラムに参加したすべての女性は毎年検診を受けた。パップテストの結果が正常でHPVテストの結果も陰性だった女性では、5年以内に癌になる率が極めて低く、年間で10万人中3.2人であった。HPV検査単独での検診もかなり有用で、癌を生じる割合は年間で10万人中3.8人であった。パップテストのみが正常だった女性のリスクは2倍近くと推定され、癌の発生は年間10万人中7.5人であった。

パップテスト単独で陽性だった場合と比較し、1回のHPV検査で陽性だった場合の方が、5年後に癌あるいは前癌状態の病変部が見つかる可能性が高かった。つまりHPVテストは子宮頸癌や前癌状態の早期検出に適しているといえる。

Katki氏は次のように強調した。パップテスト陽性という情報は、HPV検査も陽性の女性にとっては大変重要で、すでに生じている癌あるいは癌になる可能性の高いある種の頸部病変を発見する可能性を高めるものである。

状況を変化させるのに十分か?

パップテストとHPV検査の併用および検診間隔の延長を推奨する診療ガイドラインやこれらの推奨を裏付けるデータの継続的な蓄積をもってしても、医師の診療を変えるのは非常に難しいと、テネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト・イングラムがんセンターの婦人科腫瘍学の部長であるDr. Howard Jones氏は述べた。医師がパップテストに併せてHPV検査を使用する例は徐々に増えているというエビデンスも示されているが、同時に検診間隔を1年以上にすることには多くが抵抗を持っていることを複数の試験が示唆している。

HPV検査導入の遅さと、検診間隔を延ばす試みの失敗には複数の要因が関わっているとJones氏は続けた。検診間隔延長の失敗についての最も大きな理由のひとつは、多くの女性が毎年のパップテストを当然のものとみなすようになっていることである。

医師は両方のテストが陰性であった受診者に対して、子宮頸癌の検診は向う3年間受ける必要はないと言ってよい、とJones氏は述べた。しかし、「次の年にも検診を受けに来た受診者に対しパップテストは必要ないと言っても、『でも検査をして欲しい』という人が多いのです」と言い、さらに「医師として、10分間ほど女性を説得することもできますが、午前中にまだ10人もの患者が診察を待っているのです。 多くの医師は黙って検査をして不満を解消し、時間を節約しているのです」と続けた。

医師が検診間隔を空けるのに消極的なのは、女性が毎年の検査に来なくなるという怖れにも関連している。「多くの産科医や婦人科医が抱く検診間隔の延長に関する問題は、大半の女性にとって医師の診察を受ける唯一の理由がパップテストであるからなのです」と、 オースチンにあるTexas Oncologyの婦人科医Dr. Ellen Smith氏は述べた。「多くの女性にとって、パップテストは、血圧や、体重測定、また一般検査を受ける唯一の機会なのです」。

すでにかなりの割合の女性が開業医や産科医、婦人科医にかかっていないとして、Smith氏は「もし子宮頸癌検診の間隔が3年ごとになったら、どうなることでしょう?」と続けた。

まず少女や若い女性がHPVワクチン接種を受けて子宮頸癌を予防すること、そして検診を定期的に受ける女性を増やすことという2つの面を、当面の間は強化する必要があるとSmith氏は強調した。子宮頸癌と診断された女性の半数以上は、検診を5年以上受けていなかったと同氏は述べた。

現在のHPV予防ワクチンが防げるのは子宮頸癌の70%でしかなく、ワクチン接種を受けた女性も検診を受けるべきであることを現在のガイドラインは推奨している、とKatki氏は強調した。

あらゆる問題点に関して、「医師への指導、患者への啓発を行い、前に進み続けなければならないのです」とJones氏は語った。

—Carmen Phillips

参考文献:「変わりつつある子宮頸癌検診のアプローチ」(NCIキャンサーブレティン2007年12月18日号スポットライト記事)

【上段画像下キャプション訳】子宮頚癌検診に用いられるHPV検査は写真に示されたヒトパピローマウイルスのうち高リスクHPVタイプの有無を検出する。[画像原文参照]

◆現行の子宮頚癌検診ガイドライン◆最も多く引用される3種類の子宮頚癌検診のためのガイドラインは、米国癌協会(ACS)、米国産科婦人科学会議(ACOG)、および米国予防医療作業部会(USPSTF)により開発された。下の表は米国疾病対策予防センター(CDC)が掲載した情報を改変し、3つのガイドラインの主要な項目を比較したものである。

検診方法と間隔 ACS2002 USPSTF2003 ACOG2009
細胞診(従来法) 毎年。ただし細胞診結果が3回陰性だった30歳以上の女性は2–3年毎*。 性経験を検診の頻度を上げる根拠とすべきでない。 最低3年毎 21歳から29歳は2年毎。ただし細胞診が3回陰性だった30歳以上の女性は3年毎*。
細胞診(液体検体法) 2年毎。ただし30歳以上で細胞診結果が3回陰性だった女性は2–3年毎* 。性経験を検診の頻度を上げる根拠とすべきでない。 エビデンス不十分 21歳から29歳は2年毎。ただし30歳以上で細胞診結果が3回陰性だった女性では3年毎*。
細胞診+HPV検査(併用法) 29歳以下の女性には推奨されない。30歳以上でHPVが陰性で細胞診結果が正常であった女性では3年以内。 性経験を検診の頻度を上げる根拠とすべきでない。 エビデンス不十分 30歳以上で、新しい性パートナーがいてもHPVが陰性で細胞診結果が正常であった女性は3年以内。30歳未満の女性には推奨されない。
HPV検査(単独法) 米国食品医薬品局(FDA)未承認 米国食品医薬品局(FDA)未承認 米国食品医薬品局(FDA)未承認

* 以下に該当する女性を例外とする (例:免疫不全、出生前の合成エストロゲン製剤DES(ジエチルスチルベストロール)への曝露、HIV陽性、子宮頸部上皮内腫瘍または癌などの治療歴がある)

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岡田 章代  訳
辻村 信一(獣医学/農学博士・メディカルライター) 監修
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