OncoLog 2014年10月号◆骨髄増殖性腫瘍の新薬が苦痛を和らげ、生存期間を延長する | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2014年10月号◆骨髄増殖性腫瘍の新薬が苦痛を和らげ、生存期間を延長する

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OncoLog 2014年10月号◆骨髄増殖性腫瘍の新薬が苦痛を和らげ、生存期間を延長する

MDアンダーソン OncoLog 2014年10月号(Volume 59 / Number 10)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

骨髄増殖性腫瘍の新薬が苦痛を和らげ、生存期間を延長する

新種の薬剤が骨髄増殖性腫瘍の症状を和らげるとともに生存期間を延長することにより、治療に関する認識が新たになった。

 

骨髄線維症や真性赤血球増加症、本態性血小板血症などの治癒が困難な病気を持つ患者を治療する臨床医は、(治癒を目的とすることから)不快な症状の緩和や疾患に伴う生物学的異常の改善、生活の質の向上、生存期間の延長に焦点を移している。

 

「この大幅な症状の軽減は、単なる一時的な症状の緩和ではありません。人生を変えるものなのです」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病部門の教授であり、新しい骨髄増殖性腫瘍治療の臨床試験において数々の業績を挙げてきたSrdan Verstovsek医学博士は言う。

 

骨髄繊維症の治療

骨髄増殖性腫瘍のうち、制御されない骨髄細胞増殖、反応性の骨髄線維症、二次的に起きる赤血球数の減少が特徴である骨髄線維症は、最も悪性である。骨髄線維症は脾臓や肝臓の腫大、炎症に伴う全身性の症状、貧血を引き起こす可能性がある。これらの症状によって癌悪液質や歩行困難、一般状態不良を生じることがある。一般的に、骨髄線維症の患者は診断から5~7年以内に亡くなる。

 

JAK2阻害剤

近年までは骨髄線維症に適応薬が無かったため、ヒドロキシ尿素やサリドマイド、レナリドマイド、ステロイドなどの薬剤を適応外使用して治療していた。しかし、2011年後半に、JAK2阻害剤のルキソリチニブが骨髄線維症の治療薬として米食品医薬品局(FDA)に承認された。また、骨髄線維症の治療薬として、新たなJAK2阻害剤であるパクリチニブおよびmomelotinibの第3相試験がMDアンダーソンにおいて進行中である。

 

JAK2阻害剤は、骨髄線維症によって生じる臓器腫大症や全身症状に有効な治療薬である。ほぼすべての骨髄増殖性腫瘍の患者に細胞内JAK/STAT経路を活性化する突然変異が生じている。JAK2阻害剤はJAK2突然変異の有無にかかわらず効果を引き起こす。

 

「JAK2阻害剤の抗増殖作用や抗炎症作用は明白です。JAK2阻害剤で治療している患者は軽快しており、骨痛や掻痒、発汗は無く、体重も増加して、以前よりも歩くことができます。そして、これらの症状を良好にコントロールできると同時に、現に患者を数年長く生存させることができるのです」とVerstovsek医師は語った。

 

ルキソリチニブが骨髄線維症の治療薬として承認されたのは、病気を治せるからではなく、病気を和らげるからである。Verstovsek医師は、「薬剤は通常、どれだけの患者において病気が治癒し、その状態がどのくらい続くかに基づいて承認されます。しかしFDAは、骨髄線維症の存在によって、病気を治癒させるのではなく、この病気による不快な症状に対処する必要性と、症状を軽減するベネフィット―患者が再び人生を満喫したり、旅行したり、やりたいことをしたり、より長く生きることを助ける―を認めました。われわれは、こうした戦略が骨髄増殖性腫瘍の患者において違いを生むことを実感しています」と語った。

 

研究者らは、こうした治療の改善ならびに、有効性の向上と副作用の減少を目的としたJAK2阻害剤と他の新薬との併用を継続していく意向である。

 

根本的治療への道

JAK2阻害剤および、骨髄線維症や骨髄増殖性腫瘍の治療に現在使用している他剤は、病気を治癒させる薬剤ではない。化学療法およびその後の幹細胞移植のみが、骨髄線維症を治癒させる可能性のある治療である。しかし、ほとんどの骨髄線維症患者はこの治療に耐えるには全身状態が悪すぎる。また、移植を受けた数少ない患者においても、移植片対宿主病などの移植後の合併症によって死亡するリスクがかなりある。

 

それでもなお、JAK2阻害剤を使用した治療により一部の骨髄線維症患者が移植を受けられるまでに回復することが示されている。そのため、この標的療法は、骨髄線維症患者の症状を軽減し機能状態を改善するだけではなく、一部の患者においては病気が治る可能性をも高める。Verstovsek医師は、「症状コントロール療法のさらなる進展によって、移植が可能な患者が増えて、いずれはより多くの患者に治癒をもたらすことができるようになることを期待しています。それは、将来のもう一つの道なのです」と語った。

 

貧血を標的とした治療薬

JAK2阻害剤は、多くの骨髄線維症患者に対して有効であるが、貧血を主な症状とする骨髄線維症患者に対しては、有効でないことが多い。貧血とその他の症状を有する患者にとって、JAK2阻害剤はその他の症状を改善する可能性があるが、貧血は持続することが多い。アクチビン受容体拮抗薬sotaterceptなどを含む骨髄線維症に関連して生じる貧血の複数の治療薬が、MDアンダーソンにおいて臨床試験中である。

 

抗線維化剤

骨髄線維症研究におけるその他の新傾向は、線維症に対する直接的治療である。Verstovsek医師は、「われわれは、線維症自体が消失することで赤血球数が回復し、症状も軽減し、脾臓が縮小するという希望を抱いて、骨髄の生物学的問題を標的とする抗線維化剤の臨床試験を行っています」と語った。MDアンダーソンを含め、多施設で行っている2つの第2相試験において、抗線維化剤であるPRM-151およびGS-6624それぞれの単剤投与試験およびJAK2阻害剤であるルキソリチニブとの併用投与試験を行っている。PRM-151試験は、第1相試験の臨床試験登録を先日完了し、第2相試験に向けた参加者登録をすぐ開始する。GS-6624試験の臨床試験登録はすでに完了している。

 

真性赤血球増加症および本態性血小板血症の治療

制御されない骨髄細胞増殖が全血量を増加させる真性赤血球増加症の患者および、血小板を過剰生産する本態性血小板血症患者の平均余命は、健康な人とほとんど変わらないが、血栓症リスクを増加させる。これらの患者に対する治療は通常は血栓症リスクを減少させることに重点がおかれる。真性赤血球増加症の患者に対する一般的な治療は定期的な瀉血である。

 

また、真性赤血球増加症患者は、本態性血小板血症患者と同様に、血栓症リスクを減少させるために多くの場合アスピリンを内服する。どちらの患者においても、極めて高い血栓症リスクを持つ場合は、血球数を恒久的に正常化させるために、多くの場合、化学療法薬剤であるヒドロキシ尿素が投与される。

 

しかし、真性赤血球増加症患者の20%において、ハイドロキシ尿素は、持続的反応を導かなかったり、耐えられない副作用を引き起こす。他の細胞傷害性化学療法剤は病気を急性骨髄性白血病に変換する著しいリスクを伴うため、近年まで、こうした患者に対する他の治療選択肢は限られていた。

 

MDアンダーソンにてVerstovsek医師が率いて実施した第3相試験が先日完了した。その臨床試験において、ハイドロキシ尿素での治療がうまくいかなかった真性赤血球増加症患者は、JAK2阻害剤のルキソリチニブで治療を行うか、医師が判断したその時利用可能な最善の治療が行われた。ルキソリチニブで治療する患者において、別の治療法を受けた患者と比較して、有意に高い割合で赤血球数が減少し、脾臓体積の縮小、症状の改善、白血球数や血小板数が正常化した。また、ルキソリチニブを投与された患者は、血栓形成の頻度が低いようである。ルキソリチニブに反応した患者の94%は、その反応が少なくとも1年間継続しており、薬剤によって起こるほとんどの副作用が軽度である。

 

ルキソリチニブおよびその他のJAK2阻害剤は、真性赤血球増加症患者および、本態性血小板血症患者において臨床試験中である。同様に、momelotinibを使用した2つの臨床試験が、MDアンダーソンにおいて進行中である。

 

骨髄増殖性腫瘍における優先順位付け

MDアンダーソンなどの研究者は、骨髄増殖性腫瘍患者から採取した血液および骨髄の試料のシークエンス(遺伝子解析)を行い、骨髄線維症や真性赤血球増加症、および本態性血小板血症における特異的突然変異の頻度を分析している。突然変異のいくつかは、特定の診断と関連している。例えば、JAK2 V617F変異は、ほぼすべての真性赤血球増加症患者に発現し、骨髄線維症患者や本態性血小板血症患者の約半数にも発現する。対照的に、CALR遺伝子変異は、一部の骨髄線維症患者や本態性血小板血症患者にみられるが、真性赤血球増加症患者にはみられない。

 

また、さまざまなステージの骨髄線維症の遺伝子プロファイル分析によって、発症すると一般的に約5カ月後には患者を死に至らせる急性骨髄性白血病への移行と関連した遺伝子変化が明らかになるかもしれない。MDアンダーソンにて、世界一大きい組織バンクおよび骨髄増殖性腫瘍に特異的な臨床データベースが、白血病への移行を導く遺伝的事象を予期することに用いられている。

 

「多重突然変異の累積によって、骨髄線維症がより悪性かつ急性白血病に移行しやすくしていると、多くの人々が結論づけました」とVerstovsek医師が語った。「そのため、われわれは複数の遺伝子異常の関連性を分析しています。これら総合的な転帰に関する突然変異の影響をより深く理解するため、われわれは28の遺伝子パネルを作成し、すべての患者にこの検査を実施しています。しかし、われわれはこの種の分析を臨床診療においてはまだ行っていません」。

 

For more information, contact Dr. Srdan Verstovsek at 713-745-3429 orsverstov@mdanderson.org.

 

【画像キャプション訳】
進行した骨髄線維症患者、ルキソリチニブ治療を開始した2008年4月(左)と2014年1月。治療により、症状と生活の質(QOL)は劇的に改善した。画像はVerstovsek S. Blood 2014;123(12):1776–1777.より許可のもと転載。

— Sarah Bronson

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳並木 恵

監修吉原 哲(血液内科/コロンビア大学CCTI)

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